大陽日酸がカレット熔解炉向け水素混焼酸素富化バーナを開発
温室効果ガスを従来方式に比べて最大62%削減
大陽日酸は、株式会社オハラ(齋藤 弘和 代表取締役社長 執行役員)と温室効果ガス(GHG)排出削減を目的とした新型カレット※1熔解炉に使用する水素混焼酸素富化バーナを共同で開発した。今回の開発により、GHG 排出量は従来の空気バーナに比べて、最大 62%削減が可能になる。
※1:カレットとは細かく砕いた破片状のガラスのこと。
開発した水素混焼酸素富化バーナは、カレット熔解炉の燃焼に用いられ、酸素濃度および天然ガスと水素の混合比率を適宜切り替えることが可能。模擬カレット熔解炉試験では、酸素濃度を 25%、30%、40%の3条件および水素混焼率を 10%、20%、30%の 3 条件で実施し、いずれの方法でも、空気バーナに比べて、最大 62%から 29%の GHG 排出削減を達成した(詳細は図1参照)。また、従来の空気バーナと同等の加熱性能(昇温性、均熱性)を持ち、排気ガスの中に含まれる NOx 濃度は排出基準値を下回る結果となった。
大陽日酸では、カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、グループの環境貢献製商品による顧客の GHG 削減に取り組んでおり、酸素(富化)燃焼技術による工業炉プロセスの CO2削減提案を行っている。酸素(富化)燃焼は空気燃焼と比較してエネルギー効率が高く、燃料を従来方式に比べて大幅に削減でき、重油や天然ガスなどの化石燃料使用時の CO2削減が可能になる。
日本国内で排出される年間約 11.2 億トンの CO2のうち、35%は産業分野によるもので、多くの工業炉から排出されている(2019 年度)。2050 年の CN 実現には、国内に約 3.7 万基存在するとされる工業炉の GHG 排出削減策を講じる必要があり、酸素燃焼技術は、その有効な手段の一つとされる。
大陽日酸では、カーボンフリー燃料である水素やアンモニアを用いた燃焼技術の開発を行っており、工業炉分野での GHG 排出削減に向け、様々な選択肢を顧客へ提案できるよう努めている。
※2:オハラの光学ガラスは、品質および生産効率向上を目的に 2 段階熔解を行う。1 段階目の熔解工程で得られるガラスは製品としては用いず、細かく砕いた破片状のガラスである「カレット」にする。その後、異なる屈折率をもつ 2 種類のカレットを調合し、2 段階目の熔解を行う。この工程を経ることで、2 段階目の熔解でガラスの組成変動が起こりにくくなり、目的の屈折率を有するガラスを正確に製造できる利点がある。