エア・ウォーターとパナソニック インダストリー、北海道・帯広で地産地消型エネルギー活用モデルを構築

業界初となる家畜由来のバイオメタンを工場電力と製品材料に活用、27年度にCO2排出量半減

 パナソニック インダストリー株式会社(本社:大阪府門真市、代表取締役 社長執行役員・CEO:坂本 真治、以下、パナソニック インダストリー)とエア・ウォーターは、環境負荷低減と地域貢献を両立する地産地消のエネルギー活用モデルを構築する。家畜ふん尿から製造したバイオメタン[1]を工場電力と製品材料に利用する取り組みは電機・デバイス業界内初となる(2023年7月現在、パナソニック インダストリー/エア・ウォーター調べによる)。

 パナソニック インダストリーで車載デバイス事業を担当するパナソニック スイッチングテクノロジーズ株式会社とエア・ウォーターは、2025年度を目途に、同社の帯広工場(以下、同工場)において、エア・ウォーターが製造・供給する家畜ふん尿由来のバイオメタンの利用を開始し、工場の脱炭素化及び地域社会への貢献を進める合意書を締結した。

地産地消のエネルギー活用モデルのイメージ

 本取り組みは、地域内の未利用資源からバイオメタンというクリーンエネルギーを製造し、地域内で消費することで、バイオガスを活用したい酪農家と温室効果ガス削減に取り組む企業双方のニーズを満たす、地産地消のエネルギー活用モデルとなる。また、環境面では、化石燃料の代替としてバイオメタンを利用することで、工場から排出されるCO2の削減につなげる。さらに、安定的にバイオメタンを製造・輸送・消費するサプライチェーンが構築されることで、社会課題となっている家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などの減少にもつながることが期待されるとしている。

 今後、両社は2025年度の利用開始を目指し、地域社会とともに持続可能な社会を目指したエネルギー活用モデルの構築を推進する。 

パナソニック インダストリーの取り組み

 パナソニック インダストリーは、脱炭素化を事業成長の機会ととらえるとともに、持続可能な社会の実現に向けて2030年CO2排出量の実質ゼロ化を推進している。車載デバイスの製造を行う同工場では、生産の効率化、省エネ機器の導入、断熱・廃熱利用など省エネ化を進めてきた。

 今後、地域社会への貢献にもつながる取り組みとして、敷地内に発電設備(コージェネレーションシステム)を導入し、家畜ふん尿由来のバイオメタンを使用する。これにより、同工場から排出されるCO2は2027年度に2022年度比で約5割以上削減される見込み。また、同工場で製造している環境対応車向けのEVリレー[2]は製造工程で水素ガスを使用しており、供給するバイオメタンの一部から水素を製造し、CO2フリー水素を製品の一部に利用する。

エア・ウォーターの取り組み

 エア・ウォーターは、環境省に採択され推進する技術開発・実証事業の下、2022年10月に帯広市に液化バイオメタンの製造工場を国内で初めて稼働させた。現在、LNGトラック、LNG燃料船、ロケット等への燃料供給に向けた実証を進めると同時に、サプライチェーン構築に取り組んでいる。

 こうした中、同工場へ安定的にバイオメタンを供給するため、今まで以上に家畜ふん尿由来のバイオガスの捕集先を増やし、その規模を拡大する。また、酪農家に設置するガス精製ユニット内に分離膜を追設し、バイオメタンのみを吸蔵・輸送するなど、製造コストの低減を図る。自治体や酪農家をはじめとした地域社会と協力しながら、商用規模でのバイオメタンの活用モデルを構築する。

【用語説明】

[1]バイオメタン

 バイオメタンは、下水汚泥や生ごみ、家畜ふん尿などバイオマス由来の「バイオガス(CH4 60%、CO2 40%)」から、CO2分を取り除いた「メタンを主成分としたガス」のこと。地域で排出される家畜ふん尿を由来とするバイオメタンは、持続可能な再生可能エネルギーであり、化石燃料由来のエネルギーと比べてクリーン(CO2排出量が全体として実質ゼロ)である。

[2]EVリレー

 車の電動化に伴う高電圧化・高電流化に対する安全性を実現する制御部品。電流遮断時に発生するアークを冷却するために内部に水素ガスを封入している。パナソニック インダストリーは、1997年にハイブリッド車(HEV)の高電圧バッテリ制御用途として、世界で初めて水素封止カプセル接点技術を採用した直流高容量リレー「EVリレー」を実用化した。