カーボンニュートラル実現に向け、水素・燃料電池展「H2&FC EXPO」開催(1)
岩谷産業、日本エア・リキード、鈴木商館、巴商会など産業ガス関連事業者が出展
「第21回 スマートエネルギーWEEK」が2024年2月28日~3月1日、東京ビッグサイトで開催され、水素・燃料電池の展示会「H2&FC EXPO」がビッグサイト西展示棟1Fで200社を超える関連事業者が参加して行われた。東展示棟で同時開催の「GX経営 WEEK」や、太陽光発電展・二次電池展・バイオマス展などを合わせた展示会全体では、出展者数1600社、来場者数7万人、出展国数30ヵ国の規模になると予想されている。
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前回の「FC EXPO」から「H2&FC EXPO」へ展示会名を変更し、燃料電池(FC)と水素(H2)の見本市となった会場には、岩谷産業、日本エア・リキード、鈴木商館、巴商会など水素サプライチェーンを担う産業ガス事業者のほか、水素ステーションや燃料電池自動車向けの機器や蓄圧容器、バルブ、センサ等の関連事業者や、水素の新しいアプリケーションを提案する帝人やブラザー工業といった多様な企業が出展した。また、千代田化工と大規模水電解システムを共同開発するトヨタ自動車や、外部から充電可能なプラグイン機能を持つ燃料電池車「CR-V e:FCEV」を発表したホンダなどが来場者からの注目を集めていたことに加えて、海外からの出展や来場者も例年に比べて目立った。
岩谷産業は、グループ会社で水素ディスペンサーを手掛けるトキコシステムソリューションズとの共同ブースで出展、2025年開催予定の大阪・関西万博で「中之島」から会場の「夢洲(ゆめしま)」までを運航予定の水素燃料電池船の模型を展示した。また、パネル展示で水素供給システムの全体像を説明したほか、サンレー冷熱と共同開発の水素と都市ガス(LPガス)混焼バーナーの提案も行った。0~100%までの水素混焼比率を段階的に切り替え可能で、低NOx燃焼、二酸化炭素削減を最適なコストバランスで実現する。
日本エア・リキードでは、2024年5月に開業予定の「エア・リキード本宮インターチェンジ水素ステーション」(福島県本宮市荒井字狐森2番8)のジオラマを展示して、日本初となる24時間365日営業の水素充填設備を披露した。同社と伊藤忠商事、伊藤忠エネクスとの協業に基づく最初の水素ステーションで、乗用車やバスに加えて小型、大型商用トラックの需要に対応するため、広大な敷地に余裕を持ったレイアウトで設備が設置されている。伊藤忠エネクスグループのエネクスフリートが所有・運営するフリートステーション(トラック等に軽油を給油する大型のサービスステーション)に水素ステーションを併設させることで、燃料電池トラックユーザーが既存のフリートステーションと同様の充実したサービスを受けられる幹線構想の役割を担うマルチフューエルステーションを実現する。水素供給能力は300N㎥/時以上で、定期メンテナンス時にも24時間365日の稼働を可能にするため、G3モジュール式の水素パッケージユニットを2基備えている。
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燃料電池フォークリフト(FCフォーク)など、産業車両への水素充填システムを提案する鈴木商館は、ブース前でFCフォーク数台での小規模運用への水素充填に最適な簡易水素充填機「ベルステーションMINI35」を展示してプレゼンテーションを実施した。東京都と愛知県、山口県の全国各地で自治体などと協力して実施されたFCフォーク実証事業や、パッケージ型簡易水素充填システム「ベルステーションMOVE」、中部国際空港セントレアでの「オンサイト型再生可能エネルギー水素充填システム」までの、運用規模に応じたトータルサポートサービスをアピールした。また、カーボンニュートラル実現へ向けて需要が高まると予想される水素吸蔵合金や吸着材料の特性を自動的に評価するPCT装置、水蒸気を含む環境や液体中の溶存水素濃度も測定可能な濃淡電池式水素濃度測定器の紹介も行った。
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東京都内での山梨県産グリーン水素利用や水素柱上パイプライン、福島県でのグリーンガラス製造による分散水素供給・利用、フジタ本社ビル水素エネルギーシステム、室蘭での再生可能エネルギーによる低炭素水素技術など、様々な水素アプリケーションの開発に取り組む巴商会は、パネル展示によるそれぞれの事例紹介のほか、次世代Type4容器による大型トレーラーやカードルの開発事業などを提案した。国内初のグリーン水素販売・供給の取り組みでは、P2G(パワートゥーガス)プロジェクト「H2‐YES」で製造されたグリーン水素「HyGI」を、巴商会が国内唯一の窓口となって都内の東京ビッグサイトにある発電設備へ供給。水素運搬時に排出されるCO2は、巴商会が取り扱うカーボンクレジットでオフセットする。また、2024年5月に開所予定の「ジャパンガス小田原滅菌センター」で、再エネ導入により年間CO2排出量を最大30%削減する取り組みを紹介した。
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