大陽日酸、生体試料搬送容器「CryoHandy」を製品化

 大陽日酸は、幹細胞評価基盤技術研究組合(以下 SCA:Stem Cell Evaluation Technology Research Association)を通じた国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下 AMED: Japan Agency for Medical Research and Development)の委託事業プロジェクトにおいて、生体試料搬送容器「CryoHandy」を開発し、2017 年 12 月に販売を開始する。室内搬送用容器として、バイアル形状の生体試料を 8 本収納でき、-150℃で 4 時間保持することが可能。

 再生医療市場での生体試料の取扱いにおいて、施設間で搬送する凍結輸送方法は整備されてきたが、室内搬送を想定した生体試料の搬送容器は開発があまり進んでいなかった。病院や研究機関において、作業者が大型の凍結保存容器からクリーンエリアまで試料を運ぶ際に、発泡容器にドライアイスや液体窒素を入れて生体試料を運んでいるケースも多く見受けられ、作業者の安全や試料の品質管理が問題視されていた。また、施設間搬送用容器として使用されるドライシッパーは、クリーンエリア内で使用するには大きいため、小型化の要望があった。
 これらの課題を解決するため、大陽日酸では長年培ってきた液体窒素の取扱い技術と、グループ会社であるサーモスのステンレス製真空断熱容器の技術をベースに、小型の生体試料搬送容器である CryoHandy を開発した。


【委託事業プロジェクトについて】
 SCA の委託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発/ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(心筋・神経・網膜色素上皮・肝細胞)、ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」は、医療の場に供される再生医療製品を安全かつ安価に製造・加工するための、各プロセスが連携した製造システムを構築することを目的としている。
 このうち、「ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」プロジェクトは、阿久津英憲サブプロジェクトリーダー(国立成育医療研究センター 研究所 再生医療センター 生殖医療研究部 部長)の指導のもとで、SCA の 11 の組合員機関(8企業、2 研究機関、1 団体)と 3 共同研究先機関(2 大学、1 研究機関)が連携して、「臨床医療現場のニーズ」を最大限反映した、高品質間葉系幹細胞製品を製造・供給するシステムを実現することを目標に、間葉系幹細胞を用いて、分離・精製技術、培養技術、保存・管理技術、幹細胞評価技術及び前臨床研究の各課題にチームを組んで取り組んだ。
 本製品の開発に当たっては、阿久津英憲サブプロジェクトリーダーが率いる研究グループでの共同研究成果を活用している。

【SCA について(H29.9 現在)】
 SCA は「幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発」を実施するため、2011 年 2 月に設立。企業 26、研究機関 1、団体 1 の計 28 の組合員で構成されている。2015 年 4 月から、AMED の委託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」プロジェクトにおいて、SCA と同様に AMED 委託事業を実施している大学、研究機関等と共同研究体制を構築し、研究開発を推進している。また、2017 年 10 月から、AMED 新規事業「再生医療技術を応用した創薬支援基盤技術の開発」プロジェクトを受託した。

【間葉系幹細胞 とは】
 骨髄や脂肪等「間葉」といわれる組織由来の体性幹細胞で、我々の体内にも存在する。軟骨、骨、脂肪、心筋、神経などへの分化能を有し、iPS/ES 細胞と共に、再生医療への応用が大きく期待されている細胞。腫瘍形成能が殆ど無いと考えられており、間葉系幹細胞を用いた多くの臨床研究が、国内外で進められている。