川崎化成工業、キノン機能材の需要拡大で製造設備を新設
エア・ウォーターのグループ会社である川崎化成工業株式会社(代表取締役社長 小林伸彦、以下:川崎化成工業)は、同社の川崎工場(神奈川県川崎市)内に「機能材製造設備」を新たに設置し、2021 年 2 月より稼働する。
1.背景・目的
川崎化成工業は、2019 年4 月にスタートした同社の3 ヵ年中期経営計画において、「大黒柱となるキノン事業の拡大」を基本方針として掲げ、拡販、安全・安定操業、並びに研究開発を起点とする新規商材の輩出等により、「機能化学品の川崎化成」への総仕上げに取り組んでいる。また、同社は、独自の技術開発によりナフトキノンの商業生産化に世界で唯一成功しており、その誘導品の展開として、キノン類の持つ酸化還元や光吸収といったユニークな特性に着目した新規キノン機能材の研究開発に注力している。
近年、事業部門と研究所が一体となった営業活動が実り、キノン機能材の生産依頼が急拡大していることから、キノン機能材の安定供給と品質保証体制の整備を図るため、2021 年 2 月の稼働開始を目指し、自社工場内に「機能材製造設備」を新設することを決定した。新設する製造設備は、多品種小ロットの切り替え生産が可能となるマルチプラントとして、次世代製品開発のためのパイロットプラントの役割も担う予定。
新設備が稼働することにより、これまで以上に高付加価値な製品を安定的に提供できる供給体制と品質保証体制を実現。新たな製造設備を最大限に活用し、キノン機能材を中心とした「大黒柱となるキノン事業の更なる拡大」に注力する。
2.生産品目について
川崎化成工業では、ナフタレンの酸化反応中間体であるナフトキノンを原料として、顧客の様々なニーズに対応したキノン誘導品の製造・開発を行っている。新設する製造設備では、光増感剤としての需要が拡大している「アントラキュアー®」シリーズを中心に、機能材製品の製造を行う。
近年、省エネや環境負荷低減の観点から、LEDなどの紫外線(UV光)を光硬化性樹脂用の光源として採用する動きが高まる中で、「アントラキュアー®」シリーズはこれらの光源に対応可能な光増感剤として、電子基板、ディスプレイ、3Dプリンターなど先端市場での採用が進み、特に電子基板用途では生産性向上と共に配線の微細加工を可能にし、高集積化及び小型化に寄与している。また、他にもリチウムイオン電池の材料として、同社のキノン誘導品が採用されており、電気自動車の普及に連動して、今後も順調な需要拡大が見込まれている。
光増感剤は、開始剤が吸収できない波長の光を吸収し、そのエネルギーを開始剤に移行することで、重合反応を促進させることができる。川崎化成工業が製造する「アントラキュアー®」シリーズは、特に、紫外線(UV光)に対する反応が良好で、中でも長波長域(400nm付近)の光源に対して高い反応性を示す。
3.機能材製造設備の概要
- 建設地 : 神奈川県川崎市川崎区千鳥町1番2号
- 延床面積 : 540㎡
- 階数 : 地上3階建
- 投資規模 : 約15億円
- 着工 : 2020年1月
- 竣工 : 2021年2月(予定)
4.川崎化成工業株式会社の概要
- 会社名 : 川崎化成工業株式会社
- 設立 : 1948 年12 月4 日(1948 年5 月20 日創業)
- 本社所在地 : 神奈川県川崎市幸区大宮町1310
- 資本金 : 6,282 百万円
- 売上高 : 15,963 百万円(2019 年3 月期、連結)
- 従業員数 : 260 名(2019 年3 月31 日現在、連結)
- 事業内容 : 有機酸製品、有機酸系誘導品、キノン系製品の製造・販売
- 株主 : エア・ウォーター株式会社100%
5 .川崎化成工業が展開するナフトキノンとその誘導品について
川崎化成工業は、同社が得意とする酸化技術を駆使して、ナフタレンの酸化反応中間体であるナフトキノンを高純度且つ高収率に製造できる生産技術とプロセスを有しており、ナフトキノン及びナフトキノンを出発原料とした多環式芳香族誘導体の総称であるキノン誘導品を世界で唯一商業的に製造・販売している。ナフトキノン及びキノン誘導品は、酸化・還元、生理活性、光吸収、ラジカル補足、耐熱・難燃性などユニークな特性を有しており、医薬・農薬原料をはじめ脱硫触媒、パルプ蒸解助剤、光増感剤など様々な分野で使用される。