岩谷産業と産総研計量標準総合センター、水素ステーション向け水素計量システム検査に「マスターメーター法」を開発

簡単で低コストの検査が可能

 岩谷産業は国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)の計量標準総合センターと共同で、水素ステーションで使用される水素燃料計量システムの新たな検査技術を開発した。新たな検査方法は「マスターメーター法」を採用しており、従来に比べて簡単かつ低コストでの検査が可能になる。

重量法とマスターメーター法の比較
重量法とマスターメーター法の比較

 水素ステーションの水素は重さを基準に kg 単位で販売されており、適正な取引のための計量管理に関する業界ガイドライン1)のもと水素燃料計量システム(水素ディスペンサー)が管理されている。2014 年 7 月に国内初の商用水素ステーションが開所以来、国内の水素ステーションでは試験用高圧容器と秤量計を用いた重量法により検査が行われてきた。重量法は秤量計の校正が簡易という長所がある一方、高圧容器や秤量計等を検査専用車両に搭載している仕様上、風や振動による揺れの影響を受け、検査精度に影響が出る課題がある。

(左)マスターメーター法検査装置、(右)計量検査時の様子

 岩谷産業の中央研究所では国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、産総研の計量標準総合センターと共同でマスターメーター法による計量精度検査装置(以下、マスターメーター法検査装置)を開発。マスターメーター法検査装置は、国家標準とトレーサブルな流量計(マスターメーター)を搭載した計量精度検査装置で、「風や振動による検査精度への影響が極めて小さい」、「検査装置がコンパクトで操作が簡単であるため検査費用が抑えられる」といった長所がある。

 計量技術の実証テストは完了しており、今年度より本格的に岩谷産業が運営する全国の水素ステーションにて検査を実施し、実績を積むとともに、今後さらに検査技術の完成度を向上させる。

1)HySUT-G0002(2018)水素計量管理の運用ガイドライン(一般社団法人水素供給利用技術協会 策定)
検査周期 :水素ステーション開所前、その後は 2 年を超えない周期
最大許容誤差:測定システム(マスターメーター法、重量法)に対して測定量の 10%