エア・ウォーター、2019年3月期連結決算

 エア・ウォーターの2019年3月期(2018年4月~2019年3月)の連結決算は、売上高8014億9300万円(前年同期比6.4%増)、営業利益435億8000万円(同2.8%増)、経常利益469億7700万円(同5.1%増)、親会社株主に帰属する純利益264億6800万円(同5.1%増)だった。期末配当を従来予想から2円増配の21円とし、年間配当は40円。

 「既存事業の構造改革」と「M&Aによる成長戦略」の両輪を成長戦略の基軸に据え、当連結会計年度を実行期間の最終年度とする3カ年中期経営計画「NEXT2020-Ver.3」に掲げた実行施策を各事業分野において着実に推進した。
 
 「既存事業の構造改革」 として、産業ガス関連で積極的に生産設備の増強・更新投資を行うとともに、地域パートナーとのアライアンスを強化し、シェア拡大と収益力強化のための基盤整備に取り組んだ。また、グループ会社の再編をはじめとした収益力強化のための構造改革に取り組んだほか、エンジニアリングの組織機能を強化し、技術の改良や進歩によって新たな事業や製品を生み出す体制づくりを進めた。ケミカル関連では、コールケミカル事業の譲渡により機能化学品を中心とした事業構造への転換を図り、「全天候型経営」をさらに盤石なものとした。

 「M&Aによる成長戦略」では、 国内地域事業のさらなる拡大を目的にM&Aを実施したほか、今後の海外展開に向けた布石として、北米およびアジアにおいて海外エンジニアリングの事業基盤を構築した。また、エレトロニクスや高度医療機器分野における事業領域を拡充。さらに、発電事業の立上げに向け、国内3カ所で進めている木質バイオマス発電所の建設が着実に進展した。

 当連結会計年度の業績は、ケミカル関連の市況が上昇したほか、積極的なM&Aの推進に加え、新規顧客の獲得をはじめとした増販施策に取り組んだことなどにより、すべてのセグメントにおいて増収となった。 利益面では、医療関連事業が設備工事分野における市場環境の影響により減益となったが、 ケミカル関連事業が構造改革と収益改善が進展したことで好調に推移したほか、産業ガス関連事業が国内製造業の幅広い業種で底堅いガス需要が継続したこと、また、物流関連事業が荷扱量の増加と価格適正化が進展したことにより、それぞれ順調に推移した。また、エネルギー関連事業および農業・食品関連事業は、外部環境が悪化した影響を受けながらも増益を堅持するとともに、その他の事業を構成するエアゾール事業および情報電子材料事業も堅調に推移した。

セグメント別業績

 <産業ガス関連事業> 高炉向けのオンサイトガス供給は、年間を通じて操業の安定化と効率化に取り組んだことで順調に推移。エレクトロニクス向けのオンサイトガス供給は、第4四半期に入り一部の顧客で 在庫調整等による販売数量の減少があったものの、概ね高稼働を維持し、堅調に推移した。ローリー・シリンダー供給は、高効率小型液化酸素・窒素製造プラント「VSU」の展開を基軸とした地域の有力パートナーとの連携強化により、自動車、化学、建設関連向けなど国内製造業の底堅い需要を着実に取り込み、総じて順調に推移した。また、炭酸ガスは前年度に実施した生産能力の増強効果等により販売数量が増加したことで堅調に推移した。
 産業ガスの販売は総じて順調に増加したが、利益面では、電気料金の上昇に加え、物流コストが増加した影響を受けた。 機器・工事関連は、ガス発生装置および供給設備等の製作が増加。また、前年度にM&Aを実施した日本パイオニクス㈱と海外子会社の新規連結効果も寄与した。 セグメント売上高は1763億7500万円(前年同期比110.8%)、経常利益は171億3200万円(同105.9%)。

 <ケミカル関連事業> コールケミカル事業は、コークス炉ガス精製の単価が上昇したことに加え、基礎化学品である粗ベンゼンの販売数量が増加したことから、好調に推移した。 ファインケミカル事業は、中国の生産工場において環境規制強化による操業変動の影響を受けたものの、不採算製品の見直しに加え、電子材料向け製品を中心とした増販および価格改定の効果も あり、収益が大幅に改善した。
 グループの川崎化成工業㈱は、中国の環境規制により顧客工場の操業が変動した影響を受け、主要製品のひとつであるナフトキノンの販売が減少したが、無水フタル酸など有機酸製品 の販売価格が原料価格に連動して上昇したことで売上高が増加した。また、固定費の削減や調 達の合理化による製造コストの低減等に取り組んだことで利益面でも好調に推移した。 セグメント売上高は756億5100万円(前年同期比111.3%)、経常利益は37 億0600万円(同199.8%)。

