岩谷産業 2023年3月期通期連結決算
セパレートガスは電子部品業界向けで販売数量減少、電力料金上昇で製造コスト増加
岩谷産業の2023年3月期通期連結決算は、売上高9062億6100万円(前年同期比31.3%増)、営業利益400億3500万円(同0.1%減)、経常利益470億1100万円(同1.3%増)、親会社株主に帰属する純利益320億2200万円(同6.9%増)となった。直近の配当予想を修正し、期末配当を10円増配し年間配当金を95円とした。
当期の経営成績の概況
脱炭素社会の実現に向けて、岩谷産業が参画する「液化水素サプライチェーンの商用化実証」において、海外の出荷地と国内の受け入れ地が決定するなど、CO2フリー水素サプライチェーン構築に向けた取り組みを着実に推進した。また、FC商用車向け水素ステーションの建設に向けて、コスモ石油マーケティング株式会社と合同会社を設立した。
総合エネルギー事業では、カーボンオフセットLPガスなど顧客の脱炭素化を支援する商材の拡販に加え、「イワタニカセットガス」の原材料調達から廃棄までを含めたサプライチェーン全体のCO2排出量を算定・公表するなど、LPガスの脱炭素化に向けた取り組みを進めた。
産業ガス・機械事業では、再生医療分野において、中央研究所で細胞の製造や輸送、凍結保管に関する研究を進めるとともに、新規顧客の獲得に注力した。陸上養殖分野においては、同研究所に水産養殖の研究設備を導入し、商品提案力の強化を図った。
マテリアル事業では、金属加工事業の拡大に向けて、タイの拠点を拡張し、製造設備の増強や太陽光パネルの設置を行うことで、生産能力の拡大とCO2削減に取り組んだ。
セグメント別の状況は次のとおり。
【総合エネルギー事業】
売上高は3937億2000万円(前年同期比665億4500万円の増収)、営業利益は144億3400万円(同82億2100万円の減益)。
LPガス輸入価格が高値で推移したことや、新規連結の影響もあり、LPガスの販売が増加した。また、カセットガスの販売も堅調に推移した。一方、LPガスの収益性は改善したものの、市況要因が前年度比で111億8百万円の減益と大幅なマイナスとなった。
【産業ガス・機械事業】
売上高は2404億0300万円(前年同期比560億7000万円の増収)、営業利益は165億6100万円(同40億9300万円の増益)。
エアセパレートガスは、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少したことに加え、電力料金の上昇により製造コストが増加した。水素事業は、水素ステーションの運営費用が増加する中、液化水素や関連設備の販売が伸長した。特殊ガスについては、半導体ガス等が堅調だったことに加え、ヘリウムは世界的な需給ひっ迫により市況が上昇する中、安定供給に努めた。また、機械設備は、ガス供給設備や半導体関連機器の売上が伸長した。
【マテリアル事業】
売上高は2384億5300万円(前年同期比874億7800万円の増収)、営業利益は125億3600万円(同52億8100万円の増益)。
ミネラルサンドはサプライチェーンの混乱により市況が高止まりする中、引き続き安定供給に努めたことで増収となった。ステンレスは新規顧客向けに販売が増加し、金属加工品もエアコン向けを中心に堅調に推移した。また、次世代自動車向け二次電池材料は市況上昇の影響や新規顧客向けの販売により売上が増加し、低環境負荷PET樹脂やバイオマス燃料等の環境商品も伸長した。
【自然産業事業】
売上高は289億8600万円(前年同期比56億0900万円の増収)、営業利益は5億6700万円(同1億0800万円の減益)。
業務用や一般消費者向け冷凍食品の需要が回復する中、仕入コストおよび物流費上昇への対応を進めた。一方で、畜産の飼料価格高騰に加え、種豚の出荷頭数が減少した。
【その他】
売上高は46億9700万円(前年同期比1億6300万円の増収)、営業利益は13億6400万円(同1億0500万円の減益)。
今後の見通し
2024年3月期より、会社組織の変更に伴い、事業セグメントの区分方法を見直し、報告セグメントを総合エネルギー事業、産業ガス・機械事業、マテリアル事業の3区分に変更した。
総合エネルギー事業は、引き続きLPガス直売顧客数の増加と販売数量の増量に努める。またLPガスや都市ガス顧客に対して、エネルギー関連機器の拡販を行うとともに、脱炭素の流れの中で重油からの燃料転換の促進や、カーボンオフセットLPガスの販売を拡大する。カートリッジガス事業においては、中国に加え、タイの新工場を起点とし、東南アジアを中心に海外事業の拡大に取り組む。
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスの適正な価格転嫁と拡販を図るとともに、引き続いてヘリウムの安定供給に取り組む。また、脱炭素に関連して、液化水素を始めとするガスや設備の販売を強化する。水素エネルギー社会の実現に向けては、CO2フリー水素サプライチェーン構築の取り組みを着実に推進する。
マテリアル事業は、各種資源・素材価格が下落傾向にある中、資源ビジネスの拡大に向けて、調達数量の確保と新たな権益獲得に向けた取り組みを進める。環境ビジネスについては、低環境負荷PET樹脂、バイオマス燃料、次世代自動車向け二次電池材料等の拡販に加え、リサイクル事業などの新たな取り組みを推進する。また、機能性フィルムを中心とした先端材料の拡販や、金属加工事業などの海外事業の強化を図る。
次期2024年3月期の連結業績見通しは、売上高9070億円(前年度比0.1%増)、営業利益450億円(同12.4%増)、経常利益503億円(同7.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益335億円(同4.6%増)を予想する。配当金は期末95円の年間配当金95円を維持する。