0.5トン/時の燃焼試験炉でボイラー用アンモニア専焼バーナー試験に成功

火力発電ボイラーでの実用化に向け、開発の重要なマイルストーンを通過

アンモニア燃焼試験設備(0.5トン/時燃焼試験炉)
アンモニア燃焼試験設備(0.5トン/時燃焼試験炉)

 三菱重工業は、火力発電ボイラーにおけるアンモニア利用技術の開発を進めるなかで、総合研究所長崎地区(長崎市)の試験設備においてアンモニア専焼バーナーの試験に成功した。燃料消費が0.5トン/時の燃焼試験炉において、アンモニア専焼バーナーを用いた専焼試験および石炭との高混焼試験を実施し、いずれにおいても安定燃焼を確認するとともに、窒素酸化物(NOx)の排出量を石炭専焼時よりも抑制できること、またアンモニアを完全燃焼できることを確認した。

アンモニアと石炭の混焼火炎状況
アンモニアと石炭の混焼火炎状況

 アンモニアは、水素エネルギーを低コストで効率良く輸送・貯蔵できるエネルギーキャリアとしての役割に加え、火力発電の燃料として直接利用が可能であり、燃焼時にCO2を排出しない燃料として、温室効果ガスの排出削減に貢献できるものとして期待されている。今回の燃焼試験において、アンモニアの安定燃焼とNOx抑制を同時に実現するバーナーの基本構造が確認され、火力発電ボイラーでの実用化に向け、開発の重要なマイルストーンを通過したとしている。

 次のステップとして、より大規模な同4トン/時の燃焼試験炉において、実機サイズのバーナーを用いた燃焼試験を実施していく予定。これらの成果をもとに、開発したバーナーの国内外の火力発電所への適用に向けて取り組んでいく。

 三菱重工業は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業による燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクトにおいて、「石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術の開発・実証」に、2021年度から取り組む。今回の燃焼試験は同事業の一環で、旋回燃焼方式と対向燃焼方式のそれぞれのバーナー型式において、2024年度までにアンモニアの専焼が可能なバーナーの開発を進めていく計画。

 試験を実施した総合研究所長崎地区は、エネルギーの脱炭素化に向けた技術開発拠点として2023年8月に運用を開始した「長崎カーボンニュートラルパーク」内にある。今回の燃焼試験成功を機に、国内外の火力発電ボイラーでの実用化(注)に向け、関連技術の開発を加速する。

(注)国内外の顧客のカーボンニュートラルに向けたアンモニア燃料利用への取り組みに対応できるよう、事業用・産業用のボイラーにおける低混焼から高混焼までの幅広いアンモニア利用ニーズに対応できる技術開発を推進。