大陽日酸、過酸化水素供給ソース「BRUTE Peroxide」を日本で販売開始 

低水分濃度の過酸化水素が供給可能、ステンレス製容器充填で研究開発用途や少量生産工程に適する

 大陽日酸とグループ会社のRASIRC,Inc.※1(本社:米国カリフォルニア州、CEO:Jeffrey Spiegelman)は、2013 年から半導体産業向けに販売している高濃度過酸化水素ガス供給装置「Peroxidizer」に比べて、より扱い易い過酸化水素供給ソース「BRUTE Peroxide」の販売を日本で開始した。

※1 RASIRC, Inc.は大陽日酸グループ会社。同社の保有する高度な膜分離技術によって、微細化が進む半導体製造プロセス向けに新材料および蒸気発生装置を提供

BRUTEⓇ Peroxide の容器外観
BRUTE Peroxide の容器外観

 半導体製造プロセスにおける酸化膜の形成には、水(H2O)や酸素ガス(O2)、オゾンガス(O3)が広く使用されているが、近年はより低温での成膜や膜質改善の効果が見込める材料ガスとして過酸化水素(H2O2)が注目されている。現在、大陽日酸およびRASIRC社では量産工程向けに大流量、高濃度で過酸化水素を供給可能なPeroxidizerを販売中だが、「過酸化水素とともに同搬される水分量を最小化したい」、という要望があったため、RASIRC社はステンレス製容器に充填されて扱い易く、水分量を抑えた新しい過酸化水素供給ソースとして、「BRUTE Peroxide」を開発したもの。米国で先行販売を続けており、今回、日本国内でも販売を開始する。

 BRUTE Peroxideは、ロジックや DRAM等の先端半導体分野をメインターゲットとして研究開発用途または少量生産工程の要求に対して拡販を計画する。その上でPeroxidizerと合わせ過酸化水素の適用範囲を広げ、最近問い合わせが増えている光学デバイスやバイオメディカル関連分野への展開も進める。

BRUTE Peroxideの製品概要

 BRUTE Peroxideは高濃度の過酸化水素をRASIRC社独自開発の固体吸着材へ含侵させることによって、供給濃度の安定性や安全性を向上させた過酸化水素供給ソースで、製品の特長は以下の3点。

  1. 半導体製造用に市販されている過酸化水素水溶液を用いたバブリング供給では、わずか数十ppmほどの供給濃度しか得られないが、BRUTE Peroxideはその100倍以上の高濃度で過酸化水素の供給が可能。
  2. BRUTE Peroxideは、ステンレス製容器に充填されており、成膜装置への接続が容易なため取り扱いやすく、研究開発用途や少量生産工程に適する。
  3. 従来のPeroxidizerと比べ低水分濃度の過酸化水素を成膜装置へ供給可能。

 過酸化水素は一般的な酸化源である水と比較して特に低温での酸化力が強く、オゾンガスに比べ成膜時の下地層への影響が少ない、という特性が確認されている。成膜プロセスの低温化だけでなく、表面クリーニングや膜改質等に有望な酸化剤として期待されている。

BRUTE Peroxideの製品仕様

項目 仕様備考 
容器直径 101.6mm
高さ 296.9mm
内面特殊コーティング仕様  
充填量 235g 過酸化水素と固体吸着剤の重量比 1:1  
供給濃度
※2
H2O2:2,248ppm
H2O:1,128ppm
(濃度比 H2O2:H2O=2:1)
容器温度 25℃, 容器圧力 760torr, キャリアガス流量 1000sccm における実験値 
(参考:Peroxidizer 濃度比 H2O2:H2O=1:4)

※2 実際の供給濃度はキャリアガス流量や容器温度、容器圧力、配管長などに影響される。

【参考:研究論文データ】

Robust low-temperature (350℃) ferroelectric Hf0.5Zr0.5O2 fabricated using anhydrous H2O2 as the ALD oxidant | Applied Physics Letters | AIP Publishing