 <医療関連事業> 高度医療分野では、医療用ガスにおいて使用量が減少した影響を受けたほか、設備工事は、病院の新規案件が一巡した影響もあり厳しい状況となった。一方、医療サービスは、SPD(病院 物品物流管理)事業における新規顧客の獲得と資材調達の合理化ならびに滅菌事業における受託料金の適正化が進展し、順調に推移した。また、医療機器は、診療報酬の改定を追い風に高気圧酸素治療装置の販売が拡大したことに加え、一酸化窒素吸入療法の症例数が増加したことにより、堅調に推移した。
 くらしの医療分野では、在宅医療事業および衛生材料事業が厳しい状況となった。また、デンタル事業は、歯科関連材料の販売が好調に推移したものの、歯科医院向けの通信販売において配送等のコストが増加した影響を受けた。注射針事業では、受注は回復したものの、更新した生産設備の立ち上げが遅れた影響等により伸び悩んだ。 なお、前年度にM&Aにより取得したシンガポールの病院設備工事事業は順調に推移した。セグメント売上高は1766億5300万円(前年同期比103.4%)、経常利益は98億5900万円(同95.6%)。

 <エネルギー関連事業> 民生用LPガスについては、ポイント付与サービスや電力小売事業への参入など、増客施策を推進したことに加え、販売店の商権買収による直売顧客拡大を進めたことで、顧客軒数と販売数量ともに増加し、堅調に推移した。一方で、震災により展示即売会などのイベントを中止した影響から機器販売が低調となったほか、配送や保安に関わる費用が増加した影響を受けた。産業用LPガスについては、全国の地域事業会社と連携し、重油からLPガスへの燃料転換を推進したこ とで販売数量が大幅に増加し、堅調に推移。 灯油については、暖冬による需要減の影響を受け、販売数量が大きく減少したが、調達施策の工夫と配送の効率化により、その影響を最小限に留めた。 また、産業ガス分野で培った極低温技術を活かしたLNGタンクローリーの販売が順調に推移した。セグメント売上高は527億4100万円(前年同期比102.5%)、経常利益は40億0900万円(同101.8%)。

 <農業・食品関連事業> 農産事業は、青果小売分野において新規店舗の出店を進めた結果、販売が拡大したが、新規店舗の立ち上げに伴い一時的にコストが増加したほか、野菜相場が乱高下した影響を受けた。加工・卸分野は、原料野菜の作柄による影響を受けたものの、調達量の確保に努め、堅調に推移した。また、農業機械の販売・メンテナンスが引き続き堅調に推移。食品ソリューション事業は、スイーツ分野の販売不振に加え、ハム・ソーセージ分野でも厳しい市場環境が続いた影響を受けた。一方、ブロッコリーなどの冷凍野菜の販売が拡大したことや加工食品分野における生産の効率化が進展したことに加え、M&Aを実施した調理冷凍食品の製造会社を新規連結したことにより、利益面では堅調に推移した。
 飲料事業は、人件費や設備投資による減価償却費が増加したものの、野菜系飲料や茶系飲料を中心に受託が拡大したことに加え、宅配水分野における構造改革が進展し、堅調に推移した。セグメント売上高は1365億6800万円(前年同期比102.1%)、経常利益は 49億0500万円(同101.1%)。

 <物流関連事業> 運送事業は、新規荷主の獲得により荷扱量が増加したことに加え、北海道・本州間におけるシャーシ輸送の発着バランスの適正化を進めるなど、安定的な幹線輸送の構築を行い、順調に推移した。 食品物流を中心とする3PL事業は、大手コンビニチェーン向けの配送業務において低温度帯の受託を新たに開始し、順調に推移した。コスト面では、人件費や軽油の上昇により厳しい事業環境が継続したが、荷主企業との交渉により受託料金の適正化が進展したことで、その影響を最小限に留めた。トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、特殊車両の販売が拡大するとともに、前年度に実施した設備投資により収益性が向上したことで堅調に推移した。セグメント売上高は479億4700万円(前年同期比106.7%)、経常利 益は、当事業年度から自家保有車両について稼動実態をより反映した耐用年数に変更したこともあり、26億4900万円(同140.3%)となった。

 <その他の事業> 海水事業のうち、㈱日本海水は、水処理設備事業において前年度に計上した大型案件の剥落や環境事業において西日本豪雨による工期遅れの影響があったものの、塩事業における業務用塩の値上げが奏功し、利益面では堅調に推移した。タテホ化学工業㈱は、耐火煉瓦向けをはじめとした 一般マグネシア製品の販売が伸長したが、上半期においてヒーター用電融マグネシアの原料価格が高騰した影響に加え、電磁鋼板向けマグネシアが一時的な需要減の影響を受け、厳しい状況となった。エアゾール製品のOEM供給を行うエアゾール事業は、中国向けのアウトバウンド需要を背景に、化粧品など人体用品を中心とした受託が拡大し、堅調に推移した。電気・電子材料などの仕入れ販売を行う情報電子材料事業は、自動車関連向けの販売が拡大したことにより、好調に推移。独自の「NVプロセス」による金属表面処理事業は、自動車部品や産業機材向けを中心に好調に推移した。また、M&Aにより取得した米国・シンガポールのエンジニアリング会社を新規連結した。セグメント売上高は1355億5600万円(前年同期比108.2%)、経常利益は84億1300万円(同102.4%)。

2020年3月期連結業績予想

  次期の業績見通しは、売上収益8300億円、営業利益480億円、税引前利益470億円、親会社の所有者に帰属する当期利益300億円を見込む。2020年3月期決算から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用する。 年間配当金予想は中間20円、期末20円の40円。