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エア・ウォーター 2022年3月期通期連結決算(IFRS)、過去最高業績を更新

2023年3月期業績予想は売上収益1兆円、営業利益700億円

 エア・ウォーターの2022年3月期通期連結決算(IFRS)は、売上収益8886億6800万円(前年同期比10.2%増)、営業利益651億7400万円(同27.2%増)、親会社の所有者に帰属する純利益432億1400万円(同57.9%増)となった。年間配当は中間配当27円、期末配当29円の計56円(前期比12円増配)。

 事業構造改革と成長市場の取り込みにより、全てのセグメントで営業収益、営業利益ともに過去最高業績を更新した。営業利益率は7.3%(前期比0.9pt増)で大幅に向上。世界的なサプライチェーンの停滞、資源価格の高騰など不透明な事業環境が継続するも、利益面は2021年11月に上方修正した見直予想を達成した。

 また、中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度における業績目標との比較では、売上収益1兆円は未達となったものの、営業利益600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益370億円の目標値を大幅に上回る結果となった。

当期の経営成績

 外部環境が大きく変化する中において、グループは、多様な事業領域から成る安定した収益基盤をベースに、さらなる成長に向けた構造改革や成長戦略を着実に実行した。

 産業ガス関連事業においては、高い成長が見込まれるエレクトロニクス分野とインドにおける海外事業の拡大を図り、事業ポートフォリオの変革を進めたほか、ケミカル、医療、農業・食品関連事業において、グループ会社の統合再編をはじめとした事業構造改革に取り組み、生産や販売体制等の全体最適化と今後の事業成長に向けた基盤整備を推進した。また、新型コロナを契機に需要が拡大した感染症対策分野やエレクトロニクス分野はもとより、エネルギー、食品、物流などの各事業においても「ウィズコロナ」による市場の変化を捉えた取り組みが、持続的な事業成長の原動力となった。さらに、カーボンニュートラルに向けた各種の実証事業やコロナ禍における医療提供体制の充実化など、社会課題に応えるソリューションの拡充に積極的に取り組んだ。

 また、当連結会計年度は、2019年度から2021年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度であり、その達成に向けた取り組みとともに、次世代の成長を見据えたグループ経営基盤の強化に注力した。ガス製造・エンジニアリング・技術開発部門の組織改革や管理部門の体制強化を進めたほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により全社的な業務効率化を図り、収益基盤の強靭化が進展した。さらに、中長期的な企業成長の牽引を海外に求めるグローバル戦略のもと、三井物産株式会社との戦略的提携による協業を開始するとともに、インド・北米における産業ガス・エンジニアリング分野を中心に事業推進体制の強化に取り組んだ。これらの諸施策に加え、国内事業を牽引する中核会社として2020年10月に発足した地域事業会社3社は、コロナ禍から回復した需要の取り込みと統合再編による収益力の向上に取り組むとともに、農業・食品分野や環境物流分野のM&Aを実施し、地域のニーズに対応した新事業の拡大を進めた。

産業ガス関連事業

 売上収益は1945億6800万円(前期比104.8%)、営業利益は215億5800万円(同103.3%)。

 エレクトロニクス向けのガス供給や特殊ケミカル・機器販売が好調に推移したことに加え、インドでの産業ガス事業が高水準に推移したことで事業全体の収益力が底上げされ、業績向上に寄与した。さらに、鉄鋼向けオンサイトガス供給に加え、国内製造業の生産活動が総じて回復基調で推移したことから各種産業ガスの需要も総じて回復し、順調に推移した。

 ガス事業では、エレクトロニクス向けガス供給が、主要顧客である国内半導体メーカーの設備投資と高稼働を背景に、好調に推移。鉄鋼向けオンサイトガス供給は、国内製造業の生産回復と鋼材輸出に伴う粗鋼生産の増加により、ガス販売数量も増加した。ローリー・シリンダーガス供給は、電子部品、化学、機械向けなどが堅調に推移し、前年度を上回る販売数量となったが、年度後半より電力料金の高騰により産業ガスの製造コストが増加した影響を受けた。炭酸ガスは、宅配向けドライアイス需要の増加を受け、順調に推移した。

 海外事業は、主要エリアであるインドにおいて、粗鋼増産に伴い鉄鋼向けオンサイトガス供給が高稼働を継続し、順調に推移した。同時に、同国内の製造業が年度を通じて堅調に推移するとともに、年度前半に新型コロナの感染拡大による医療用酸素の逼迫化に対応したことで、ローリー・シリンダーによる産業・医療用ガスの外販事業も順調に推移した。

