高圧ガス工業、アセチレンガス製造時の副生成物とCO2を原料にしたCCU材料の製造技術を共同開発

軽質炭酸カルシウム 10 トンの製造に成功、「コンクリート・地盤改良材」などへの社会実装を加速

 高圧ガス工業は、株式会社鴻池組、白石工業株式会社、吉澤石灰工業株式会社の 4 社で、アセチレンガス製造時の副生成物であるカーバイドスラリーと排ガス由来の CO2 を原料として、CCU(CO2回収・利用)材料である軽質炭酸カルシウム(以下、カーバイド軽カル)の製造技術を共同開発した。今後は、2027年度にカーバイド軽カルの商用生産を開始するべく、量産化に向けた技術開発を推進する。

<参考図> カーバイド軽カルを用いたカーボンリサイクルのサプライチェーン

 アセチレンガス(C2H2)は、カーバイド(CaC2)と水の反応により発生する。アセチレンガス製造時の副生成物であるカーバイドスラリーは主成分が水酸化カルシウム(Ca(OH)2)で、従来は酸洗浄廃液の中和処理などに活用されていた。他方で、生石灰製造により排出される CO2 は、排出量削減に向けた様々な取り組みが模索されてきた。

 高圧ガス工業ら4社は、カーバイドスラリーと排ガス由来の CO2 を原料として、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO2回収・利用)材料である軽質炭酸カルシウム(CaCO3:カーバイド軽カル)の製造技術を共同開発。ラボスケールから検討をスタートし、2023年初頭よりスケールアップの検討を進め、2023年10月に実機設備においてカーバイド軽カル 10 トンの製造に成功した。

 このカーバイド軽カル製造技術は CO2を資源と捉え、炭酸カルシウムとして鉱物化し、CO2を固定するカーボンリサイクル技術の一つとなる。カーボンリサイクル技術は、日本政府が制定した「カーボンリサイクルロードマ ップ」において、一層の普及促進が掲げられている。また、早期の社会実装に向けて、政府主導の様々な支援プログラムが進められている。

 カーバイド軽カルを 1 トン製造したときの CO2の固定化量は約440kg(500ml ペットボトル約44万本分)になる。このカーバイド軽カルをCCU 材料として使用した「コンクリート・地盤改良材」など様々な建設分野の材料に適用すべく用途開発にも積極的に取り組む。

カーバイド軽カルの特徴

  • 100 年以上にわたり蓄積されてきた白石工業の軽質炭酸カルシウム合成技術により、各用途の要求に合わせて粒子制御され、コンクリートの強度向上などが可能。
  • カーバイド軽カル 1 トン製造に伴い生じる副産物は 50kg 以下(5%以下)であり極めて少ないことが特長。生コンスラッジ・廃コンクリート・鉄鋼スラグなどをカルシウム源として炭酸カルシウムを製造するプロセスと比較しても副産物の発生量が極めて少ないプロセスとなる。
  • カーバイド軽カルの原料となるカーバイドスラリーは主成分が水酸化カルシウムであり、CO2との反応性が高く、導入する排ガス中 CO2の 70%以上を吸収することが可能。
  • カーバイド軽カルの主な用途は、①コンクリート(プレキャスト・現場打ち)、②地盤改良材(流動材・スラリー・粉体)、③可塑性充填材、④シーリング材、⑤外壁材、⑥各種フィラー(充填材・増量材)。