「再生医療EXPO 東京」で大陽日酸、岩谷産業、巴商会がバイオ関連技術やコールドチェーンの提案
液体窒素やドライアイスによる生体試料の凍結・保管・輸送、タンパク質合成や細胞培養のサービスを紹介
医薬品・化粧品・再生医療の研究・製造に関する製品やサービスの展示会「インターフェックス Week 東京」が、2025年7月9日~11日に東京ビッグサイトで開催され、再生医療のための細胞培養や輸送・保管・滅菌、研究機器を紹介する「再生医療EXPO 東京」に大陽日酸と岩谷産業、巴商会が出展、再生医療におけるバイオ関連ソリューションや液体窒素・ドライアイスによるコールドチェーンの提案を行った。



GMP対応シングルユースバイオリアクターによる細胞培養(大陽日酸)
大陽日酸は再生医療向けガスアプリケーションに加えて、タンパク質合成キット「無細胞くん」を扱うSI事業と液体窒素凍結保存のバイオ・メディカル事業が、製薬・医療・創薬・食品・再生医療分野でのサービスを紹介したほか、新規事業開発を行うイノベーションユニットから国内初公開となるGMP対応シングルユースバイオリアクター(培養装置)の実機を持ち込んで、細胞や微生物の培養・保存・分析・合成までのガス技術とバイオソリューションをプレゼンテーションした。
bionet社製の最新シングルユース培養装置「Celltainer CT-2」は、特許取得済みの2D揺動運動を採用したGMP対応可能なバイオリアクターで、1つのバッグで0.15L~15Lの作業容量をカバーし、最大100倍の拡張性を実現している。「ゆりかご型」のリアクターは、iPS細胞などのデリケートな細胞を損傷を抑えつつ効率的に培養できるのが特徴で、小規模から大規模培養へのスケールアップに対応し、培養工程で必要となる酸素、炭酸ガス、水素、窒素といった各種産業ガスの供給にも繋がるソリューションとして提案する。
bionet社はスペイン発の研究用途から産業スケールまで対応するバイオリアクターの専門メーカーで、小型機から工業規模のステンレスバイオリアクターや特注対応など、多様なスケールと優れた制御性能を持つ。「Celltainer CT-2」は、独自カップ構造で底部にpH・DOセンサーを配置し、少量の培地でもセンサーが常に接触し、高い測定精度と安定したプロセス制御が可能。また、優れた酸素移動性能(kLa)を実現し、哺乳動物細胞や微生物の培養に幅広く対応する。
SI事業では、日本最大の安定同位体(SI)メーカーとして展開する酸素安定同位体の「Water-18O」と「Water-17O」、理化学研究所の無細胞タンパク質合成技術をキット化した「無細胞くん」、2025年4月から販売を開始した研究用タンパク質試薬の「細胞成長因子」と「サイトカイン」、海外から輸入する同位体の重水素(D)、13C、15N、希ガス安定同位体、金属安定同位体、安定同位体比質量分析計などの製品を紹介した。
バイオ・メディカル事業からは、病院・在宅医療・研究分野で利用される医療用ガスのほか、国内メーカー製の「液体窒素凍結保存容器」とそのアフターサービスや、在宅医療・呼吸療法向け機器の提案を行った。小型の液体窒素凍結保存容器のGシリーズは、国内製として唯一の気相保存タイプで液相によるクロスコンタミネーションリスクを低減し、安全な保存を実現する。この他、-180℃以下の超低温下で長期の安定保存が可能なアンプル・バイアル保存向けの小型容器のDRシリーズや、液相・気相に対応する大型のDRシリーズによる液体窒素自動供給システム(レベルマスター)による液体窒素液面管理、容器内温度の連続監視を紹介した。
自社開発の凍結保存容器と統合型コールドチェーンサービス(岩谷産業)
岩谷産業は「BIO×GAS」をテーマに、細胞の凍結・保管・輸送における包括的なコールドチェーンソリューションを提案した。注目されたのは日本国内のマーケットニーズに合わせた自社開発製品となる「細胞凍結保存容器」で、従来の海外製品に比べて日本の屋内事情に合わせたコンパクトなフットプリントでありながら、2㏄バイアルを10,000本相当を収納できる十分な容量を確保し、2025年度中の出荷を目指す。デザインにもこだわり、一般消費者の目に触れる可能性のある再生医療の現場にも適したスタイリッシュな外観が特徴。また2㏄バイアルを200本相当収納し、片手で運ぶことができる「小型細胞輸送容器」もコンセプトモデルとして提案した。
細胞培養後の凍結から輸送、保管、解凍までのコールドチェーンの構築として、2024年から開始した「ドライシッパー冷却・レンタルサービス」の液体窒素温度で細胞を保管・輸送するためのシステムも展示した。液体窒素を充填して冷却済みのドライシッパーを顧客に届けるサービスで、顧客側での液体窒素充填が不要となり、液体窒素の手配や凍傷・酸欠のリスクが無く、約1日かかる冷却準備時間を不要にする。専用の輸送ケースとオプションの温度ロガーも用意し、IC Biomedical社製のドライシッパー(CXR-100、CXR-500)で2mmバイアル102本と500本の輸送が岩谷産業の提携物流会社で可能になる。



