JFEスチール、液体アンモニアタンク用鋼材の開発に向け試験設備を導入

高圧ガス保安法に則った建屋、試験設備を新設

 JFEスチールは、液体アンモニア中における鋼材の応力腐食割れ発生のリスク評価を可能とするための試験設備をスチール研究所(倉敷地区)に導入し、2023年10月末より稼働を開始した。

(図1)液体アンモニア応力腐食割れ試験建屋
(図1)液体アンモニア応力腐食割れ試験建屋
(図2)試験装置の概要
(図2)試験装置の概要

 脱炭素社会実現に向けた全世界的な取り組みが加速する中、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアは国内のグリーン成長戦略において火力発電燃料や船舶燃料としての利用が期待されており、そのサプライチェーン構築が急がれている。その中でアンモニアの貯蔵タンクの大型化が課題の一つとなっており、大型化のために必要な高強度鋼の開発ニーズが高まっている。

 アンモニアを貯蔵・船舶輸送する際には液化されるが、液体アンモニアは応力腐食割れ(以下、SCC※1)を発生させるリスクがある。一般的に、炭素鋼は高強度化に伴い液体アンモニア中でSCCが発生しやすくなるため、発生リスクを適切に評価する必要がある。また、液体アンモニアは毒性ならびに可燃性の液化ガスであるため、高圧ガス保安法に則った建屋(図1)および試験設備(図2)を新たに建設し、材料の耐SCC性を評価できる試験片(図3)を浸漬するだけでなく、さまざまな電気化学測定を実施可能にした。

(図3)試験により発生した応力腐食割れの事例
(図3)試験により発生した応力腐食割れの事例

 今後、試験設備の活用により、アンモニアタンク用鋼材の開発を促進するとともに試験方法・材料の標準化・規格化といった社会的ニーズにも積極的に応えていく。

(※1) Stress Corrosion Cracking:腐食環境下において、金属材料に引張応力が作用することで、材料に割れが生じる現象。