生体試料の温度履歴情報統合管理システム“CryoLibrary iMaster”を開発
大陽日酸は、幹細胞評価基盤技術研究組合の委託事業プロジェクトにおいて、生体試料の温度履歴情報統合管理システム“CryoLibrary iMaster”を開発した。 2016 年 4 月の製品化を予定。
再生医療等における細胞利用の実用化においては、増殖培養後の凍結処理、拠点間の輸送移動が必須となり、細胞の品質管理の観点から個々の生体試料が辿ってきた環境の記録は不可欠のものとなる。
“CryoLibrary iMaster(クライオライブラリー アイマスター)”では、培養増殖後の分注から凍結解凍までの、複数に及ぶ行程の個々の温度データをサーバーに集中して一括管理することが可能になる。
これにより、拠点間の輸送時のみならず、凍結処理の環境や解凍処理の環境、施設内の移動環境も記録管理することができる。本システムは、バーコードなどのデータキャリアと専用のPCソフトを用いて情報ネットワーク環境下で運用される。
●運用例(温度履歴シート)
各工程の始めと終わりに、それぞれのサンプルのバーコードを読み取ることにより、サンプル毎の温度履歴が1枚のシートに統合して記録される。
幹細胞評価基盤技術研究組合の委託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発/ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(心筋・神経・網膜色素上皮・肝細胞)、ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」は、医療の場に供される再生医療製品を安全かつ安価に製造・加工するための、各プロセスが連携した製造システムを構築することを目的としている。
このうち、「ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」プロジェクトは、阿久津英憲サブプロジェクトリーダー(国立成育医療研究センター研究所 再生医療センター 生殖医療研究部部長)の指導のもとで、幹細胞評価基盤技術研究組合の11 の組合員機関(8 企業、2 研究機関、1 団体)と 3 共同研究先機関(2 大学、1 研究機関)が連携して、「臨床医療現場のニーズ」を最大限反映した、高品質間葉系幹細胞製品を製造・供給するシステムを実現することを目標に、研究開発を推進する。
具体的には、間葉系幹細胞を対象に、分離・精製技術、培養技術、保存・管理技術、幹細胞評価技術及び前臨床研究の各課題にチームを組んで取組み、最終的には、国立成育医療研究センター内に設置されている集中研究室にて、開発された技術を統合し、システム化する計画。
本システムの開発に当たっては、阿久津英憲サブプロジェクトリーダーが率いる研究グループでの共同研究成果を活用した。
【参考】
●幹細胞評価基盤技術研究組合について
幹細胞評価基盤技術研究組合は、「幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発」を実施するため、2011 年 2 月に設立された。企業 26、研究機関 2、団体 1 の計 29 の組合員で構成される。
2015 年 4 月から、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」プロジェクトを組合と同様に AMED 委託事業を実施している大学、研究機関等と共同研究体制を構築し、研究開発を推進している。
●間葉系幹細胞 とは
骨髄や脂肪等「間葉」といわれる組織由来の体性幹細胞で、我々の体内にも存在する。軟骨、骨、脂肪、心筋、神経などへの分化能を有し、iPS/ES 細胞と共に、再生医療への応用が大きく期待されている細胞。腫瘍形成能が殆ど無いと考えられており、間葉系幹細胞を用いた多くの臨床研究が、国内外で進められている。