「陸上養殖設備展2025」でアクアポニックスのCO₂施用や陸上養殖向け酸素供給の提案
大阪ガスリキッド、巴商会、大陽日酸、コフロックなどが出展
陸上養殖設備と資機材に特化した専門展示会「陸上養殖設備展2025」が、2025年10月15日~17日に東京ビッグサイトで開催され3日間で4,206名が来場、次世代漁業の切り札として新規参入企業が相次ぐ陸上養殖事業者に向けて製品PRを行った。
産業ガス関連業界からは、大陽日酸が三菱ケミカル、ジャパンマリンポニックス(JMP)と共同出展したほか、陸上養殖のトータルサポートを提案する巴商会、2024年に陸上養殖向け酸素曝気装置 「OXSERVE(オキサーブ)」の販売を開始した大阪ガスリキッド、ガス発生装置のコフロックなどが参加し、酸素ガス発生装置やマイクロナノバブル発生装置、酸素溶解装置、養殖用水槽による飼育密度の改善や養殖魚の成長促進などの生産性向上への貢献をアピールした。



日本エア・リキードと「海水アクアポニックス」の商業化で共同研究を行うアクポニは、陸上養殖の設備としてオーストラリアの上場企業「Waterco社」の循環フィルターを実機展示した。アクアポニックスでは、魚の養殖水をろ過して排出物を微生物で分解し、植物の養分へ変換、この栄養吸収による浄化された水を再び魚の水槽へ循環させて再利用する。アクポニではアクアポニックスによる野菜栽培向けに、直接空気回収によるCO2供給を行うスウェーデンDirect Carbon社製のDAC(Direct Air Capture)ユニットの販売を開始しており、「空気から肥料をつくる新技術」としてコスト削減とカーボンニュートラルへの対応を提案した。




魚種・養殖環境の選定から、設備の設計・施工、魚の飼育指導や輸送・販売までをトータルでサポートする巴商会は、LGCによる酸素ガス供給装置や国内総販売元になる中国・山東明波海洋設備有限公司の酸素溶解装置「酸素コーン」MBシリーズ、東芝ライテックのUV水殺菌システム「ULTRAQUA」非腐食性PP/PEHDシリーズ、FRP円形水槽、コンパクト型機械式ろ過フィルターなどを展示した。
巴商会は、2013年から水産養殖用の酸素溶解装置や酸素ガスの販売を開始、車えびの高効率養殖試験を経て、クエの品種改良種養殖、ウニ陸上畜養、バナメイエビ陸上養殖、ノコギリガザミ陸上養殖など、様々な魚種の陸上養殖試験を実施している。2019年からはサーモンやバナメイエビの養殖場設備工事を受注するなど、自社の水産養殖試験場(YAC)や、協力関係にある大阪の(株)陸水の生産設備兼モデルルームなどを活用しながら、陸上養殖の立ち上げから設計・施工、酸素設備工事、養殖魚の生産・販売までをトータルでサポートする。




大阪ガスリキッドは、マイクロバブル発生ノズルを使用した陸上養殖向け酸素曝気装置「OXSERVE(オキサーブ)」に、PSAやCE、LGCなど酸素の供給源が既にある設備向けの新ラインナップ「OXSERVE-X」を出品して、より大型の水槽への対応や酸素濃度制御によるランニングコスト削減の提案を行った。
大阪ガスリキッドは2024年から酸素PSAを内蔵した供給装置と溶存酸素計(DO計)、循環ポンプ、マイクロバブル発生ノズル一式で構成される「OXSERVE」のパッケージシステムの販売を開始した。設定した希望の溶存酸素濃度値を維持することができ、魚種に合わせた最適溶存酸素濃度に制御ができる点が特徴で、酸素発生装置により酸素供給を行うため、ボンベによる酸素供給に比べてランニングコストの削減も可能になる。
溶存酸素濃度や酸素流量、水温のトレンドグラフをパソコンやダブレット、スマートフォンで確認し、水槽の状況を遠隔から監視できる通信機能もオプションで用意。溶存酸素濃度の異常をメールで送信する機能もあり、現場から離れた場所でも不具合を早期に発見することができる。
「OXSERVE-X」は「OXSERVE」から酸素PSAを除いたシステムで構成され、すでに酸素供給システムが存在する陸上養殖設備に後付けできる酸素曝気装置とすることで、より大型の水槽への対応が可能で導入コストの削減も期待できる。



大陽日酸はグループ会社の三菱ケミカルや閉鎖型陸上養殖設備の開発を行うJMPと共同ブースで出展し、高効率酸素溶解装置による生産向上や養殖設備・関連機器、脱窒材、乳酸菌混合飼料の紹介を行った。
大陽日酸の高効率酸素溶解装置DO(溶存酸素)コントロールシステム「RSシリーズ」は、特殊ノズルで飽和の5倍以上の高濃度酸素水を作り、養殖池に供給する。水位センサーによる脱気機能付きで、製造した高濃度酸素水は複数の池や水槽に分配することが可能。
三菱ケミカルは完全閉鎖循環式の養殖を可能にする脱窒材「Forzeas DNA631」や、乳酸菌混合飼料・A飼料「飼料用ラクリス‐10」を出品した。JMPは飼育水槽中の1㎛以上の残餌や魚の糞などを効率よく濃縮し排出する逆洗式フィルターユニット「JMP-BW」シリーズを紹介した。
マスフローコントローラーや流量計、各種ガス発生装置を製造するコフロックは、陸上養殖向けに生簀内の溶存酸素濃度の維持に使用される屋外型の酸素ガス発生装置「GENE-BASE Series」の実機を展示した。国内水産養殖向けの導入実績は300件を超えており、ボンベや液体酸素による酸素ガス購入と、電力で空気から酸素ガスを発生させるPSA方式の「GENE-BASE Series」とのコスト比較によるガス代削減を提案した。また、エムテック製のマイクロバブルジェネレーターやマイクロバブルノズルの紹介も行った。
「GENE-BASE Series」はガス発生装置のコフロックと、コンプレッサの北越工業の共同開発。屋内外の設置に対応し、屋外では45℃の高温環境下でも連続運転が可能、防水性能はIPX3相当でトップカバーやドアの特殊シールや密閉型ロック構造など、雨水の侵入を最小限にする屋外専用ボンネットを採用している。装置内にコンプレッサを内蔵しているため、コンプレッサ室などの建造物が不要で設置コストの大幅な削減が見込める。建物の屋上や階段下への設置など、空きスペースの有効利用によって様々な陸上養殖設備への導入が容易としている。



