物質・材料研究機構、低温・高圧水素環境下での材料特性評価設備を完成
試験温度・圧力域を大幅に拡大、20K~200Kかつ常圧~10MPaまで
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は、低温の水素環境下における材料の機械的特性を評価する試験設備を設置し、本格的な稼働に向けて運転を開始した。従来に比べて低温の水素環境下での材料試験領域を、世界初の温度・圧力領域に拡大した。本設備を用いて、液化水素を含む低温水素ガス環境下での材料特性を明らかすることで、水素サプライチェーンの構築において安価な材料の利用が可能となり、機器の設備コストや運転コスト、水素供給コストの低減が期待される。
水素社会の実現に向けては、水素の供給コストの低減が求められているが、液化水素温度(20K)や水素ガス環境といった過酷な条件で使用できる材料が現状では限られているため、各種設備の大幅なコスト削減には限界がある。今回完成した設備は、幅広い材料において、液化水素を含む低温水素環境下(温度:20K~200K、圧力:常圧~10MPa)での機械的特性や水素適性などの材料特性について、正確かつ信頼性の高いデータを取得することできる。これにより、水素環境下で使用できる材料の幅が広がり、安全性を確保しつつ各構成機器のコストを下げることが期待される。
NIMSでは2025年度末までに、正確で信頼できる材料特性データを安定的かつ継続的に提供できることを検証し、2026年度からは、水素サプライチェーンに使用される材料の機械的特性データを本格的に取得して提供する予定。
この設備を用いた試験は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「グリーンイノベーション基金事業」の「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」において、「液化水素関連機器の研究開発を支える材料評価基盤の整備」として実施される。