三菱重工が小型CO2回収装置「CO2MPACT™」を日本ガイシへ納入、本格稼働開始
セラミック焼成用トンネル窯排ガスからCO2を回収。2024年12月にIHI製の設備導入で「メタネーション」
三菱重工業は、日本ガイシから2022年受注した小型CO2回収装置「CO2MPACT™(コンパクト)」を2023年9月に納入完了した。本装置は、名古屋市瑞穂区にあるセラミック焼成用トンネル窯に併設され、このほど本格的に稼働を開始した。
今回納入したCO2MPACT™は回収能力0.3トン/日のモデルで、多様な産業分野への適用拡大を目的に汎用性の高い標準設計をモジュール化したことで、輸送・設置の容易性と短納期を実現した。日本ガイシが手掛けるCO2利活用に関する実証試験を目的として受注したもので、セラミック製造分野へのCO2回収技術の適用は世界初の試みとなる。
CO2MPACT™は、1月に「2022年日経優秀製品・サービス賞」最優秀賞(注1)、7月に「第53回 機械工業デザイン賞 IDEA」日本電機工業会賞(注2)を受賞しており、そのコンセプトは国内外の顧客や団体から高い評価を受けている。今後、国内外でのプレゼンスを高め、多様な産業分野でのカーボンニュートラルを進めるステークホルダーに対するCO2MPACT™の普及を目指し、事業機会の拡大を図る。
日本ガイシでは、9月より焼成炉の排ガスの一部からCO2を回収する実証を開始、1日あたりの回収量は約0.1トンとしている。2024年12月にはIHI製の設備を導入し、回収したCO2と水素を合成して都市ガスの主成分であるメタンを生成する「メタネーション」に取り組む。焼成工程で排出されるCO2を回収して再利用するCO2循環の実証を行う。
カーボンニュートラルの手法の一つに排出したCO2を回収・利用・貯留するCCUSがあるが、実施にはコストがかかるという課題がある。またセラミックス焼成炉の排ガスは、CO2回収実証が多く行われている火力発電所などの排ガスに比べてCO2濃度が低く回収効率が悪いため、よりコストがかかる傾向にあった。
日本ガイシは実用化されている技術を用いて早期にCCUの実証を開始することで、自社の焼成炉に適した設備仕様や運転条件を確立し、未利用低温排熱を活用するなどのエネルギーマネジメントを実施して、実用可能なコストで効率的なCCUSを適用することを目指す。
日本ガイシは生産設備から排出されるグループ全体のCO2削減に向けた取り組みを推進しており、2050年のCO2排出量ネットゼロを目標とした「NGKグループ環境ビジョン」を掲げ、「CO2排出ネット・ゼロプロジェクト」などによりネットゼロ達成の前倒しを目指す。また、本実証のほか、合成燃料向けモノリス型リアクターなどのCCUS関連製品の開発にも着手している。
三菱重工グループは2040年のカーボンニュートラル達成を宣言し、エネルギー需要側・供給側の脱炭素化に戦略的に取り組む。このうちエネルギー供給側の脱炭素戦略である「エナジートランジション」における柱の1つが、多種多様なCO2排出源と貯留・利活用をつなげるCO2エコシステムの構築になる。
同社では、独自のCO2回収技術を活用したCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)事業を強力に推進するとともに、ソリューションプロバイダーとして温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献し、環境保護に寄与するソリューションの開発をさらに進めるとしている。
(注1)プレスリリース
https://www.mhi.com/jp/news/230201.html
(注2)プレスリリース
https://www.mhi.com/jp/news/230810.html
三菱重工グループのCO2回収技術について
三菱重工グループは、1990年から関西電力と共同でCO2回収技術KM CDR Process™やAdvanced KM CDR Process™の開発に取り組む。2023年11月現在、KM CDR Process™を用いたプラントを16基納入しており、さらに2基を現在建設中。
またAdvanced KM CDR Process™には、これまで納入した商用のCO2回収プラント16基全てで採用されているアミン吸収液KS-1™に技術改良を加えたKS-21™が採用されている。
KS-21™は、KS-1™と比べて再生効率に優れ劣化も少ないといった特長を持ち、優れた省エネルギー性能と運用コストの低減および低いアミンエミッションが確認されている。
三菱重工グループ「CO2回収技術」製品情報:https://www.mhi.com/jp/products/engineering/co2plants.html