大陽日酸、極低温反応制御システム「クールマイスターⓇEX」発売
大陽日酸は、既存製品である低温反応制御システム「クールマイスターⓇ」の制御温度領域をより低温(-120℃)まで拡張した、極低温反応制御システム「クールマイスターⓇEX」を開発し、販売を開始した。
低温反応制御システム「クールマイスターⓇ」(以下、従来装置)は主に、医薬品・化成品の不斉合成反応※1の精度向上や目的物の収率を改善するための低温合成に利用されており、液化窒素で冷却された液体冷媒を循環させることで、-60℃から-90℃の冷媒を高精度で供給することが可能。液化窒素で熱交換する機構のため、シンプルな装置構成で初期コストが抑えられることや、負荷変動への追従が良いなどの利点を持ったシステムとして、1970年代から現在までに大小合わせて約 100 台の納入実績を重ねてきた。
近年、エレクトロニクス分野など、従来の化学合成分野のみならず広い分野で化学反応を抑える取り組みが見られており、冷却対象の広がりから、さらに冷却温度を下げたいという要望が出ていた。
しかし従来の最低制御温度である-90℃より低い温度領域では、液化窒素と安定的に熱交換可能な冷媒は物性的に危険物か液化ガスに限定されていた。そこで2019 年度より、より安全で不活性な液体冷媒を活用したシステムの検討を開始。実用化に向けて熱交換方式、各種構成機器を再設計した試験装置を製作して評価を重ねた結果、今回-120℃レベルでの不活性な液体冷媒を安定的に循環供給可能なシステム「クールマイスターⓇEX」(以下、本装置)として商品化した。
【用語解説】
※1:化学的な処理過程のひとつで、光学活性(キラル)な物質※2を作り分けること
※2:分子構造が非対称なために鏡写しの構造をとった分子(鏡像体)。これらは、化学反応性や物性がほぼ等しいため分離が困難である。生体への作用が異なる場合があり、選択的合成は医薬品、農薬の開発に貢献した。
新機種の概要・特徴
本装置は、液化窒素流量制御部、冷媒冷却部及び冷媒循環供給部などのシステムで構成される。従来装置の特徴である①シンプルでコンパクトな装置構成、②負荷変動に強い、③立ち上げ時間が早い、④メンテナンスが容易、⑤ノンフロンなどを踏襲した上で、⑥安全な不活性液体冷媒を使用し、⑦-120℃の低温を安定的に循環冷却するなどの機能を付加した。顧客のシステム思想や要望を基に、最適な仕様を都度設計し提案する。
今後の予定
従来の医薬品・化成品分野に加え、エレクトロニクス分野等、-100℃以下の安定した冷却制御が要求される分野へ展開し、年間2台以上の販売台数を見込む。
システムの仕様
- 寒冷源:液化窒素
- 循環冷媒:不活性液体冷媒(常温:液体)
- 冷却制御温度:-120℃(最低制御温度)
- 温度制御精度:±2℃
- 冷却性能:5kW(評価装置)