岩谷産業が種イモの最適な発芽を制御する「エチレン処理技術」を開発
2023年4月から評価機のレンタル開始、特許出願中
岩谷産業は、種ジャガイモ(以下、種イモ)※1 の発芽処理工程において、所定条件のエチレン※2 処理を施すことで、最適な発芽状態に制御し得る技術およびシステムを開発した。(特許出願中)
エチレン処理システムの販売を通じて、種イモ農家や生産農家の課題解決により、農業関連分野の発展に貢献する。
種イモの発芽処理では温度管理が必要となるが、加温しすぎると発芽伸長が進むため最適な状態にするのが難しく、また光照射の方法を用いると、種イモを移動させるなど膨大な手間がかかっていた。
岩谷産業が開発した「エチレン処理技術」では、種イモの発芽伸長を抑制することができ、エチレン処理と温度制御を連動させることで最適な発芽状態を実現することが可能となる。また、エチレン処理した種イモを定植したところ、収穫期に最適なサイズ(M 玉)のジャガイモを大量に収穫できる結果も得られた。
これらの結果を受け、2023年4月よりスナックメーカーの契約農家に本技術をシステム化した評価機のレンタルを開始した。
※1 種ジャガイモ:ジャガイモを畑で育てるための種となるイモ。
※2 エチレン:無色で特殊な甘い臭いのガス(C2H4)。野菜や果物などが発する植物ホルモンの一種で、果実成熟促進、落ち葉や落果の促進、開花促進といった影響を与える。
■エチレン処理方法とその 3 つの効果
種イモの発芽処理を行う保管庫に低濃度のエチレンを供給し、加温温度をコントロールする。この処理技術によって、①種イモの発芽時における過度な芽の伸長を防ぐ、②種イモの発芽数が増加する、③エチレン処理後の種イモを畑で栽培することで、製品単価が高いとされるサイズのジャガイモを多く収穫することができるという効果が得られ、農家の生産性向上にも貢献する。
■研究開発の経緯・内容
岩谷産業は、スナックメーカーからエチレン処理設備に関する相談を受け、2021 年 12 月に同社中央研究所で最適な発芽処理の研究を開始、ラボスケール評価にて発芽数増加や発芽長抑制に寄与する結果が得られた。
2022 年 4 月~9 月に、農家の協力の下で北海道での実地フィールド評価を実施した。収穫したジャガイモを JA の規格※3 ごとに分類したところ、エチレン処理区は未処理区に比べて M 玉が重量・個数・重量割合いずれも増加する傾向が見られた。この結果を受け、特許出願を行うとともにエチレン処理システムを開発し、2023年4 月から評価機のレンタルを開始した。
※3 JA での分類規格:大玉(191g 以上) / L 玉(91~190g)/ M 玉(61~90g)/ S 玉(41~60g)/ 小玉(40g 以下)