細胞膜酵素の水素駆動型CO2還元反応による高効率なギ酸生成系を構築

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所と三井化学カーボンニュートラルエネルギー研究センターが実施

 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(WPI-I2CNER)の尹基石准教授の研究グループと三井化学カーボンニュートラルエネルギー研究センター(MCI-CNRC)のMoniruzzaman Mohammad学術研究員らは、二酸化炭素(CO2)の削減方法として細胞膜酵素によるCO2の水素化反応システムを開発し、水素駆動型CO2還元反応からの高効率なギ酸生成系の構築に世界で初めて成功した。酵素触媒を用いた常温・常圧でのCO2還元反応は、カーボンニュートラルにも貢献できるとしている。

 細胞膜をカーボン担体と高分子ポリマーで固定化した高効率なCO2変換系の創成であり、今後その精製酵素系を用いたエネルギー変換システムの開発に役立つことが期待される。本成果は令和5年10月23日(金)(日本時間)にElsevierの国際学術誌「Bioresonce Technology」にオンライン掲載された。

 脱炭素社会の実現に向けた研究開発では、従来とは異なる常温常圧の低基質濃度の反応条件下でも、高活性で安定な触媒を開発することが重要になる。特に、特殊な環境で生育するバクテリアの中には、常温常圧での反応において高活性と高安定性を持つ生体触媒(酵素)があるため、これまでの貴金属や有機溶媒を用いた高温・高圧反応のコストや環境負荷がある反応系を改変できることが期待される。

 本研究では、阿蘇くじゅう国立公園内の温泉から新規に単離した細菌Citrobacter sp. S77株の細胞膜から高活性と高安定性の水素酵素とギ酸脱水素酵素を発見し、両酵素の精製と特性解析に成功した。両酵素の共通点である細胞膜局在性に着目し、カーボン担体と高分子ポリマーで細胞膜を固定化し、非貴金属酵素触媒による水素駆動型CO2還元反応を構築することにより、常温・常圧反応条件下での高効率なギ酸生成系を開発した。

 本研究開発においての特徴は、生体の電子伝達と物質変換反応において根幹になる厚さ数ナノメートル(nm)の細胞膜(plasma membrane)の特性に着目し、膜表面の親水性と膜内面の疎水性の機能を、人工的なエネルギー変換デバイスの構築に生かした点であり、固定化細胞膜を用いることで、常温・常圧条件下でこれまで開発された人工細胞膜触媒系と比べ、216倍以上の高活性でギ酸のみの生成に成功した。(図1)

(図1)細胞膜酵素による水素駆動型CO2還元反応からのギ酸生成系の模式図
(図1)細胞膜酵素による水素駆動型CO2還元反応からのギ酸生成系の模式図