大陽日酸、120℃で焼結する高純度銅ナノ粒子を開発

 大陽日酸は、120℃で焼結可能な高純度銅ナノ粒子の開発に成功した。銅ナノ粒子は粒子径 100nm 程度、表層が亜酸化銅で被膜された粒子(乾粉)で、有機保護膜が無く、かつ大気中で比較的安定にハンドリングが可能となる。

 銅ナノ粒子は、プリンテッドエレクトロニクス技術を応用した微細配線向けでニーズが高まっている。従来、銀粒子が用いられていたが、配線の微細化が進み、イオンマイグレーションの問題解決やコストダウンを目的に銅への代替検討が活発化している。特に、樹脂基板でも焼成できる低温焼結性を有する銅ナノ粒子が求められていた。

 大陽日酸は、独自開発した酸素燃焼による金属ナノ粒子の合成技術を有しており、これはバーナを用いて LNG などの燃料を酸素不足の状態で燃焼させ、還元雰囲気に制御した火炎を発生させるもの。その中に 10μm 程度の金属酸化物などの粉体を投入し、加熱・還元・蒸発・再凝集させることで金属ナノ粒子を合成する、世界でも初の技術となる。極めてシンプルな全乾式合成プロセスで、大量のナノ粒子を低コストで合成することができる。
 従来、本プロセスで合成した銅ナノ粒子は、窒素ベース水素2~3%の還元雰囲気で焼成した場合、焼結して導電性が発現する温度が 170℃程度であり、樹脂基板に回路を印刷して焼成する場合、基板としてはポリイミド等の耐熱樹脂に限られていた。
 そこで、粒子性状と焼結性について種々検討を実施した結果、粒子表面性状を改質することで焼結温度をより低温化できることを見出し、合成条件を再検討することで、窒素ベース水素2~3%の還元雰囲気で、120℃で焼結して導電性が発現する銅ナノ粒子を合成することに成功した。
 この銅ナノ粒子を溶剤に混合して簡易ペーストを作製し、ポリエチレンナフタレート(PEN)に塗布して前記還元雰囲気で焼成した結果、PEN 基板にダメージ無く焼成できることを確認している。

 既に、山梨研究所内に銅ナノ粒子専用製造ライン(生産量:数百 g/時)を設置し、サンプル供給体制を構築済み。今回、開発した低温焼成タイプの銅ナノ粒子についても今後、顧客評価を行うためにサンプル提供を開始する。また、今後も要望に応じたサンプルの試作・提供を行い、銅ナノ粒子の本格的な事業化を進めていく。また、この銅ナノ粒子を用いたパワー半導体等の接合材も開発中。

【イオンマイグレーション】
 電子部品の配線や電極として使用した金属が絶縁物の上を移動し(マイグレーション現象)、電極間の絶縁抵抗を低下させる現象。一般に、銅は銀に比べイオンマイグレーションが生じ難い。