大陽日酸、アルゴン雰囲気下のアルミニウムフラックスレスろう付技術を開発
大陽日酸は、アルゴンガス雰囲気とマグネシウム含有ろう材を用いた新しいアルミニウム・フラックスレスろう付法を開発した。
アルミニウムのろう付法とは、自動車用熱交換器の様に多くの接合点を有する熱交換器の接合に用いられている方法。現在は、窒素ガス雰囲気で非腐食性のフッ化物系フラックスを用いたろう付法や、真空雰囲気を用いて接合する真空ろう付法の2つの方法が主流となっている。
非腐食性フラックスを用いたろう付法は、多くの自動車用熱交換器のろう付に使用されている。しかし、このろう付法は、フラックス中のフッ素とアルミニウム合金中のマグネシウムが反応し、ろう付不良を引き起こすため、高強度材料であるマグネシウム含有のアルミニウム合金には適用できないという課題があった。
一方、高真空雰囲気中で行われる真空ろう付法は、ろう材含有のマグネシウムが溶融時に蒸発し、炉内の残留酸素及び水分を除去することで、アルミニウム表面の酸化被膜が還元されろう付ができると言われている。しかし、高真空雰囲気中ではアルミニウム合金に含有している亜鉛も蒸発してしまうため、耐食性が低下するという課題がある。
そこで、この2つのろう付法の課題を解決した、新しいろう付法の開発が求められていた。
大陽日酸は、常圧雰囲気下で、フラックスを用いないろう付技術の研究に取り組んだ結果、アルゴンガス雰囲気とマグネシウム含有のろう材を用いるフラックスレスの新しいろう付法を開発した。この技術を用いることで、フラックス塗布工程が不要となり、マグネシウム含有合金への適用や亜鉛蒸発による品質低下を避けることが可能となる。
また、雰囲気中の窒素と酸素が溶融ろうの濡れ性を阻害する働きがあることから、アルゴンガス雰囲気中の窒素と酸素の濃度を制御するガスコントロール技術を開発した。これにより雰囲気用アルゴンガスの使用量を、約40%まで低減可能となりました。この技術は三菱アルミニウムとの共同開発になる。
今後、アルゴン雰囲気によるフラックスレスろう付技術を用いて、ハイブリッド車や電気自動車に搭載されているパワーコントロールユニット用の冷却器および、マグネシウム含有の高強度部材を用いた自動車用やルームエアコン用の熱交換器への適用に取り組む。
大陽日酸は軽金属学会の2013年5月開催の第124 回春期大会で『フラックスレスろう付の接合状態に及ぼす雰囲気ガス種の影響』を発表。また、軽金属溶接協会では、軽金属溶接協会誌「軽金属溶接」Vol.52 No.3 2014.3 のP.7-12 に『アルミニウムのフラックスレスろう付法の検討』が掲載されている。