エア・ウォーター・ハイドロが甲信越地区・水素ガス製造拠点をリニューアル、生産能力増強

新潟県上越市の二本木工場に「VHR」設置

 エア・ウォーターグループにおいて、水素ガスの製造・販売を行うエア・ウォーター・ハイドロ株式会社(宮野 聡 代表取締役社長、以下:エア・ウォーター・ハイドロ)は、甲信越地区における水素ガスの安定供給体制を確立するとともに、生産能力を増強するため、同社の二本木工場(新潟県上越市)にエア・ウォーターが開発した世界最高水準の効率で天然ガスから水素ガスを発生させることができる水素ガス発生装置「VHR」を設置することを決定し、2021年8 月1 日にリニューアル工事に着手した。新工場の稼働開始は2022 年4 月の予定。

 エア・ウォーターグループは国内11カ所の圧縮水素製造拠点と、9カ所のオンサイト水素ガス供給拠点を有する国内屈指の水素メーカー。顧客の工場敷地内に発生装置を設置するオンサイト供給のほか、トレーラーやシリンダーによる供給など使用量や立地に応じた最適な供給形態で水素ガスを安定供給する。

 エア・ウォーター・ハイドロは、グループにおける水素ガス事業の中核会社であり、半導体・化学・ガラス・光ファイバー・造船・自動車・エネルギー・食品など幅広い産業分野のユーザーに水素ガスを供給し、全国各地で水素ガスの製造から輸送・販売までを一貫して手掛けている。

 今回、エア・ウォーター・ハイドロは2019 年にエア・ウォーターが開発した水素ガス発生装置「VHR」を二本木工場に設置し、生産プラントのリニューアルを実施する。これまで、二本木工場では、隣接する化学工場より水素ガス精製の原料ガスの供給を受けていたが、天然ガスを水蒸気改質して水素ガスを発生させる「VHR」を導入し、都市ガスの配管供給を受けることで、コスト合理化とともに、原料ガスの供給量に左右されない、自社単独での安定的な水素ガスの生産が可能となる。また、リニューアル後の生産能力は従来比1.3倍を計画しており、既存ユーザーにおける水素ガス需要の増加に対応するとともに、甲信越地区における販売を拡大する。

 エア・ウォーターグループでは、大口ユーザーを対象に「VHR」の導入を進めながら、水素ガス生産拠点の新設や既存拠点における生産能力の増強を図り、国内における水素ガスサプライチェーンの強靭化に取り組む。また、こうした水素ガスの製造・供給インフラと合わせて、長年にわたり産業用の水素ガス事業で培ったガス精製やガスハンドリングなどの技術を基軸に、今後エネルギー用途での水素ガス需要の拡大が見込まれる中、水素ステーション向けの供給システムや移動式水素ステーションの製作等を通じて、水素社会の実現に貢献する。

設備概要

  1. 所在地 :新潟県上越市中郷区藤沢 1241 番 2 (エア・ウォーター・ハイドロ㈱二本木工場)
  2. 設備能力 :水素ガス300N ㎥/h (「VHR-300」1 機設置)
  3. 水素ガス純度:99.999%以上
  4. 稼働開始 :2022 年4 月(予定)

エア・ウォーターグループの水素オンサイト・製造充填拠点

 エア・ウォーターグループは国内11カ所の圧縮水素製造拠点と、9カ所のオンサイト水素ガス供給拠点(自社拠点5拠点)を有し、最適な供給形態で水素ガスを安定供給している。

エア・ウォーターグループの水素オンサイト・製造充填拠点

産業用水素の用途

 産業用の水素ガスは、半導体や液晶パネル製造における原料ガスの希釈や雰囲気用途、光ファイバー・ガラス製造時における燃焼ガス用途、ステンレス鋼などの金属熱処理の雰囲気用途などで使用されており、この多くは産業ガスメーカーが各工場へ水素ガスを供給する。このほか、製油所や石油化学工場では、原油から硫黄分を取り除く脱硫用途のほか、原料油脂を固める硬化剤やプラスチックなどの樹脂生成時の添加剤として使用しており、各工場内で水素を製造し自家消費されている。

水素ガス発生装置「VHR」

水素ガス発生装置「VHR」
水素ガス発生装置「VHR」

 水素ガスの製造方法としては、アンモニアや苛性ソーダ、石油化学、製鉄などの大規模工場で副次的に発生する水素を精製する方法のほか、天然ガス(メタン)・メタノールの水蒸気改質、水電解などがある。 「VHR」は、世界最高水準の効率で天然ガスから水素ガスを発生させることができる自社開発装置であり、原料の天然ガスや稼動電力の低減にもつながる環境対応型のプラント。2019 年5 月よりエア・ウォーターの尼崎ガスセンターにおいて稼動を開始したのを皮切りに、同社の他拠点および顧客の工場にオンサイト方式で設置しており、今年度中に国内で計5 基が稼働予定。また、エア・ウォーターでは今後も「VHR」による供給拠点網を構築することで、安定供給に努める。