岩谷産業 2025年3月期第3四半期連結決算

ヘリウムの市況軟化、LPガス小売事業の収益性低下の影響で営業利益は減益

 岩谷産業の2025年3月期第3四半期連結決算は、売上高6243億7400万円(前年同期比1.1%増)、営業利益271億1900万円(同15.0%減)、経常利益392億1900万円(同6.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益283億7900万円(同17.4%増)となった。通期業績予想と年間配当金予想に変更はない。

 水素エネルギー社会の実現に向けて、大阪・関西万博で旅客運航を予定している水素燃料電池船「まほろば」の船舶検査証を取得し、実証運航を開始。大阪・関西万博での円滑な運航を通して、モビリティ用途としての水素活用をアピールする。
 総合エネルギー事業では、千葉県・茨城県を中心にLPガス事業を行うアイエスジー株式会社の株式を全株取得して、連結子会社化した。事業規模の拡大に加え、両社の物流機能の連携強化による合理化や営業効率化により、収益力強化に努める。
 産業ガス・機械事業では、新分野である陸上養殖向けの取り組みを推進した。高効率かつ安定的な生育を可能とする酸素溶解装置や酸素に加え、LPガス、ボイラー、非常用発電機、FRP水槽等、幅広い商品群をグループで取り揃えられることを強みに、拡大する需要に対応する。
 マテリアル事業では、共同出資している株式会社アールプラスジャパンを通じて、使用済みプラスチックの再資源化事業に向けた取り組みを進めた。また、日用品・フィルムメーカー向けを中心に汎用樹脂原料の需要が高まる中、海外からの供給力の強化に努めた。

【総合エネルギー事業】

 売上高は2558億1100万円(前年同期比137億5600万円の増収)、営業利益は76億7300万円(同3億5600万円の増益)。
 LPガス輸入価格が高値で推移したことに加え、工業用LPガスの販売が堅調に推移し、増収。利益面は、LPガス市況要因による減益影響が縮小(前年同期比11億8100万円の増益)したが、販売数量減少に加え収益性が低下した。一方、カセットこんろ・ボンベやエネルギー関連機器等の販売が堅調に推移したことで、増益となった。

【産業ガス・機械事業】

 売上高は1957億9700万円(前年同期比20億1600万円の増収)、営業利益は122億3200万円(同47億2400万円の減益)。
 エアセパレートガスについては、電子部品業界向けを中心に販売数量が増加。水素事業は、宇宙開発や半導体業界向けに液化水素の販売数量が堅調に推移した。特殊ガスについては、半導体ガスの販売が伸長し、国内外で冷媒事業が拡大したものの、中国を中心にヘリウムの市況が軟化したことにより、収益性が低下した。また、機械設備については、ガス供給設備や自動車関連向け設備の出荷が減少。

【マテリアル事業】

 売上高は1490億6700万円(前年同期比99億0500万円の減収)、営業利益は87億5700万円(同4億5600万円の減益)。
 エアコン向け成形品や消費者向け樹脂製品が好調に推移するとともに、日用品向けを中心に樹脂原料の販売が伸長。一方で、ミネラルサンドについては、市況の軟化によりチタンの収益性が低下した。また、ステンレスや次世代自動車向け二次電池材料は、需要の低迷に伴い販売価格が下落したことに加え、機能性フィルムは販売数量が減少した。

【その他】

 売上高は236億9800万円(前年同期比9億9300万円の増収)、営業利益は27億4300万円(同4億3200万円の増益)。