エア・ウォーター北海道とインターステラテクノロジズ、ロケット燃料に牛ふん由来の液化バイオメタンを選定

地産地消のカーボンニュートラルエネルギーで宇宙産業の脱炭素化に貢献

 エア・ウォーターグループのエア・ウォーター北海道株式会社(本社:札幌市中央区、代表取締役社長:鹿嶋 健夫、以下「エア・ウォーター北海道」)と、インターステラテクノロジズ株式会社(本社:広尾郡大樹町、代表取締役社長:稲川 貴大、以下「インターステラテクノロジズ」)は、北海道十勝地方の未利用バイオマスである家畜ふん尿から製造した液化バイオメタン(Liquefied Bio Methane、以下「LBM」)を、小型人工衛星打上げロケット「ZERO」(以下「ZERO」)の燃料として使用することを決定した。

LNG供給設備をLBMの供給時に使用(大樹町)

 両社は、2023年秋頃より、北海道大樹町の宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」内にあるエンジン燃焼試験棟において実証を開始し、開発が進んでいるZERO初号機においてロケット燃料として使用することを目指す。

 エア・ウォーターグループは、家畜ふん尿から発生するバイオガスを、LNG(液化天然ガス)の代替燃料となるLBMに加工し、域内で消費する地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んでいる。

 インターステラテクノロジズは、「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンを掲げ、独自にロケットの開発・製造を行う。同社が開発するロケット「ZERO」の燃料に、家畜ふん尿由来のカーボンニュートラルエネルギーであるLBMを使用することで、地球環境にやさしい燃料でロケットの打ち上げが可能となる。

「液化メタン」によるカーボンニュートラルへの貢献

 エア・ウォーター北海道は、2021年5月よりインターステラテクノロジズの宇宙開発パートナーシッププログラム「みんなのロケットパートナーズ」に加入しており、これまでも、各種試験で使用するLNGの供給やタンクの製造をはじめ、技術・物資面において支援を行ってきた。今後も、両社は、先進技術への挑戦を通じて、持続可能な形で、日本の宇宙産業の発展に寄与するとしている。

 一般的な液体燃料ロケットは、液化水素や液化メタン等の炭化水素を、酸化剤である液化酸素と混合し燃焼することで、強い推進力を生み出している。液化メタンは価格、燃料としての性能、扱いやすさ、入手性、環境性などが総合的に優れた燃料で、SpaceX社(米国)のスターシップをはじめ、近年、世界的に採用するロケット会社が増えている。

 ロケット燃料には不純物を含まない高純度メタンが必要なため、インターステラテクノロジズは燃料に液化メタンを選定した2020年以来、その調達方法を検討してきた。

 今回、ロケット燃料として使用するLBMは、バイオガスの主成分であるメタンを分離・精製し、約-160℃で液化したもので、従来ロケット燃料として使用される高純度メタンと同等の純度(99%以上)となる。ZERO初号機の打上げに向け、ロケット燃料として問題なく使用できることを確認する。

地産地消エネルギーのサプライチェーン構築

 エア・ウォーターグループは、北海道十勝エリアを中心に持続可能な地域循環型のエネルギー供給モデルの構築に取り組んでいる。2022年10月には、帯広市にLBMの製造工場を国内で初めて稼働させ、食品工場、LNGトラック、船舶燃料等への燃料供給に向けた実証を進めている。

LBMの製造プラント(帯広市)
LBMの製造プラント(帯広市)

 今後、LBMの実用化が進み、バイオガスの捕集からLBMの製造・輸送・販売に至るサプライチェーンが構築されると、域内の酪農施設にもメタン発酵設備の導入が進むことになる。これにより、社会課題となっている家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などの環境問題対策にもつながる、好循環が創出されることが期待されている。

LBMサプライチェーン
LBMサプライチェーン

※LBMは、酪農家が保有するバイオガスプラントから発生した未利用バイオガスを回収した後、その主成分であるメタンを分離・精製し、約-160℃で液化したもの。メタンは液化することにより容積を1/600に圧縮できるため、一度に大量のメタンを輸送することが可能になる。また、家畜ふん尿が原料のため、カーボンニュートラルな国産エネルギーで、環境省が実施する「令和3・4年度 地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」において採択された。