ごみ処理施設の燃焼ガス中CO2をイチゴ栽培に利用する実証開始

町田市バイオエネルギーセンターからの電力と燃焼ガスを有効活用

 イオン直営農場の運営および農産物の生産委託に取り組むイオンアグリ創造株式会社と株式会社タクマは、一般廃棄物処理施設で発生する燃焼ガスに含まれるCO2を施設園芸に供給・利用する技術の実用化をめざし、町田市バイオエネルギーセンターの熱回収施設およびバイオガス化施設から出る燃焼ガスを用いて、イチゴ栽培の実証を行うことに合意した。

 実証期間は、2023年(同年11月実証開始)~2026年度を予定する。この技術の実現により、一般廃棄物処理施設で生み出される電気、熱、CO2を大規模施設園芸に利用するトリジェネレーションシステム※1の実用化を目指す。

ごみ処理施設で生じる燃焼ガス中のCO2をイチゴ栽培に利用する実証
取り組み概念図

 地方自治体の事業において一般廃棄物処理施設は主要なCO2排出源となっており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて一般廃棄物処理施設において発生する熱・電気と同様に、このCO2を価値ある資源と捉え、それらを有効活用することが望まれている。

 一方、大規模施設園芸による農作物生産は、収穫量の安定化・増大、高品質化など利点が多く、国内農業の持続性確保や食料安全保障の観点から普及促進が期待されているが、運営に用いる電力、温度制御に必要な熱、収量増大用のCO2施用などに起因して多くのエネルギー起源CO2を排出しており、またこれらのエネルギーコストが高いことが課題となっている。

 本実証では一般廃棄物処理施設で発生する電気、熱、CO2をイチゴ栽培の施設園芸資源として有効活用することで施設園芸におけるエネルギー起源CO2排出量の削減、エネルギーコストの低減化、さらに農作物へのCO2の固定により一般廃棄物由来のCO2排出の削減を図る。

 イオンアグリ創造とタクマは、本実証を通じてゼロカーボンシティの実現に資するとともに、農産物生産の新規参入・拡大による食料の安定供給や施設園芸を通じた地域循環共生圏の構築に繋げることを目指す。地域から出た廃棄物の処理に由来するCO2を施設園芸で活用し、農作物を地域住民に供給することで、環境・社会・経済の課題を同時解決し、地域資源を活用したビジネスの創出や生活の質向上を目指す。

実証概要

 タクマは、バイオマス発電所において発生する燃焼ガス中のCO2を農作物育成に直接利用するCO2供給装置(t-CarVe®)、及び「熱」「電気」も温室に供給するトリジェネレーションシステム※1を実用化し、納入実績がある。また、イオンアグリ創造は、大規模施設園芸における豊富な実績と市場におけるブランド力を有している。ゼロカーボンシティの実現に向け、市民・事業者と共に取り組むことを宣言している町田市の協力を受け、実証実験を実施する。

 本実証では、本技術を一般廃棄物処理施設から発生する燃焼ガス(「焼却施設の燃焼ガス」と「バイオガス化施設のバイオガスエンジンの燃焼ガス」)に適用して、温室にて農作物(イチゴ)の育成を評価するとともに、収穫された農作物の安全性評価を行う。(比較として液化炭酸ガス方式も実施予定)。本実証により、電気・熱・CO2のトリジェネレーションシステムを確立するとともに、町田市バイオエネルギーセンターでの取り組みを全国の地方自治体へ展開して、国内のCO2排出量の削減につなげることを目指す。

実証体制と役割

  • タクマ※2 :O2供給装置およびシステムの開発・評価、育成評価・安全性評価の実施
  • イオンアグリ創造※3 :イチゴ施設園芸のコンサルティング(生産指導等)、農作物等の安全性評価試験の設計(アドバイス等)評価
  • 町田市バイオエネルギーセンター※4 :実証フィールドおよび資源の提供

※1:トリジェネレーションシステムとは、発電において発生する電力、熱に加えて、燃焼ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)を植物の育成促進に有効活用するエネルギー供給システムで、電気・熱・CO2の3つ(トリ)を利用する仕組みを意味する。
※2:タクマは、バイオマス発電所において発生する燃焼ガス中のCO2を農作物育成に直接利用するCO2供給装置(t-CarVe®)および「熱」「電気」を温室に供給する「トリジェネレーションシステム」を実用化し、また、ごみ焼却施設などの一般廃棄物処理プラントや、バイオマス発電所などのエネルギープラントの運転管理、アフターサービスなど、エネルギーの活用と環境保全の分野を中心とする事業で多数の実績を持っている。
※3:イオンアグリ創造は、全国20か所の直営農場の運営および、約300のパートナー農場への生産委託に取り組むイオングループの機能会社で、大規模施設園芸における豊富な実績と全国各地に店舗を有するだけでなく、様々な事業を展開するイオンのグループシナジーが強み。
※4:町田市バイオエネルギーセンターは、生ごみのバイオガス化施設とごみ焼却施設を一体的に整備した、首都圏初の施設として2022年1月に稼働を開始した。