 機器・工事事業は、半導体メーカーの増産・増設投資に伴う周辺需要の獲得に注力し、関連工事や特殊ケミカル供給機器、ガス精製装置に加え、半導体製造装置向け熱制御機器などの販売が大幅に拡大した。

ケミカル関連事業

 売上収益は391億2900万円(前期比117.3%)、営業利益は35億2900万円(同177.2%)。

 2021年10月に事業統合により発足したエア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱を主体に、電子材料を中核とした機能化学品事業への構造転換を進め、生産体制の効率化と開発・販売面の強化に取り組んだ。事業全体の業績としては、新型コロナを契機として需要が急拡大した電子材料や精密研磨パッドの販売が増加したことに加え、基礎化学品分野の市況が前年度に比べ大幅に上昇したため、好調に推移した。

 エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱の電子材料事業は、旺盛なエレクトロニクス関連需要が継続したことで、半導体封止材用の熱硬化性樹脂や機能性モノマーの販売が好調に推移。また、電子材料用途を中心に受託合成事業が拡大するとともに、過年度より進めてきた事業全体にわたる生産体制の最適化により収益改善が進展した。基礎化学品事業は、原油価格の上昇に伴い、有機酸などの製品市況が高水準に推移し、好調に推移した。機能材料事業は、農薬向けにキノン系製品の販売が順調に推移した。

 その他事業では、㈱プリンテックの高機能回路製品の販売が産業用ロボット向けに堅調だったことに加え、㈱FILWELの主力製品である精密研磨パッドの販売がデータセンター市場の伸展によるハードディスク需要の高まりを背景に、好調に推移した。

医療関連事業

 売上収益は1951億7000万円(前期比104.7%)、営業利益は118億5700万円(同112.9%)。

 新型コロナの影響を大きく受けた前年度に対して、主力である病院向けビジネスの事業環境が年度を通じて回復基調で推移したことに加え、新型コロナをめぐる治療や感染防止対策、ワクチン接種といった医療ニーズの変化に対応し、医療現場の課題解決に資する各種提案にグループ総合力を発揮して取り組んだ結果、順調に推移した。

 設備事業は、新型コロナの影響で一時控えられていた手術室など病院設備の改修工事・保守点検が復調し、堅調に推移。医療サービス事業は、受託滅菌分野にける新規顧客の獲得やSPD(病院物品物流管理)分野における資材調達の効率化により収益改善が進展した。医療ガス事業は、手術件数の回復や新型コロナの治療に関わる医療用酸素の需要が増加するとともに、在宅医療事業も自治体向けに酸素濃縮装置のリース台数が増加した。医療機器事業は、一酸化窒素吸入療法の症例数が増加した。

 衛生材料事業は、前年度のような特需はなくなったものの、マスクや手指消毒剤など定着化した感染対策製品の需要を取り込み、底堅く推移した。その他の事業では、注射針事業は、ワクチン接種用注射針の販売が増加し、堅調に推移。また、デンタル分野も持分法適用会社である㈱歯愛メディカルにおいて感染対策製品の需要が継続するなどし、堅調に推移した。

エネルギー関連事業

 売上収益は615億9400万円(前期比116.0%)、営業利益は47億7300万円(同104.7%)。

 LPガスの販売単価が輸入価格の指標となるCP価格に連動して上昇を続け、灯油も同様に原油高を受け需要期の冬場に販売単価が上昇した結果、売上収益が拡大した。また、利益面でも、輸入価格の上昇を適切に販売価格へ転嫁するとともに、IoTを活用した配送効率化など業務プロセスの高度化が寄与し、順調に推移した。

 LPガス事業は、巣ごもり需要が減少したことで家庭用の販売数量は微減となったが、工業用需要の回復と新規拡販により、LPガス全体の販売数量は増加した。灯油は、価格上昇により消費者の節約志向が高まった影響があったが、適切な販売価格の対応と仕入調達の合理化を進めた結果、堅調に推移した。機器・工事は、半導体不足に起因するガス給湯機器の品薄による影響を受けたが、北海道の気候に対応したガレージ製品の販売が堅調に推移した。ベトナムでのLPガス卸売事業は、年度後半からロックダウンによる影響で充填所の操業が制限されたことから、販売数量が減少した。

 天然ガス関連事業は、政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、顧客の脱炭素意識の高まりから燃料転換や供給機器の需要が増加し、北海道におけるLNG供給事業のほか、小規模LNG供給機器「Vサテライト」やLNGタンクローリーの販売が順調に推移した。

