水素・燃料電池展「H2&FC EXPO」、東京ビッグサイトで開催
Tokyoスイソ推進チーム参加団体がプレゼンテーション
世界最大級の新エネルギー総合展「第23回 スマートエネルギーWEEK【春】」が2025年2月19日~2月21日、東京ビッグサイトで開催され、水素・燃料電池の展示会「H2&FC EXPO」に約250社の関連事業者が参加した。
会場では、第3世代燃料電池システムを発表したトヨタ自動車グループ、次世代燃料電池モジュールと燃料電池定置電源のモックアップを初公開した本田技研工業のモビリティ関連ブースが大勢の来場者を集めたほか、製鉄・造船・プラントをはじめ、水素の新アプリケーションを提案する様々な業界からのビジネス提案が見られた。また、ドイツ・中国・シンガポール・スイス・カナダ・南オーストラリアなど海外パビリオンの出展も目立った。産業ガス関連では、岩谷産業、巴商会、鈴木商館など水素供給を担う事業者のほか、水素ステーションや燃料電池自動車向けの機器や蓄圧容器、バルブ、センサ等の取扱事業者が参加した。
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「カーボンニュートラル社会を実現する Kawasaki の技術 ‐水素サプライチェーンの構築‐」
都内での水素エネルギーの需要拡大・早期社会実装化に取り組む東京都は、プロジェクションマッピングを活用した体験ブースで出展し、動画の放映やパネル展示での取組紹介に加え、企業・団体と連携した「Tokyoスイソ推進チーム」のメンバーによるプレゼンテーションを実施した。東京都は、東京2020の晴海選手村跡地でのパイプラインでの水素利用や、福島県産グリーン水素の都内利用拡大、グリーン水素の市場形式によるトライアル取引、大田区京浜島でのグリーン水素製造など様々な施策を行っている。
水素エネルギーの普及に向けて官民両輪によるムーブメントを醸成すべく、東京都が民間企業や都内自治体と共に発足させた「Tokyoスイソ推進チーム」参加団体が、ブース内で自社の取組について紹介した。川崎重工 水素戦略本部の加藤美政課長は「カーボンニュートラル社会を実現する Kawasaki の技術 ‐水素サプライチェーンの構築‐」をテーマにプレゼンを行い、今後、発電用に利用される水素の増加に応じて、海外からの輸入水素による液化水素の供給網の確立が必要になると解説。同社は世界初となる神戸での水素100%ガスタービンによる地域熱電供給に成功しており、世界各地から数十件の水素発電事業への引合いがある。すでに海外で営業運転を開始したものや、26年度に水素燃料100%運転を開始予定のものなど、実証から商用フェーズへの移行が進んでいると説明した。
川崎重工は、水素をつくる・はこぶ/ためる・つかうのすべての領域でカーボンニュートラル社会実現に向けた取組みを進めており、水素だけで発電が可能な水素発電機や水素ステーション向けの圧縮機、燃料電池車向けの水素高圧バルブなどの様々な水素製品を開発している。「H2&FC EXPO」での技術研究組合CO₂フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)との共同ブースでは、商用向けの大型液化水素運搬船など、グループの総合力を結集した最新の取組みを紹介した。
産業ガス関連から岩谷産業、鈴木商館、巴商会が出展
岩谷産業のグループ会社で水素ディスペンサーを手掛けるトキコシステムソリューションズは、共同ブースで充填ノズル2本を同時使用した高速充填や、燃料電池車両2台に同時に充填できる協調制御機能を搭載した「ミドルフロー仕様ダブルノズル充填モデル」の実機を展示した。大型の燃料電池トラック向けに大量の水素を短時間で充填するために、充填口(レセプタクル)を2つ装備したHDV(Heavy Duty Vehicle)に対応する。協調制御機能により、水素ステーション蓄圧器や圧縮機械を最小限にすることができ、建設の初期費用やコストを低減できるほか、熱交換器の最適化や溶接配管によるコンパクト設計で大幅なサイズダウンを実現している。
