大陽日酸がレーザー式ガス分析装置と連動した電気炉製鋼向け高効率酸素利用システムを開発
「SCOPE-JetⓇSCAN」 酸素原単位を2割削減
大陽日酸は、電気炉製鋼プロセスの酸素アプリケーションとレーザー式ガス分析装置を組み合わせ、電気炉製鋼における酸素利用効率を高める技術を開発した。
電気炉製鋼プロセスにおいて、生産性向上や省エネルギーを目的として、酸素バーナやランスなどの酸素アプリケーションが多くの電気炉で設置・使用されており、大陽日酸は高速酸素バーナ・ランス「SCOPE-JetⓇ」を2001年より電気炉製鋼プロセスに展開している。2017年には、さらに性能を向上させ、かつ低圧・低カロリーの燃料にも対応した新型「SCOPE-JetⓇ」を開発した。また、更なる電力原単位削減技術として、電気炉出熱の約3割を占める排ガス熱損失の有効利用を図り、未燃排ガスを炉内で二次燃焼させ、スクラップに着熱させることで省エネルギーを達成する「SCOPE-JetⓇ Post Combustion」も展開している。
今回、これまで培った電気炉製鋼プロセスにおけるノウハウと、最近の電力代及び副資材の高騰に伴う市場のコストダウン要求を受けて、酸素アプリケーションの高効率化を図るため、酸素アプリケーションとレーザー式ガス分析装置を連動させた酸素吹込み最適化技術を開発。「SCOPE-JetⓇ Post Combustion」を用いた従来操業と比較して、酸素原単位を約20%削減した。
二次燃焼とは、電気炉製鋼プロセスの溶解期において、電気炉内の原料スクラップ、炭材、燃料から発生する未燃ガス(CO、H2など)に対して、炉壁に設置した酸素ランスから純酸素を吹込む事で燃焼させ、充填したスクラップ層を予熱し、電力原単位の削減や生産性向上を図るもの。発生する未燃ガスの組成は、刻一刻と変化する為、排ガス組成を正確に把握し、酸素の供給量を適切に制御することが必要になる。
大陽日酸では、電炉から発生する排ガスの組成と電炉の操業パターンを解析し、電炉排ガスダクト内のガス流れの数値解析を行う事で、排ガス測定位置の最適化を行った。また、排ガス測定用として取り扱うレーザー式ガス分析装置は、TDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy)方式を採用し、測定成分CO、CO2、H2O、温度を1本のレーザーで瞬時(応答速度:~2秒)かつ連続測定とした。(表1)
さらに、排ガス組成の濃度変化に合わせた、最適な酸素量の供給が可能となるように、酸素流量制御システムを新たに開発した。その結果、従来の操業と比較して、余分な酸素を吹き込む必要が無くなり、酸素原単位を削減する事が可能になった。
本技術は、電気炉製鋼プロセスで使用される、他のアプリケーション(酸素バーナ、炉前ランス、カーボンインジェクションなど)とも連動が可能であり、排ガス組成および排ガス温度をもとに以下の制御が可能となる。
- 酸素、燃料、カーボンの吹き込み量および時間の制御によるコスト低減
- 排気ファンの風量制御による電力削減
- 水漏れ異常の早期検出による事故の未然防止
大陽日酸ではこれまでに、電気炉製鋼プロセス向けに「SCOPE-JetⓇ」及び「Innova-JetⓇ」シリーズを展開し、生産性向上や省エネルギーを実現してきた。今後は、酸素の利用効率を高めるために、レーザー式分析装置と組み合わせた、「SCOPE-JetⓇ SCAN」として、バーナ・ランス、カーボンインジェクションと組み合わせる事で、高炉と比較して粗鋼生産における炭酸ガス排出の少ない電炉製鋼の操業改善が期待できる。さらに、レーザー式分析装置との組み合わせを加熱炉や転炉プロセス向けに展開し、鉄鋼分野を中心として、応用展開を図る。