エア・ウォーターが「再生医療研究所」を設立、細胞培養設備の増設で研究開発体制強化
幹細胞を用いた再生医療関連事業拡大。アエラスバイオは「エア・ウォーター・アエラスバイオ株式会社」へ改称
エア・ウォーターグループのアエラスバイオは、進行した虫歯やケガなどの損傷が原因で歯の神経(歯髄)を失ってしまった歯に対しての新たな治療法「歯髄再生治療」を2020年に世界で初めて実用化し、全国への普及を進めている。エア・ウォーターグループでは、こうした再生医療技術の普及・拡大による「ウェルネス(健やかな暮らし)」の実現に向けて、2025年4月1日付で「再生医療研究所」を設置すると発表した。
再生医療研究所では、アエラスバイオが手掛けてきた歯髄幹細胞を用いた脊髄損傷治療、脳梗塞治療、疼痛治療などの神経系の治療を中心に、各医療機関と協力して再生医療技術の開発を進める。さらに、使用する幹細胞の枠を広げ、脂肪幹細胞等を用いた再生医療の実用化の研究を推進。今後、研究成果として得られた知見を活用して、エア・ウォーターグループとして幹細胞を用いた再生医療関連事業を拡大し、人々のウェルネスに貢献する。
再生医療研究所 設立の背景、目的
アエラスバイオは提携する医療法人健康みらいRD歯科クリニック(以下、RD歯科クリニック)とともに、2020年より世界初の歯髄再生治療の実用化に取り組んでいる。この治療を実施する歯科医院が全国で27件まで増え、2024年末には治療実績が100症例を超えるなど、最先端の再生医療として認知度や期待が高まり、同治療に歯髄幹細胞を独占的に提供しているアエラスバイオの細胞加工請負数も順調に増加している。さらに、個人が将来の歯髄再生治療向けに歯髄幹細胞を保管しておく「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク™」の保管患者数も治療数を上回る200件以上に達しており、歯髄再生治療の普及に伴いその増加傾向が顕著となっている。
こうした中、RD歯科クリニックでは国内初となる、第三者の歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療(他家歯髄再生治療)の安全性の評価を行うことを目的とする臨床研究を、歯の神経を失った患者を対象に2025年2月より開始した。不用歯(乳歯や親知らずなど)を持たない患者でも、歯髄再生治療を受けることができるよう取り組みを進めている。また近年、幹細胞を用いた再生医療が先端医療技術として注目され、従来にない様々な再生治療が実用化される中、歯科から医科へ歯髄幹細胞から他幹細胞への適応拡大も期待されている。
このような状況において、幹細胞再生治療におけるエア・ウォーターグループのプレゼンス確立と関連事業の拡大に向けて、先端医療の企業・団体が集積する神戸医療産業都市(兵庫県神戸市)にある「国際くらしの医療館・神戸」内に再生医療研究所を設置する。アエラスバイオの研究部門を中心とした研究員を15名程度まで増員し、再生医療に関する研究開発体制を強化する。
なお、アエラスバイオはグループ一体での再生医療事業強化の一環として、2025年4月1日より社名を「エア・ウォーター・アエラスバイオ株式会社」に改称する。再生医療研究所の設立と併せて、細胞培養設備を増強し、臨床レベルの様々な幹細胞の提供を行うとともに、実用化される再生医療に向けた個人向けの細胞保管事業(生体バンク)事業を進める。
再生医療研究所 概要
- 名称:エア・ウォーター 再生医療研究所
- 所在地 :兵庫県神戸市中央区港島南町1丁目3番地1(国際くらしの医療館・神戸3階)
- 所長:庵原 耕一郎(いおはら こういちろう)
- 研究内容:歯髄幹細胞を中心とした幹細胞の再生医療用途研究及び関連基礎研究
- 開所時期:2025年4月1日(予定)
- 研究員数:15名
- 予算規模:5億円/年
再生医療関連事業の強化に向けた設備投資について
- 2025年7月までに、アエラスバイオ本社内(国際くらしの医療館・神戸内)で細胞培養設備(Cell Process Center:CPC)を増設(投資額:約2億円)。歯髄再生治療向けに特化した、既存の第一CPCに対して、増設する第二CPCは歯髄幹細胞を中心に様々な幹細胞を培養できる設備。2025年9月を目途に第二CPCも厚生労働省の許可を取得し、再生医療法の範囲で臨床レベルの幹細胞を各医療機関に提供することが可能
- 生体保管サービスの信頼性向上を目的にエア・ウォーター松本研究所(長野県松本市)内に第2バンク設備を増設(投資額:約1億円)。南海トラフ地震や首都直下地震等の天災リスクを考慮し、沿岸から離れた内陸部の長野県松本市の研究所内に生体保管用の超低温容器を備えた設備を増設する
アエラスバイオ 会社概要
アエラスバイオは国内で唯一、歯髄再生治療を行う歯科クリニックに不用歯から歯髄組織を採取して歯髄幹細胞を再生医療向けに培養するサービスと一般に向けた歯髄幹細胞を中心に生体保管サービスを提供している。今回のグループの再生医療への取り組み強化策の実行を契機に、歯髄幹細胞を主とした幹細胞による新たな再生医療を実用化し、人生100年時代の「ウェルネス」に貢献する。
- 商号:アエラスバイオ株式会社(2025年4月1日付で「エア・ウォーター・アエラスバイオ株式会社」に商号変更)
- 設立:2018年8月1日
- 代表者 :代表取締役社長 菊地 耕三
- 本社:兵庫県神戸市中央区港島南町1丁目3番地1(国際くらしの医療館・神戸2階)
- 従業員数:33人(2025年3月1日現在)
- 事業内容:歯髄幹細胞加工(培養・保管・輸送等)事業、細胞保管事業、歯髄幹細胞を用いた治療方法の研究開発
(参考)歯髄再生治療とは
歯髄再生治療とは、深い虫歯や外傷などが原因で歯の神経(歯髄)が失われた歯の根の穴の中に対して、親知らずなどの噛み合わせに用いない歯から採取・培養した「歯髄幹細胞」を移植し、失われた歯髄を再生させる再生医療。歯髄は歯の中心部に存在し、神経のほか、血管やリンパ管が集合した組織で、歯に水分や栄養を届ける働きや、歯の内部への細菌侵入を防ぐ働き、傷ついた歯の硬組織(象牙質)を修復する働きなど、歯を健康に保つ上で重要な役割を担っている。
歯髄再生治療は失われた歯髄を再生させることにより、自分自身の歯を長持ちさせることを目的とし、本治療の普及により、いつまでも自分の歯で活動的に過ごせる患者が増えることで、健康寿命の延伸および健康長寿社会の実現に繋がることが期待される。
(参考)幹細胞について
幹細胞は体のさまざまな場所から採取が可能で、体の組織の再生や修復を促す能力を持っている。この幹細胞の増殖能力は年齢が若ければ若いほど優れていると言われている。そのため、若い時に採取した幹細胞を保管しておくことで、年齢を重ねてからでも高い増殖能力を有する幹細胞を再生医療等に使用することができる。幹細胞の中でも歯髄幹細胞は、歯の中心にある歯髄組織から採取される幹細胞で、硬い組織に守られていることから優れた幹細胞と言われている。抜歯する機会に採取することができるので、生体保管に向いていると言える。