日本ガイシのDAC用セラミック基材、大阪・関西万博で実証装置に採用
大気中のCO2を直接吸着・吸収する回収ユニットに使用
日本ガイシの開発したダイレクト・エア・キャプチャー(Direct Air Capture:DAC)用セラミック基材が、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)が2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)で実証試験を行うDAC装置に採用されることが決定した。複数設置するCO2回収ユニットの一つに使用される。この実証試験は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のムーンショット型研究開発事業にて実施される。
DACは、大気中に含まれる二酸化炭素(CO2)を直接吸着・吸収し回収する技術。2050年には約10億トン※のCO2がDACにより処理される見通しもあり、カーボンニュートラルに貢献する技術として注目されている。
※出典:国際エネルギー機関(IEA)レポート
日本ガイシのDAC用セラミック基材は、大阪・関西万博で実証試験を行うDAC装置内で、CO2を吸着させるために用いられる。同社は、主力事業の自動車排ガス浄化用セラミックスで培ったセラミック製ハニカム構造体の技術を応用し、「コンパクトかつ表面積が大きい」「低圧力損失(大量の空気を効率よく処理できる)」などの特長を持つDAC装置向けセラミックスの開発に注力している。採用されたのは、DAC用セラミック基材向けに開発したコーティング技術を適用し、基材の表層にCO2吸着剤を塗布(担持)するための多孔質材料をコーティングした製品。
RITEは大阪・関西万博会場内にネガティブエミッション技術の実証プラントとしてDAC装置を設置し、実証試験を実施する。
2050年カーボンニュートラル達成に向け、事業活動のCO2排出量削減だけでなく、排出削減が困難な産業のカーボンニュートラル化を目指し、DACなどCO2の排出量をマイナスにする「ネガティブエミッション」技術の研究開発や導入・普及が世界中で加速している。特に米国を中心とした政府主導のプロジェクトでは、2020年代後半に年間100万トンのCO2を回収するDAC設備の建設計画が掲げられており、市場の創出、拡大が期待される。
日本ガイシは2023年、本社地区にDAC開発エリアを整備し、2030年の量産体制確立を目指し開発に注力している。DAC用セラミック基材の開発と並行して、吸着剤をセラミックスにコーティングする技術や吸着性能を最大化させるための吸着剤とセラミックスの組み合わせなどの開発も進める。同社は自動車排ガス浄化用セラミックスを全世界で安定供給できる生産拠点を有しており、DAC用セラミック基材は、これらの設備を転用し量産する計画。
NGKグループは「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定し、CO2の回収・利用・貯蔵(CCU/CCS)関連技術や製品の開発・提供を推進する。
(参考)RITEプレスリリース
2025年日本国際博覧会「未来社会ショーケース事業」への協賛について 大気中から二酸化炭素を取り出し地中に 閉じ込める実証事業を行います(公益財団法人地球環境産業技術研究機構 2023年7月20日公表)