エア・ウォーター、国内初の家畜ふん尿由来「バイオメタン」商用利用を開始
LNG代替によるCO2排出削減量はサプライチェーン全体で約60%以上
エア・ウォーターは、LNG(液化天然ガス)の代替燃料となる家畜ふん尿由来の「バイオメタン※1」の製造から販売に至るサプライチェーンを確立し、2024年5月10日より、ボイラー燃料等として利用するよつ葉乳業株式会社十勝主管工場へ納入を開始した。
エア・ウォーターは、環境省実証事業※2により、家畜ふん尿由来のバイオガスに含まれるメタン分を分離・液化し、液化天然ガス(LNG)の代替燃料として脱炭素を推進する顧客へ供給する、一連のサプライチェーンモデルの構築と実証を北海道十勝地方で進めてきた。
同実証事業を通じて、原料の捕集・輸送体制や製造プロセスの確立、品質実証などを実施。実証事業が終了した2024年度より、これまでに得た知見や技術的なノウハウ、さらに自治体や地域社会とのつながりを生かし、本取り組みを商用化する。なお、家畜ふん尿由来のバイオメタンを新たなエネルギー製品として製造・販売する取り組みは、国内唯一の事例※3となる。
今回、販売を開始するバイオメタンは、酪農家が飼育する乳牛のふん尿由来のバイオガスが原料となるため、酪農が盛んな地域においてはカーボンニュートラル、かつ持続可能な国産エネルギーとなる。また、家畜ふん尿を廃棄物ではなく未利用のバイオ資源と捉え、新しいエネルギーを創出することで、家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などの社会課題の解決にも貢献する。
今後、エア・ウォーターは、バイオメタンを活用したい需要家とふん尿を有効活用したい供給元の双方のニーズを安定的に満たすことができるよう、地域社会と連携しながら原料調達を進め、バイオメタンの供給量を増やすとともに、普及活動や市場創出を図ることで、新たなビジネスモデルの確立を進める。
※1 バイオメタンは、下水汚泥や生ごみ、家畜ふん尿などバイオマス由来の「バイオガス(CH460%、CO240%)」から、CO2分を取り除いた「メタンを主成分としたガス」のこと。今回、製造する液化バイオメタン(LBM:Liquefied Bio Methane)は、酪農家が保有するバイオガスプラントから発生した未利用バイオガスを回収した後、その主成分であるメタンを分離・精製し、マイナス約160℃で液化したものになる。メタンは液化することにより容積を1/600に圧縮できるため、一度に大量のメタンを輸送することが可能。
※2 環境省「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に「未利用バイオガスを活用した液化バイオメタン地域サプライチェーンモデルの実証事業」として採択
※3 エア・ウォーター調べ(2024年5月現在)上記実証事業にてエア・ウォーターが国内で唯一、家畜ふん尿由来のバイオメタンを製造していたことから、商用化においても国内初の事例となる。
バイオメタンについて
- 製品名:バイオメタン
- 製品純度:メタン(CH4)99.9%以上
- 販売金額:双方協議の上決定
- 製造能力:360トン(年間)
- 供給形態:LNGタンクローリーにて供給※4
- 特長:
- 一般的なLNGの90%程度の熱量を有し、LNGの代替燃料として使用可能。
- LNGとの混焼も可能で、既存のLNG供給システムを活用することができる。
- LNG代替として消費された場合、CO2排出削減量はサプライチェーン全体で約60%以上を想定。
- これまで、工場燃料(ボイラー)のほか、車両燃料、船舶燃料、ロケット燃料、一般家庭燃料(都市ガスに混合)などへ供給し、品質実証済。
※4 今後、ユーザーの使用状況によっては、液化せずにバイオメタン(ガス)のみを販売することも検討する。
液化バイオメタンの詳細については、以下ウェブサイトを参照。