農業・食品関連事業

 売上収益は1394億6700万円(前期比105.2%)、営業利益は57億1700万円(同141.9%)。

 飲料、スイーツ分野を中心に販売が回復するとともに、コロナ禍によって変化した「食」のニーズに対応し、市販用の商品開発と拡販に注力したことで、売上収益が拡大した。また、製造・開発・販売面でのシナジー創出を目的として、グループ会社の統合再編により2021年10月に発足したエア・ウォーターアグリ&フーズ㈱が中心となり、生産・管理の効率化による収益改善に取り組んだ。

 農産・加工品事業では、ハム・デリカ分野は、市販用調理加工品の新製品が大手量販店に採用されるなど、ライフスタイルの変化に対応した商品開発に注力し、堅調に推移。スイーツ分野は、かねてより取り組んできた生産・物流面の収益改善が進展するとともに、巣ごもり需要や消費期限の長期化に対応した商品開発を通じて、量販店やコンビニエンスストア向けの販売が好調に推移した。農産・加工分野は、天候不順により北海道産の農産物の収穫量が減少した影響を受けた。また、2021年11月より関西地区を主要エリアとして農産物直売所「産直市場よってって」を運営する㈱プラスを新規連結するとともに、子会社における土地売却益を計上。

 飲料事業は、健康志向を背景に拡大した野菜系飲料や植物性ミルク飲料の生産受託が好調だったことに加え、2020年に導入した北海道・恵庭工場のPETボトル充填ラインが高稼働を継続したことも寄与し、前年度を上回った。

 その他の事業では、青果小売分野は、百貨店を中心とした店舗への来客数が回復せず、前年度並み。一方、農業機械分野は、更新やメンテナンスなどの底堅い需要を背景に堅調に推移した。

物流関連事業

 売上収益は584億4100万円(前期比109.7%)、営業利益は31億2100万円(同110.2%)。

 年度後半を中心に軽油価格の上昇や車体製造事業における車両の調達遅れによる影響を受けたが、新型コロナを契機として需要が拡大した低温物流分野が堅調に推移するとともに、関東と北海道地区において自社物流ネットワークの構築を進めてきた結果、EC(電子商取引)に関わる幹線輸送分野の増加など、一般貨物の荷扱量が拡大した。また、北海道地区における環境物流分野のM&Aによる新規連結効果も寄与し、順調に推移した。

 運送事業は、北関東と北海道に建設した物流センターの機能を活かした受注活動によって、ネット通販の大型受託案件を獲得するとともに、製材や建材を中心にフェリー航路におけるシャーシ輸送が順調に推移し、幹線輸送の荷扱量が増加した。また、食品を中心とした低温物流分野の需要拡大を背景に自社倉庫の稼働率が向上したほか、2021年8月にM&Aを実施した北海道を事業エリアとする㈱リプロワークにおいて医療系廃棄物の取扱量が増加したことも収益拡大に寄与した。

 食品物流を中心とする3PL事業は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けの荷扱量が堅調に推移するなか、コスト上昇を背景とした受託料金の適正化を継続した。

 トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、トラック車両本体の生産遅れの影響を受け、前年度を下回った。

海水関連事業

 売上収益は461億7500万円(前期比112.7%)、営業利益は38億2800万円(同124.2%)。

 業務用塩や電磁鋼板用マグネシアなどのトップシェア製品を起点に環境、電力、食品、都市インフラ(水処理・下水管更生)など、海水から派生した多様な事業を展開し、着実に収益力を高めた。事業全体の業績としては、環境事業、マグネシア事業における需要回復に加え、新たに赤穂第2木質バイオマス発電所が稼働したことで順調に推移した。

 塩事業は、業務用塩や道路融雪用塩の販売が増加し、堅調に推移した。なお、第4四半期よりエネルギーコストの上昇に対応するため、塩製品の価格改定を実施。また、食品事業は、環境に配慮したおにぎり用の海苔製品の販売がコンビニエンスストア向けに拡大した。環境事業は、製鉄所向けを中心に水酸化マグネシウムの販売が回復、電力事業は、2021年1月より営業運転を開始した赤穂第2バイオマス発電所が安定稼働を継続し順調に推移した。一方、都市インフラ事業は、水処理設備工事の着工遅れが生じた影響から前年度を下回った。

 マグネシア事業は、中国産原料の価格高騰や海上輸送費の上昇による影響を受けたものの、家電向けを中心としたヒーター用電融マグネシアや半導体需要の増加に伴うセラミック製品の販売数量が増加し、総じて順調に推移した。

