大陽日酸、高純度ヒドラジンガス供給システムを開発

反応性が高く半導体製造プロセスの低温化、膜質向上、スループット改善可能

 大陽日酸は、RASIRC※1製BRUTEHydrazine に適応した高純度ヒドラジンガス供給システムを開発した。半導体製造向けに大陽日酸が販売する高純度ヒドラジン材料のRASIRC製BRUTEHydrazine※2は、無水ヒドラジンと、安定剤となるRASIRC社独自の有機溶媒を混合することによって安全性を向上させた液体材料で、高純度ヒドラジンガスは新規半導体材料ガスとして注目されている。

図1 高純度ヒドラジン供給システム(外観)
図1 高純度ヒドラジン供給システム(外観)

 これまで、高純度ヒドラジンガスを高濃度かつ安定的に供給するガス供給システムは実現されておらず、材料ガスの安定供給が必須である半導体製造プロセスにおいては、この供給システムが必要不可欠となっていた。大陽日酸は独自のガスハンドリング技術を活用し、半導体製造プロセスに適応可能な高純度ヒドラジンガスを安全かつ安定的に供給できるガス供給システムを世界に先駆けて開発した 。 

 エレクトロニクス分野において、ヒドラジンガスは一般的な窒化源であるアンモニアと比べて反応性が高いため、半導体製造プロセスの低温化、膜質向上、スループット改善が可能となり、先端ロジック半導体の微細化やメモリの大容量化の実現に繋がる※3としている 。

 今後は半導体製造プロセス向けに顧客へ提案し、本技術を通して、BRUTE Hydrazine の拡販だけでなく、アンモニアと比べて反応性の高いヒドラジンの特性を活かし、半導体製造プロセスにおける顧客の課題解決を目指す。

高純度ヒドラジンガス供給システム概要

 高純度ヒドラジンガス供給システムの特徴は下記の通り。

  • ガス供給キャビネット内にBRUTEHydrazine 容器を設置し、窒素ヒドラジン混合ガスを安全かつ安定的に供給することができる(図 1 、図 2 )。
  • ヒドラジンガス供給を行っている間は残量を常時監視する機構が備わっている。
  • 容器交換は、自動シーケンスにより、ヒドラジンガスを暴露することなく安全・簡単に行うことが可能。
  • ガス供給キャビネット内は常時負圧に排気されているため、BRUTEHydrazineや装置内配管からガス漏洩が発生した場合であっても、排気ダクトより速やかに排気され災害を防止する構造 。
  • 危険な状況に至ると警報を発報し、自動的に動作停止する安全機構が備わっている。
図2 供給システムを用いたヒドラジンガス濃度挙動
図2 供給システムを用いたヒドラジンガス濃度挙動

【注釈】
※1. RASIRC, Inc.(CEO:Jeffrey Spiegelman, 本社:米国カリフォルニア州)は大陽日酸グループ会社で、同社の保有する高度な膜分離技術によって、微細化が進む半導体プロセス向けに新材料および蒸気発生装置を提供する。
※2. 2023年3 月28日付ニュースリリース「 無水ヒドラジン供給ソース(BRUTEHydrazineの販売開始のお知らせ 」
※3. 大陽日酸技報 No.39 (2020), 無水ヒドラジンを用いたTiNALD(原子層堆積法)プロセス