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岩谷産業はサンレー冷熱と共同開発した水素と都市ガス(またはLPガス)との混焼が可能なバーナーの実機を展示。0から100%まで水素の混焼比率を段階的に切り替え可能で、部品交換なしで都市ガス(LPガス)から水素への移行を最適なコストバランスで実現、将来的な二酸化炭素排出量の削減要請に対応する。そのほか、「水素ステーションのトータルエンジニアリング」としてパネル展示による「差圧式簡易水素充填装置」、「分割モジュール式水素圧縮パッケージ」などパッケージ型水素ステーションの紹介や、全国各地に広がる水素ステーションと水素製造プラント、米国カリフォルニア州でのイワタニ水素ステーションの現状などをPRした。
水素ステーションは、すでにFCバスやFCトラック向けに大型化への対応が進みつつあり、何れも国内初であるが、2023年9月に開所した高速道路SAでの「イワタニ水素ステーション足柄SA」、24年4月にトラックステーションに開所した「岩谷コスモ水素ステーション平和島」、さらに国内初となるバスの営業所内水素ステーションの「東京都交通局有明営業所水素ステーション(仮称)」がこの25年4月に開所予定で、この3か所にはすべてトキコシステムソリューションズの水素ディスペンサーが納入されている。
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創業120周年を迎える鈴木商館は、燃料電池フォークリフトなど産業車両への簡易型水素充填システムとなる「ベルステーションMINI35」の実機を展示してプレゼンテーションを行った。1968年の千葉水素工場設立から始まる同社の水素関連事業の歩みは、1975年の高純度水素製造開始や1983年の液体水素製造、1987年の日本初、水素吸蔵合金による水素発生器の開発など、まだ水素が限られた分野で利用されていた時代からスタートしている。こうした取組みが、カーボンニュートラル実現へ向け需要が高まる水素吸蔵合金や吸着材料の特性を評価する「PCT特性評価測定装置」や、水素充填システム「ベルステーション」へと繋がる水素のエンジニアリング技術へと結びついている。近年では水蒸気を含む環境や液体中の溶存水素濃度も測定可能な「濃淡電池式水素濃度測定器」を自社開発し、参考出品した。
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2026年秋に東京・西新宿に都内初となるグリーン水素「HyGI(ハイジー)」を供給する水素ステーション「西新宿水素ステーション(仮称)」を整備することが決定した巴商会は、グループ会社のジャパンガス小田原滅菌センターでの太陽光発電利用の水電解によるグリーン水素活用事例や、次世代Type4容器を展示して水素運搬の大型トレーラーやカードルの開発事業などを紹介した。「HyGI(ハイジー)」は、YHC(やまなしハイドロジェンカンパニー)が100%再生可能エネルギーの電力から電気分解したグリーン水素で、山梨県から「グリーン水素証書」が発行されている。このグリーン水素の運搬時に排出されるCO2を、巴商会が購入した「カーボンクレジット」で相殺することで、グリーン水素の製造から運搬までのすべての過程においてCO2フリーの水素供給を可能にした。
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新コスモス電機が水素炎検知器の新製品をデモ
ガス検知警報器の新コスモス電機は、カーボンニュートラル実現に向けた水素やアンモニアの安全な利用に役立つ技術や製品を紹介した。トヨタの燃料電池自動車「MIRAI」に採用された車載用水素ディテクタや水素ステーション向けの火炎検知器、拡散式と吸引式のガス検知部、警報器、携帯用ガス検知器と探知機を展示。肉眼では確認できない水素の炎を検知する「ArtiedgeIII-H2FD」水素炎検知器(防塵防水型)のデモンストレーションを行った。遠方からでも目視が容易な面発光の表示方式を採用、表示灯の色で検知器の状態が分かる。
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