エア・ウォーター 2025年3月期第3四半期連結決算(IFRS)

国内産業ガスの価格マネジメント、半導体工場の新増設による機器・装置の販売増、データセンター向け無停電電源装置・海外産業ガス事業の拡大により全セグメントで増収増益

 エア・ウォーターの2025年3月期第3四半期連結決算(IFRS)は、売上収益7848億6700万円(前年同期比5.4%増)、営業利益532億0400万円(同6.8%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益350億1600万円(同12.8%増)となった。売上収益と営業利益ともに第3四半期累計として過去最高業績を更新した。通期業績予想と年間配当金予想に変更はない。

 成長領域と位置付けるデジタル・半導体関連事業やインド、北米等の海外の産業ガス関連事業に注力。2024年12月に、創業の地の一つである札幌市にオープンイノベーション推進施設『エア・ウォーターの森』を開業した。大学・研究機関、自治体、企業・スタートアップ等との連携により「エネルギー・環境」や「農業・食」を中心とした地域課題解決につながる新事業の創出に取り組む。

 第3四半期の業績は、機能材料分野が前年同期を下回ったものの、国内産業ガスの価格マネジメントの進展、半導体工場の新増設を背景とした機器・装置の販売増、データセンター向けUPS(無停電電源装置)・海外産業ガス事業の拡大(新規連結効果)等により全セグメントで増収増益となった。

連結セグメント別業績

デジタル&インダストリー

 セグメント売上収益は2533億5400万円(前年同期比0.2%増)、営業利益は247億1000万円(同8.7%増)。

 鉄鋼・化学などの素材分野を中心に国内の産業ガス需要が減少基調となる中、デジタル・半導体産業における製造拠点の増強に対応した大型プラント投資や新規取引先の開拓によってガス需要の獲得を図るとともに、特殊ケミカルやガス精製装置、関連工事といった半導体製造を支えるグループ商材・サービスの総合的な事業展開を進めた。

 売上収益は、鉄鋼向けオンサイトガス供給の販売単価下落や機能材料分野でシール材の販売低迷の影響を受けた一方で、半導体工場向けのガス供給が好調に推移し、デジタル・半導体関連事業が売上を伸ばしたことから前年同期の水準を維持した。営業利益は、ヘリウムの調達コストや無水フタル酸等の有機酸製品の需要変動による影響を受けたが、プラント稼働における生産性の向上や産業ガスの価格マネジメントもあり、順調に推移した。

エネルギーソリューション

 セグメント売上収益は459億3800万円(前年同期比7.2%増)、営業利益は18億8600万円(同20.3%増)。

 低・脱炭素需要が高まる中、顧客に対して重油から液化天然ガス(LNG)への燃料転換を積極的に進めたほか、家畜ふん尿由来のクリーンエネルギーである「液化バイオメタン」等、地域の未利用資源を活用したカーボンニュートラルに寄与するエネルギー供給を開始した。また、北海道を中心とした家庭向けLPガス供給は、IoT技術を活用した配送の効率化を図るとともに、販売店の商権取得等で顧客数を増やし、収益力の強化に取り組んだ。

 売上収益は、LPガス、灯油、LNG等製品全般が市況価格に連動し販売価格が上昇したこと、LNG関連機器の拡販が寄与したことから前年同期比で大きく伸長。営業利益については、LPガス配送における業務効率化の取り組みや前年同期に計上したLPガスの在庫評価損の影響も無くなり増益となった。 

ヘルス&セーフティー

 セグメント売上収益は1765億3100万円(前年同期比6.5%増)、営業利益は91億0600万円(同1.5%増)。

 医療用ガスの供給基盤を通じて医療現場のニーズを汲み取り、医療機器の開発、手術室等改修案件を中心とした病院設備工事の直接受注、病院業務のアウトソーシング受託等に注力した。また、在宅医療、デンタル、衛生材料、注射針、エアゾール・化粧品といったコンシューマーにより近い事業の体制強化を進めた。さらに、防災分野では、データセンター向け案件の獲得に努めた。
 病院向けの新規工事案件やエアゾールの受託製造が前年同期に比べて減少したものの、一酸化窒素吸入療法の症例数増加や介護用シャワー入浴装置の販売が好調に推移。また、防災分野においてもデータセンター向け案件等が堅調に進展したほか、サービス事業における新規施設獲得、医療機器や衛生材料の価格改定効果により、売上収益、営業利益とも前年同期を上回った。

アグリ&フーズ

 セグメント売上収益は1365億1400万円(前年同期比9.2%増)、営業利益は68億3100万円(同2.4%増)。

 持続可能な農業と食料安定供給システムの実現を見据え、スマート農業・鮮度保持関連の技術開発の強化や農産品の取扱量拡大に取り組んだ。さらに、エア・ウォーターの物流基盤を活用し、他社との協業による原料野菜の調達や青果流通・加工におけるサプライチェーンプラットフォームの構築も進めている。

 豚肉等の原料高騰の影響を受けたものの、猛暑により野菜・果実系飲料等の受託製造が増加したことに加え、北米市場での冷凍ブロッコリー、北海道産馬鈴薯や人参等の販売拡大が寄与。また、青果仲卸事業を展開する丸進青果㈱を前年度に新規連結したことにより、売上収益、営業利益ともに前年同期を上回った。

その他の事業

 セグメント売上収益は1725億2700万円(前年同期比9.1%増)、営業利益は95億0100万円(同15.8%増)。

 物流事業は、受託料金適正化の取り組みやデジタル技術活用による業務効率化を進め、一般貨物及び食品輸送が堅調に推移する中、他社との協業の取り組みによる青果物の荷扱量増加も加わり、前年同期を上回った。

 ㈱日本海水は、業務用塩の需要回復や融雪用の販売量が増加。一方、水処理関連の工事進捗差の影響や電力事業における燃料ガス価格の上昇を受け、前年同期並みとなった。

 電力事業は、小名浜バイオマス発電所で安定稼働を継続し、発電燃料であるPKS(パーム椰子殻)の市況低下やコスト低減の取り組み効果が寄与したことで、前年同期を上回った。

 グローバル&エンジニアリング事業は、インド市場において、自社プラント稼働を見据えた産業ガスの新規拡販が順調に推移し、鉄鋼向けオンサイト供給、ローリー・シリンダー供給ともに堅調に推移。北米市場では、低温技術を活用した機器エンジニアリング事業とともに産業ガス事業の拡大を図っており、建設中の自社プラント稼働に向け、新規取引先獲得に努めた。また、前年度に新規連結した産業ガス関連2社が収益に貢献した。高出力UPS(無停電電源装置)分野はデータセンター及び半導体メーカーの設備投資の増加を背景に、引き続き好調に推移した。