新コスモス電機がレーザーによるリチウムイオン電池火災検知技術を開発

異常発火で少量発生する一酸化炭素を検知

 新コスモス電機は、社会問題となっているリチウムイオン電池火災をレーザーを使って検知する技術を開発した。一酸化炭素に吸収される波長の赤外線レーザーをリチウムイオン電池の周囲の空間に照射し、リチウムイオン電池の異常発火に伴い少量発生する一酸化炭素を検知するもので、レーザー光の光路上に存在する分散した一酸化炭素を瞬時に検知することができる。個々のリチウムイオン電池ごとにガスセンサを設置する必要がなく、大量のリチウム電池を小規模なレーザーガス検知設備によって効率的に監視ができる。

リチウムイオン電池火災実験の様子

 今回、同社の火災実験室「プラシオラボ」において、実際にリチウムイオン電池を加熱・発火させ、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社らが開発したレーザー式一酸化炭素検知器を用いて(図1)、発生した一酸化炭素を検知(図2)することに成功した。

図1 実験の構成図
図2 実験結果の一例

 大きな電気容量を持つリチウムイオン電池は、スマートフォンから電気自動車まで広く使用されているが、誤った使用方法や保管状況、あるいは製造時の品質等に起因して異常発火し、火災に至る事故が頻発して社会問題となっている。特に電気自動車の輸送やデータセンター等におけるバックアップ電源など、大量のリチウムイオン電池が集積されるような状況においては、一度火災が発生すると甚大な被害をもたらすことが懸念され、リチウムイオン電池を常時監視し、万が一の火災発生時に迅速に対応することが求められる。

 リチウムイオン電池が発火した際に発生する種々のガスをガスセンサによって検知するシステムは、すでに提案されているが、ガスセンサの付近しかガスを検知できないため、多数のガスセンサを設置する必要があり、また風向きによっては検知が遅れる可能性も否定できない。さらに輸送の際には、電気自動車などのリチウムイオン電池搭載機器の設置位置が必ずしも同一ではないため、ガスセンサの設置位置を移動させる必要も生じる。

実験動画(YouTube)

 新コスモス電機は今後、開発パートナーと連携して本技術の実用化を目指していく予定。また、一酸化炭素を検知した際の警報発生条件やシステム全体の仕様については、ユーザビリティと安全性の両立を最優先に、慎重かつ入念な検討を進める。