エア・ウォーター、ケミカル関連事業を一部譲渡

 エア・ウォーターは、2018年3月2日開催の取締役会において、ケミカル関連事業の一部であるコークス炉ガスの精製事業および当該コークス炉ガスの精製に伴い分離される副産品(粗ベンゼン、硫酸、硫酸アンモニウム、液体アンモニウム等)の販売事業を、2019年4月1日(予定)をもって、新日鐵住金、および新日鉄住金化学に対して譲渡することを決定し、2018年3月2日、エア・ウォーターと新日鐵住金および新日鉄住金化学との間でそれぞれ事業譲渡契約を締結した。
 本事業譲渡に関連して、新日鉄住金化学とエア・ウォーターとの共同出資により設立した合弁会社であり、タール蒸留事業を行う株式会社シーケムについては、新日鉄住金化学が2018年4月6日(予定)にシーケムを完全子会社化することによって当該合弁事業を解消する。

 エア・ウォーターグループのケミカル関連事業は、2002年10月にエア・ウォーターが住友金属工業(現 新日鐵住金)から買収した、コークス炉ガスの精製およびその副産品の販売事業を中心とした住金ケミカル(同社の法人格は2006年4月にエア・ウォーターが吸収合併したことで消滅)を母体として始動し、自動車、建材向けの炭素材事業や、医農薬原体、情報電子材料中間体といったファインケミカル事業などの独自事業を育ててきた。その後、2004年10月には、新日鐵化学(現 新日鉄住金化学)とエア・ウォーター・ケミカル(旧 住金ケミカル)との間でタール蒸留事業を行う合弁会社としてシーケム(エア・ウォーター・ケミカルの出資比率:35%)を設立し、両社の共同事業運営体制の下でタール蒸留事業を展開してきた。
 また、エア・ウォーターは、2015年5月に汎用化学品である無水フタル酸と機能化学品であるナフトキノンをはじめとしたキノン系製品の製造・販売を事業の柱とする川崎化成工業(東証第二部に上場)を子会社化し、ケミカル関連の事業領域をコールケミカル以外の事業領域にも拡大した。

 エア・ウォーターグループのケミカル関連を取り巻く事業環境は、2014年頃から中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の景気減速による製品全般の需要減少ならびに原油価格の下落および円高の影響によって石油化学製品の製品価格が下落したこと等により厳しい状況が継続した。
 また、昨年から原油価格の上昇等による製品市況の改善が進展し、一定程度の回復が見込まれてはいるものの、依然として市況変動が大きく、将来の事業環境は必ずしも安定的とは言い難い。

 エア・ウォーターグループは、グループの経営戦略である「全天候型経営」と「ねずみの集団経営」に基づき、事業環境の変化に左右されず、常に安定した収益を生み出す事業ポートフォリオの最適化に取り組んできたが、製品市況や需給の変動に加え、原料調達面で製鉄所の操業動向に大きな影響を受けるコールケミカル事業(コークス炉ガスの精製事業、当該コークス炉ガスの精製に伴い分離される副産品の販売事業およびタール蒸留事業を総称して、「コールケミカル事業」という)については、エア・ウォーターグループの事業規模ではその事業環境の変化が全体業績に与えるインパクトが大きく、且つ、エア・ウォーター独自の判断により事業の構造改革を進めることは困難を伴うことから、この度の事業譲渡を決定した。

 今後のエア・ウォーターグループにおけるケミカル関連事業の成長戦略としては、ナフトキノンやマキシモールをはじめとした特長ある製品群を有し、化学会社としての安定した事業基盤(人材、組織、製造、研究開発体制等)を有する川崎化成工業をエア・ウォーターグループのケミカル関連事業における中核企業に位置付けるとともに、同社を軸として、ファインケミカルや炭素材などの機能化学品分野の経営資源を統合することでケミカル関連事業の再構築を行い、機能化学品メーカーとして安定した収益を持続的に生み出す事業構造への転換を進める。
 なお、エア・ウォーターは、この事業構造改革を加速するため、2018年2月7日開催の取締役会において、川崎化成工業の完全子会社化を目的とした公開買付けを実施することを決定し、現在、実施中。

【事業譲渡の概要】

(1)譲渡する事業の内容
 ①エア・ウォーターから新日鐵住金に譲渡する事業
コークス炉ガスの精製事業および当該コークス炉ガスの精製に伴い分離される副産品(硫酸、硫酸アンモニウム、液体アンモニウム等であり、粗ベンゼンを除く)の販売事業
 ②エア・ウォーターから新日鉄住金化学に譲渡する事業
コークス炉ガスの精製に伴い分離される副産品(粗ベンゼン)の販売事業
なお、本販売事業は、本販売事業に関する商権によってのみ構成され、その他の資産、負債および権利義務等の財産は含まれない。

(2)譲渡する事業の経営成績(2017 年 3 月期)     (百万円)

  当該譲渡事業(a) 連結業績(b) 比 率(a/b)
売 上 高 34,854 670,536 5.2%
売上総利益 1,753 153,249 1.1%
営業利益 883 41,341  2.1%
経常利益 974 41,251  2.4%