エア・ウォーター 日本初の家畜ふん尿由来「液化バイオメタン」を製造開始

バイオガスを捕集・輸送、センター工場で液化バイオメタンを製造しLNG代替燃料として利用実証

 エア・ウォーターは、家畜ふん尿由来のバイオガス※2に含まれるメタンを「液化バイオメタン※1(LBM:Liquefied Bio Methane、以下、LBM)」に加工するセンター工場の建設を終え、2022年10月13日にLBMを初出荷した。今後、出荷先であるよつ葉乳業㈱十勝主管工場において、液化天然ガス(LNG)の代替燃料として利用する実証試験を行い、一連のサプライチェーンモデルの構築に取り組む。

 本件は日本初の取り組みであり、環境省が実施する「令和3・4年度 地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」※3において優先テーマとして採択されている。サプライチェーン全体における温室効果ガスの削減とともに、家畜ふん尿に起因する臭気問題などの対策にもつながることが期待されている。

 エア・ウォーターは、環境省の実証事業の枠組みの下、2021年5月より、家畜ふん尿由来バイオガスの捕集・輸送システムの確立や、バイオガスをLBMに加工するセンター工場の建設を進めていた。今回、純度99%以上のメタンが製造可能となり、同工場からLBMを初出荷した。

 本実証事業において製造するLBMは、再生可能エネルギーであるバイオガスを由来とするカーボンニュートラルなエネルギーであり、一般的なLNGの90%程度の熱量を有する。また、酪農が盛んな地域の未利用資源である家畜ふん尿を原料とするため、持続可能な国産エネルギーでもある。

 こうしたことから、CO2排出量の削減に取り組む企業や都市ガス会社等にとって、LBMの利用は、既存LNGサプライチェーンの脱炭素化にもつながる有効な解決策であり、さらにバイオガスの有効利用が加速し、域内にメタン発酵設備の導入が進むと、家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などの環境問題対策にもつながることが期待されている。

※1 2021年5月25日 エア・ウォーター ニュースリリース参照

環境省採択「未利用バイオガスを活用した液化バイオメタン地域サプライチェーンモデル実証事業」~北海道十勝地方において持続可能な地域循環型エネルギー供給モデルの実証を開始~

※2 バイオガスとは

 主に酪農家が所有するメタン発酵設備(バイオガスプラント)において、家畜ふん尿から取り出した「バイオガス」には、メタン(CH4)約60%、二酸化炭素(CO2)約40%が含まれている。バイオガスは主に発電燃料として利用され、自家消費される。余剰の電力はFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)で売電することができるが、送電網などの制約から、十分に活用できていない。なお、メタンには、二酸化炭素の約25倍の温室効果がある。

※3 「地域共創・セクター横断型 カーボンニュートラル技術開発・実証事業」

 「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」は、今年度より「CO2排出削減対策 強化誘導型技術開発・実証事業」から事業名が変更されたもの。

サプライチェーンモデル

  1. メタン発酵設備から生成されるバイオガスを有効活用していない複数の酪農家から、家畜ふん尿由来のバイオガスを捕集し、センター工場へ輸送
  2. センター工場にて、バイオガスの主成分であるメタンガスを分離、液化窒素との熱交換により極低温のLBMに加工後、タンクローリーで近隣の工場(よつ葉乳業)へ輸送
  3. LBMを工場のエネルギーとして消費
バイオガス捕集システム
バイオガス捕集システム
LBMセンター工場
LBMセンター工場
消費先(よつ葉乳業)
消費先(よつ葉乳業)

今後のスケジュール

 今後の実証試験では、LBMの品質実証を行うと同時に、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減効果の検証を進める。なお、センター工場で1年間に製造するLBM全量(約360トン)がLNGの代替として消費されるものとすると、サプライチェーン全体でのCO2排出削減量は、年間7,740トン、温室効果ガス削減率は60%以上となる見込み。

 バイオガスの有効利用を模索する酪農家と、再生可能エネルギーを活用したい需要家のニーズを繋げることで、新しい地産地消のエネルギー供給モデルを構築し、早期の事業化を実現する。