JFEと鈴木商館、東京大学が水素液化温度(-253℃)で大型広幅引張試験に世界で初めて成功
液化水素貯槽向け材料の極低温破壊安全性評価技術の確立
JFEスチールとJFEテクノリサーチ、鈴木商館、および国立大学法人東京大学工学系研究科 川畑研究室(以下、東京大学)は、水素液化温度(-253℃)での大型広幅引張試験に世界で初めて成功し、平底円筒形の大型液化水素貯槽に使用される候補材料(SUS316L)の安全性を実証した。
水素社会の実現においては、水素発電の導入に加えてその需要に対応するための安定的な水素供給システムの確立が必要であり、液化水素の受け入れ基地の整備も進められている。その中で、液体として水素を大量に貯蔵可能な平底円筒形の大型貯槽の実現に向けた検討が行われている。
現在でも、低温の液化天然ガス(LNG)を貯蔵する大型貯槽には破壊に対する安全性が求められるとともに、使用可能な材料が規定されており、LNG液化温度(-162℃)より低い温度で運用される液化水素貯槽にも、同等以上の安全性が求められる。安全性の実証には実物大試験による耐破壊特性評価※1がおこなわれるため、大型液化水素貯槽の実現には、水素液化温度での大型試験技術を確立し、水素液化温度で使用される材料の耐破壊特性を十分に評価・検討することが必要になる。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」において、東京大学が「大型液化水素貯槽実現に向けた極低温・水素環境下材料信頼性評価確立および社会受容のための実大試験」※2を受託。この中の重要項目である大型広幅引張破壊試験について、これまでLNG液化温度での大型破壊試験の実績はある一方で、水素液化温度での安全性の評価は世界においても実例がなかった。
これに対し、JFEスチールがスチール研究所(千葉地区)の「JWI-CIF2」※3にて保有する、世界最大級の載荷能力を有する8,000ton大型引張試験機を活用し、大型引張試験機内の評価材料を水素液化温度以下に冷却・保持して破壊試験を実施できるシステムを、JFEスチール、JFEテクノリサーチ、鈴木商館、東京大学が共同で開発。この評価法の実現により、液化水素貯槽への適用候補材料(SUS316L)が水素液化温度においても急激に破壊が進行する不安定破壊が生じないことが実物大のサイズで確認した。
注)※1:使用温度や地震荷重などの鋼材が使用される環境を想定し、材料の強度、破壊靭性を調査すると共に構造物が安全に長期間使用できるかを確認・実証する評価方法。
※2:NEDOが公募している競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業のうち、大規模水素サプライチェーンの構築に係る技術開発、大型液化水素貯槽実現に向けた極低温・水素環境下材料信頼性評価確立および社会受容のための実大試験を指す。
※3:JFEスチール株式会社が鉄鋼材料の破壊・疲労に関する研究開発活動と、同分野の新たなイノベーションの創出を目的として、『大型破壊・疲労評価センター(JWI-CIF2)』をスチール研究所の千葉地区(千葉市)に開設。『JWI-CIF2』は、8,000ton引張試験機等の大型破壊、疲労試験機等の実験設備を多数備え、鉄鋼分野において国内では圧倒的な規模を誇る、世界最大級の施設。(関連URL)https://www.jfe-steel.co.jp/release/2019/02/190220.html
鈴木商館の概要
・会社名 | 株式会社鈴木商館 |
・本社所在地 | 東京都板橋区舟渡1丁目12番11号 ヘリオスⅡ |
・代表者 | 代表取締役社長 鈴木慶彦 |
・事業内容 | ○産業用・医療用高圧ガス、液化石油ガスの製造、販売および関連機械器具 ○高圧ガス供給システムの設計、施工、検査 ○溶接材料、各種産業用機械器具の販売 ○各種樹脂、化学品、電子材料の販売 ○冷媒ガスおよび空調関連機械器具の販売 ○極低温機器の設計、製造、販売およびメンテナンス ○産業用車両水素充填設備および高圧ガス関連機器の設計・施工・現地工事 |
・創業 | 明治38年(1905年)3月15日 |