愛知県知多市で17者の市・企業が「低炭素水素モデルタウン」の実証事業を開始

知多髙圧ガス運営の「知多水素ステーション」を拠点に街中での水素利用を具現化

 知多髙圧ガスは、知多市や日本環境技研、明治電機工業、東亜合成、リンナイなど17の市・企業と連携し「愛知県知多市における 低炭素水素モデルタウンの実証事業」を開始する。実証事業は、2029 年度まで継続して実施。愛知県が全国一の設置数(34 箇所)を誇る水素ステーションを拠点に、地域資源を活用して製造・調達した低炭素水素を、既存 LPG 配送網や各種新型水素容器を利用し、現状未開拓の街利用分野の需要先へ効率的に供給する。さらに、街利用による新たな水素需要創出や、中部圏で検討されている海外からの大規模水素等と連携し、サプライチェーン(SC)のスケールアップを図り、水素供給の低コスト化と水素ステーションの自立化に貢献。愛知県内及び全国の水素ステーションに水平展開可能な事業モデルを構築するとしている。

愛知県知多市における 低炭素水素モデルタウンの実証事業イメージ
愛知県知多市における 低炭素水素モデルタウンの実証事業イメージ

 愛知県は、水素ステーションを地域の水素供給拠点として社会実装することを目標に、知多髙圧ガスと日本水素ステーションネットワークが運営する「知多水素ステーション」から FCV だけでなく、公共施設や住宅に設置した燃料電池や水素給湯器など、幅広い利用先に低炭素水素を低コストに供給する「低炭素水素モデルタウン事業」の事業化可能性調査を2024年度から実施していた。今回、この調査の結果を踏まえ、愛知県を代表者として17の市・企業などが連携して実証事業を行う。実証事業は、環境省が公募した「令和7年度コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業」に採択されている。

 街中における水素利用の具現化の必要性について愛知県では「あいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)」において、2030年度のCO2削減目標を2013年度比▲46%と定める中で、業務部門(▲69.2%)・家庭部門(▲77.6%)の目標値を高く設定している。目標達成には、再エネ導入拡大のみならず、燃料電池の導入促進や熱分野の燃料の脱炭素化など、街中での水素利用の具体化が必要になると説明している。

 また、水素供給拠点として知多水素ステーション(知多市)を選定した理由としては、FCV以外の水素需要に対して水素を供給することを検討するとともに、低炭素水素製造に必要な太陽光発電が水素ステーションに設置されていることや、知多市沿岸部においては将来的に海外アンモニア由来水素の拠点整備等を検討されていることから、知多水素ステーションを水素の街利用における供給網を構築する実証事業のフィールドとしたとしている。

実施体制

代表者愛知県事業の全体総括
共同実施者※1知多市水素利用公共施設の提供、水素利用機器を活用した市民向けサービスの検討
日本環境技研株式会社実証結果のとりまとめ・事業化等検討
明治電機工業株式会社水素製造・利用機器の設置・エンジニアリング・実証
知多髙圧ガス株式会社水素ステーションの運営、水素配送ビジネスの実証、燃料電池トラックの導入
東亞合成株式会社低炭素塩電解水素※3の製造・供給
リンナイ株式会社水素給湯器・グリラー・コンロの実証
株式会社大林組工事現場での燃料電池ショベル実証及び水素供給方法の開発、EMS※4に関する検討・実証
コベルコ建機株式会社燃料電池ショベルの実証
株式会社宮本工業所水素火葬炉の実証
株式会社土谷製作所水素ストーブの実証
三菱HCキャピタル株式会社オフサイト再エネ調達検討、機器導入リース検討
協力者※2トヨタ自動車株式会社水素貯蔵モジュール等に関する実証協力
ブラザー工業株式会社燃料電池に関する実証協力
JFEコンテイナー株式会社水素運搬用軽量容器に関する実証協力
オートリブ株式会社燃料電池バスに関する実証協力
愛知時計電機株式会社水素メーターに関する実証協力
株式会社一富士製麺所水素ボイラの実証協力

※1 主体的に実証等を行う企業等。
※2 実証事業に導入する水素関連機器のメーカー、燃料電池モビリティ・水素関連機器の導入企業。
※3 塩水を再生可能エネルギー電気を用いて電気分解して苛性ソーダを生産する工程において、同時に生成する水素のこと。
※4 エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)は、今回の実証事業では、1か所の水素ステーションから、複数の水素利用機器や燃料電池バス等に水素を供給するため、効率的に水素の運搬・供給を実施できるように各種データを連携するシステムのこと。

実証内容

項目検証内容
水素を
「つくる」
オンサイト太陽光発電・周辺エリアの卒FIT電源※5を活用した水素ステーションにおける低炭素水素製造や、周辺エリアの低炭素塩電解水素の供給・調達により、低コストで安定的な低炭素水素の製造・調達手法の検討将来的に周辺エリアに整備予定の海外アンモニア由来水素の供給拠点等と連携可能性を調査
水素を
「はこぶ・ためる」
既存インフラであるFCV向け水素ステーションから街利用向けに高圧水素容器に充填・貯蔵し、既存LPG配送網等を活用して効率的に配送水素EMS等を活用して更なる配送効率化や低コスト化の検証
水素を
「つかう」
「燃料電池商用車の導入促進に関する重点地域」の取組と連携しモビリティ需要を集積スケールアップを見据えて業務・家庭・その他街利用における最適な水素ユースケースの検証

※5 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)の買取期間が終了した電源のこと。