その他の事業

 売上収益は1541億1900万円(前期比127.0%)、営業利益は101億1000万円(同208.3%)。

 エアゾール事業は、巣ごもり需要を取り込んだ殺虫剤や模型用塗料の生産受託が高水準を継続したが、前年度に特需のあったアルコール除菌剤の減少と原油高を背景とした原材料価格の上昇を受けて、前年度並みの水準となった。

 情報電子材料事業は、世界的な半導体・電子部品の需要拡大を受けて、顧客における在庫積み増しの動きが継続し、国内外ともに好調に推移した。

 海外エンジニアリング事業における産業ガス関連機器分野は、液化水素タンクなど脱炭素化を背景とした設備機器の需要拡大に加え、炭酸ガス関連機器や水処理関連機器などの受注も増加し、順調に推移した。高出力UPS分野は、メンテナンスをはじめとするサービス領域は堅調に推移したものの、主にアジアにおいて周辺国への移動や経済活動の制限が年度を通じて継続したため、進行中の工事遅延や新規プロジェクトの着工遅れが相次いだ影響を受けた。

 電力事業は、2021年4月より営業運転を開始した福島県いわき市の木質バイオマス専焼発電所が安定稼働を継続したことから、売上・利益面ともに前年度を大幅に上回った。

 その他の事業は、半導体製造装置向けの製品販売が大幅に増加したOリング事業が、好調に推移した。

今後の見通し

 エア・ウォーターグループでは、変化が激しく、先行き不透明な経済環境に対応しながら、将来にわたって持続的な企業成長を実現するため、グループが展開する多様な事業領域と、気候変動影響や超高齢化社会の進展などの世界的な社会課題を踏まえ、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸を定めた。また、本年4月1日付をもって、この2つの成長軸に沿って、従来の社内カンパニーと事業部門を4つの事業グループと12の事業ユニットに再編するとともに、コーポレート部門のグループ経営戦略機能を強化するための組織改革を実施した。過年度までに体制を整備した地域事業会社とエンジニアリング・技術開発部門も併せて、エア・ウォーターとグループ会社群がより一体となった経営体制に移行することによって、M&Aを通じて拡大したグループ経営資源の最適化を図るとともに、事業間の枠組みを越えたシナジーの創出に取り組み、さらなる収益力の強化と次世代の成長を牽引する新事業の創出を進める。また、事業戦略と人材戦略は両輪であることから、グループ人材の流動化や社員の自立的なキャリア形成を促進する人事制度改革にも取り組む。さらに、グループのサステナブルビジョンである「地球、社会との共生による循環型社会の実現」を目指し、さらなるCO2排出量の削減や地産地消による再生可能エネルギー供給モデルの確立などに取り組む。

 今後の事業戦略としては、「国内は収益力強化、海外は成長を牽引」を基本方針とし、引き続き積極的なM&Aや設備投資を実施する。海外事業は、インド・北米における産業ガス供給事業を重点領域として、長年築き上げてきたガス供給に関わるエンジニアリング力や三井物産株式会社とのアライアンスを活かし、積極的な事業拡大を進める。国内事業は、新組織である4つの事業グループが技術によるイノベーションを基軸とした事業間シナジーを追求し、時代の潮流を捉えた新たな成長を目指すとともに、地域事業は、グループの多様な事業領域と地域に密着した事業基盤を活かし、地域の課題解決に貢献する新事業の創出とさらなる収益力の強化に取り組む。

 また、事業全般において徹底した原価低減に取り組みつつ、電力料金の高騰により製造コストが増加した産業ガスをはじめ、ケミカル、物流、加工食品、塩、工業用マグネシアなどの事業領域においても、世界的な原材料や燃料価格の上昇に対応した価格改定の取り組みを遅滞なく実行する。

 次期2023年3月期通期の業績見通しは、売上収益1兆円(前期比12.5%増)、営業利益700億円(同7.4%増)、税引前利益680億円(同5.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益440億円(同1.8%増)を見込む。年間配当は前期と同額の56円を維持する。

 なお、エア・ウォーターグループは、2010年度から取り組みを進めてきた長期成長ビジョン「売上高1兆円企業ビジョン」の最終ステップとして、2019年度から2021年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画「NEXT-2020 Final」を推進してきた。2022年度からは、2030年におけるグループのあるべき姿を見据え、グループの強みである「事業・技術・人材の多様性」を活かしたシナジー創出を骨子とする3カ年の中期経営計画をスタートさせた。新しい中期経営計画は、本年7月にエア・ウォーターウェブサイト等において公表を予定。

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