岩谷産業と三菱ふそうトラック・バス、サブクール液化水素(sLH2)充填技術の共同研究開発で基本合意

液化水素をポンプで加圧して充填、タンク内のボイルオフガス(蒸発した水素ガス)を再液化し急速充填

 三菱ふそうトラック・バス(MFTBC)は、岩谷産業と液化水素を利用した水素燃料商用車向けの水素充填技術の研究開発に関する基本合意書を締結した。両社は、新たな液化水素の充填方法であるサブクール液化水素(subcooled liquid hydrogen: sLH2)充填技術に関する研究開発を共同で行う。

 協業する内容は、液化水素充填に関する技術開発及び技術提携、液化水素に関する規制および認証に関する調査、充填インフラに関するビジネス関連事項の調査、充填インフラや水素燃料車両の普及に関するマーケティング活動。

 sLH2充填は圧縮水素ガスと比較して、水素燃料のより高い貯蔵密度、より長い航続距離、充填時間の短縮化、より低い運用コスト、より高いエネルギー効率といった面で優位性を持つ。岩谷産業と MFTBC は、sLH2充填に関する技術、規制及び商用化に関する共同研究を行い、sLH2充填技術の日本での確立に向けて取り組みを進める。

 sLH2 充填は、液化水素をポンプで加圧しながら車両に搭載された液化水素タンクに充填することで、液化水素タンク内のボイルオフガス(蒸発した水素ガス)が再液化され、ボイルオフガスを排出する必要がなく、急速に充填を行う液化水素の新しい充填技術。sLH2 充填技術の利用により、水素ステーションで圧縮水素ガスを利用する工程で通常必要となる設備の多くを省略できるため、水素ステーションの投資コストを削減できる。また、水素を利用する際に加圧する圧力がとても低いため、水素の圧縮工程で消費されるエネルギーも大幅に削減できるメリットがあり、水素ステーションの運用コストも削減できるとしている。

 sLH2 充填技術は、ダイムラートラックとドイツのリンデ・エンジニアリング(Linde Engineering)によって共同開発され、この技術は ISO 規格化に向けて、関係者間で議論されている。

 MFTBC の親会社であるダイムラートラックは、特により厳しい条件下での重量物輸送や長距離輸送において、水素駆動の車両はバッテリー駆動 EV と比べてより優れたソリューションになり得るとの見解を提示している。ダイムラートラックでは、水素駆動の車両開発では液化水素が適していると見ており、液化水素を使用するメルセデスベンツ・ブランドの大型燃料電池トラックのプロトタイプ「GenH2 Truck」を開発し、顧客先での実証も 2024 年より開始した。

 さらに、ボルボグループとの合弁会社セルセントリック(cellcentric)を通じて大型トラック向けの燃料電池システムの開発・生産を進めている。sLH2 充填技術は、「GenH2 Truck」の実証で導入されている。「sLH2」充填技術を使用して水素充填を行う場合、水素ステーションで圧縮水素ガスを利用する工程で通常必要となる設備の多くを省略できるため、水素ステーションの設備コストや、必要なスペース、水素の圧縮工程で消費されるエネルギーを大幅に削減できるメリットがある。

 三菱ふそうトラック・バス株式会社(MFTBC)は、川崎市に本社を置く商用車メーカー。ダイムラートラック社が89.29%、三菱グループ各社が10.71%の株式を保有する。90年以上の歴史を持つFUSO ブランドのトラックやバス、産業用エンジンを世界約170の市場向けに開発・製造・販売。日本初の量産型電気小型トラック「eCanter」による電動化や、運転自動化では大型トラック「スーパーグレート」に国内商用車初の SAE レベル2相当の高度運転支援技術を実装するなど、先進技術の開発に積極的に取り組む。