輸送中の凍結物の温度・位置情報をリアルタイムで監視する温度ロガー「e-WAVES」はGDP HACCPの監視をサポートし、温度、湿度、照度、衝撃、気圧、位置の6項目を1台でセンシングする。最短1分間隔でクラウドに送信・記録できるため、リアルタイム監視による厳密な品質管理が可能。
岩谷産業は、兵庫県尼崎市の中央研究所を拠点に細胞凍結・保管技術の研究開発に積極的に取り組んでおり、大学との共同研究やバイオ3Dプリンタを手掛けるサイフューズ社との資本提携を通じた協業も推進する。また、LPガス非常用発電機などのエネルギーインフラソリューションも提供し、再生医療分野における停電対策の重要性も訴求した。
液体窒素の補充が不要な回生式凍結保存容器「MVE Fusion 1500TM」(巴商会)
巴商会は液体窒素を回生することで、液体窒素を補充することなく100V電源のみで-150℃以下の温度帯を維持する米国 MVE Biological Solutions社製の超低温試料保存容器「MVE Fusion 1500TM」や、中国 Haier Biomedical(ハイアール・バイオメディカル)社製の液体窒素凍結保存容器「CryoBio 13」と可搬式超低温作業台「YDC-3000H」を実機展示した。また、ドライシッパー容器のレンタルから液体窒素の充填冷却作業、出荷前検査、データロガーによる温度管理、容器の集荷・輸送・返送までをトータルでサービスする「極低温輸送サービス」の紹介も行った。



「MVE Fusion 1500TM」は容器の中にクライオクーラーを内蔵しており、気化した窒素を再度冷却することで回生(再液化)し、液体窒素を消費することなく、試料保管室を-150℃以下の温度帯に維持することができる。100V電源のみで利用できる画期的な凍結保存容器として、電源喪失時でも約7日間-150℃以下を維持する。1.2mlと2mlバイアルを最大31,200本まで収納可能。液体窒素の充填は初回のみで液体窒素を消費しないため、補充の充填作業や自動充填用の真空配管等が不要となり、低ランニング・省スペースなことが特長になる。試料保管室と液体窒素の充填部は別空間となっており、完全気相の環境を実現することで、コンタミネーションの混入リスクを低減した。オプションとして純正のステンレス製ラックの他、軽量なアルミ製のカスタムメイドラックのオーダーにも対応し、ブースではラック取出し補助用のミニクレーンによるデモも行った。



Haier Biomedicalの「YDC-3000H」は、液体窒素を充填することで超低温下で試料を安全に移動、保管が可能な可搬式超低温作業台で、LCDタッチスクリーンやUSBによるデータの取出し、リアルタイムのモニタリングの機能を備える。自在キャスター付のため移動が容易で、断熱カバーはマグネット付で台車の側面に取り付けが可能。液体窒素の液面レベル100mm、断熱カバーを閉めた状態で-140℃以下を24時間以上維持できるとしている。
また、冷却済ドライシッパーのレンタルによる「極低温輸送サービス」や、「生体試料保管サービス」の紹介も行った。「極低温輸送サービス」は、液体窒素であらかじめ冷却されたドライシッパーを発送元へ容器レンタルすることで、出荷前検査、集荷・輸送・返送までの全てが含まれる-150℃以下の気相での安全な輸送のトータルサービスを提供するもので、温度ロガーや衝撃ロガーによる輸送中の環境変化モニタリングもオプションで対応する。巴商会と(株)SRIの提携による保管温度-150℃以下と-80℃帯に対応した「生体試料保管サービス」は、巴商会の神戸ガスターミナルの保管施設を活用し、ライフサイエンス分野の生体試料から化合物までの研究素材を一元管理し、全国の研究機関へサービスを提供している。