高圧ガス工業が「施設園芸・植物工場展(GPEC)」でCO2局所施用の提案
独自開発の光合成促進炭酸ガス制御装置「炭酸マスター」を出品
高圧ガス工業は2024年7月24日~26日、東京ビッグサイトで開催された「施設園芸・植物工場展(GPEC)」に出展、CO2局所施用により炭酸ガス濃度を制御し、光合成を促進することで農作物の収量を増加させる農業用炭酸ガスの提案を行った。高圧ガス工業では、独自に開発した炭酸ガスの制御装置「炭酸マスター」を商品化しており、実際の導入にあたっては、初期費用が工事費のみで「炭酸マスター」など必要機材の3年間レンタルが試せるトライアルプランや、ランニング費用を抑えるための基本プランの2つを紹介した。
「炭酸マスター」は、1台で多点計測・多系統出力が可能で、最大8個のセンサー監視と最大4系統のCO2制御ができる。2種類のCO2センサ(標準・高性能)へ対応し、4つの時間帯で異なる制御や温度・湿度・飽差に応じた濃度変化も実現。また、使用する炭酸ガスには液化炭酸ガスボンベによる「生ガス式」以外に、「燃焼式施用機」へも接点出力可能で、設備を変更することなく将来的に液化炭酸ボンベの「生ガス式」供給に切り替えることで、化石燃料の燃焼によらない持続可能な農業への転換が容易となる。さらに遠隔監視や遠隔制御を行う「みどりクラウド(㈱セラク)」と連携することで、施用状況を可視化し、CO2やガス供給履歴、ボンベの残量警報などの様々な状態を専用のアプリやブラウザでパソコンやスマートフォンから遠隔監視し、設定変更も離れた場所から遠隔制御が可能となる。
高圧ガス工業によると、液化炭酸ガスボンベによるCO2施用には4つのメリットがある。第一に効果的なCO2の施用ゾーンは、ハウス全体に対してごく一部であり、イチゴのモデルケースでは約2.2%程度が近傍空間の割合とされる。CO2施用チューブによる局所施用で作物の近傍から効果的な施用が期待でき、炭酸ガス消費量の低減にもつながる。
次に燃焼式と比較して純度99.5%以上に精製された炭酸ガスを株元から施用する高濃度施用により、センサーまでの濃度勾配が生じ、作物近傍のCO2濃度が高くなりやすい。CO2濃度変化の立ち上がりが良く、ハウスの窓が開いた時間帯でも安定的に高濃度の施用ができる。3つ目に燃焼式のような熱が発生しないため、ハウス内の温湿度に影響を与えない。光合成が盛んな日射が強い季節や時間帯でも施用可能、さらにNOx、SOx、COなどの有害物質の発生がない。
最後にハウス単棟が連なる場合でも、チューブを伸ばして増設できるなど拡張性が高い。また、専用設計の施用チューブにより、局所施用をリーズナブルな価格で利用することができる。
高圧ガス工業では愛媛大学と共同研究を行い、CO2施用の効果を学術的に検証しており、液化炭酸ガス400ppm施用区では、無施用区に対して収量が29%増加することを確認している。日射が強い季節や時間帯にCO2を施用することが効果的であることが判明しており、高圧ガス工業は大学や企業、地方公共機関との共同研究で光合成の測定や炭酸ガス施用方法の知見を蓄積、イチゴ・トマト・ミニトマト・ナス・キュウリ・葉菜類・花卉類など、全国各地で様々な種類の作物への施用実績を持っている。
液化炭酸ガスボンベのCO2は、工場から排出される温室効果ガスを回収・精製して製造されるため、新たにCO2を発生する燃焼式に比較してクリーンで環境にやさしい。高圧ガス工業は産業ガスのエキスパートとして、化石燃料の新たな燃焼を伴わない光合成促進手段を提供することで、持続可能な農業を支援するとしている。