エア・ウォーター、新株式発行及び株式の売出し
エア・ウォーターは2019年11月25日開催の取締役会にいおいて、新株式発行及び株式の売出しについて決議した。
エア・ウォーターグループは、「創業者精神を持って、空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」という経営理念のもと、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、社会の発展に役立つ多種多様な製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指している。
今後の国内経済は、雇用・所得環境の改善や東京オリンピック・パラリンピック関連の経済効果等により、景気は緩やかな回復基調が継続することが期待されるものの、海外における政治・経済の不確実性のほか、消費税率の引上げや労働力不足の深刻化などによる影響の懸念もあり、依然として先行きは不透明な状況にある。
グループは、2010 年度から長期成長ビジョンとして「売上高 1 兆円企業」を掲げ、その実現に向けて取り組みを進めているが、上記のような経営環境のもと、取り組みの総仕上げを行うための期間として、2019 年度から 2021 年度までの3ヵ年を実行期間とする中期経営計画「NEXT-2020 Final」(以下、「本中期経営計画」)をスタートさせ、「革新=イノベーションの実行」を基本コンセプトとして、2022 年度以降の持続的成長を可能とする強い会社を作り上げるため、環境変化を見据えたビジネスモデルの「革新」とそれに連動する経営施策に取り組んでいる。
中でも、今後の成長機会獲得の施策として海外展開の推進を掲げており、経済成長とともに産業ガス需要の拡大が見込まれるインドを重点エリアの一つとして位置付けている。エア・ウォーターは、2013 年に地場の産業ガスメーカーを買収してインドに進出して以降も、グループの製品・サービスの複合展開に向けた市場調査等を目的に現地法人を設立する等、事業基盤の拡大に向けた取り組みを強化してきた。
こうした中、インドにおいてはミュンヘン(ドイツ)の Linde AG とコネチカット州ダンベリー(米国)の Praxair, Inc.の合併に伴い、インド競争法当局が両社の一部事業を第三者へ譲渡することを求めていた。
エア・ウォーターは、Praxair India Private Limited(以下、「Praxair インディア社」)のインド東部における一部事業の譲渡に対する入札に参加し、2019 年7月 12 日には Praxair インディア社のインド東部における一部事業をエア・ウォーターの子会社である Air Water India Private Limited(以下、「AW インディア社」)を通じて取得(以下、「インド東部案件」)した。
また、エア・ウォーターは、Linde India Limited(以下、「Linde インディア社」)のインド南部における一部事業の譲渡に対する入札にも参加し、2019 年8月 13 日付でインドのエア・ウォーター子会社を通じて行う Linde インディア社のインド南部における一部事業の譲受に関する基本合意書を締結(以下、「インド南部案件」)した。
両案件ともに、譲受の対象となる事業は、大型のASU(深冷空気分離装置)(※)による高炉向けオンサイトガス供給事業が大部分を占める。加えて、その周辺地域に複数のシリンダー充填所を有し、ローリー・シリンダー事業として各種製造業や医療機関向けに液化ガスを供給する。
両案件によって獲得する産業ガスの製造・供給拠点や顧客基盤の戦略的活用と、エア・ウォーターの国内における高炉向けのオンサイトガス供給事業の豊富な運営ノウハウの融合により、エア・ウォーターはインド国内の産業ガス市場において確固たる地位を確立する。
また、エア・ウォーターのエンジニアリング事業においては、国内では長年培ってきた産業ガス関連の技術を強みに、深冷空気分離装置等の産業ガス製造プラントや、ガスアプリケーション機器の開発・製作・施工・メンテナンスなどを手掛けてきた一方で、海外においてはグローバルにエンジニアリング拠点の獲得を進めている。
2018 年8月には、シンガポールにおいてロータリー式無停電電源装置(以下、「DRUPS」)のシステム設計から施工、メンテナンスまでを一貫して手掛ける Power Partners Private Limited(以下、「PP 社」)の発行済株式の 60%を取得し、エンジニアリング分野の新事業として、高出力 UPS システム事業に参入した。
DRUPS は主にデータセンターや半導体といった大規模な製造工場で導入されており、近年のクラウドサービスや IoT 等の普及に伴うデータセンターや半導体工場の新増設にかかる需要の高まりを背景に、高出力 UPS の世界市場は引き続き拡大していくことが見込まれる。
そのような中、高出力 UPS 事業の成長戦略上で非常に重要な案件として、2019 年7月にオランダの DRUPSメーカーである Hitec Holding B.V.(以下、「Hitec 社」)の発行済株式の 100%を取得した。
Hitec 社は 1956 年に世界で最初に DRUPS を開発したメーカーであり、60 年以上に亘り 1,500 基以上のDRUPSを世界各地に納入した実績と、競争力の高い技術力を有している。また、Hitec 社は PP 社が創業した当時から DRUPS を同社に供給しており、両社の間には強固な関係が構築されている。
エア・ウォーターは、両社を一体とした事業運営により、製品・オペレーションのコストダウン、国内を含めたグローバルでの事業体制の強化を進め、より競争力のあるトータルソリューション体制を構築し、高出力 UPS システムとその周辺領域におけるグローバルでの地位確立を目指す。
今回の新株式発行による調達資金は、インド東部案件における事業譲受に際して調達した銀行借入金の返済資金、インド南部案件の買収資金の一部に充当することを目的とした AW インディア社への投融資資金、Hitec社の株式取得に際して調達した銀行借入金の返済資金及び既存の有利子負債の返済資金に充当する予定。
本エクイティファイナンスにより、中長期的な財務規律を維持しつつも、持続的成長に向けた今後も予定されている高水準の戦略投資を可能とする財務柔軟性を確保し、長期的な企業価値の向上へと繋げていく。
(※)深冷空気分離装置は、空気をマイナス 200℃近くまで冷却、液化し、酸素、窒素、アルゴンといった産業ガスを分離、生産する装置。生産された酸素、窒素、アルゴンは、製鉄、化学、半導体産業など幅広い分野で使用されている。また、酸素は医療用酸素としても使用される。