「SEMICON Japan 2025」が開幕、AI成長拡大で世界半導体売上高は2029年に1兆ドル超え
人工知能関連の半導体は年平均16%の高い成長率が継続
半導体製造の装置・材料の国際的な業界団体であるSEMI(本部:米国カリフォルニア州ミルピタス)は、2025年12月17日(水)から19日(金)までの3日間、東京ビッグサイトで世界を代表するマイクロエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2025」を開催した。テーマは「AI x サステナビリティ x 半導体」で、35カ国から1216(昨年実績は1107)者が参加するブース展示、量子コンピュータやGaN(窒化ガリウム)半導体など、様々なテーマと国内外の地域に特化したパビリオン、総勢300名を超える業界キーパーソン/専門家によるセミナーなど、前回展からさらに多様性を増加。展示規模も2900(同2789)小間へ拡大し、延べ来場者数は12万(同10万3165)人を見込む。



国内でも先端半導体製造工場が進出した北海道や九州など、地域が一体となって半導体産業による産業振興が各地で活発化しており、今年は7地域のパビリオンが新設され、海外からの出展を含めた計19パビリオンが開設された。高松帝酸は中四国パピリオンで「SEMICON Japan」へ初出展し、ゴム材料の非粘着化、滑り性向上、固着防止やフロロバリアー技術、樹脂微細流路親水化を実現する「フッ素ガス表面処理」を半導体製造業界向けに提案した。同社は「フッ素ガス表面処理」の研究・開発から処理受託・装置販売の全てを実施する国内唯一の独自技術を保有している。
半導体製造装置のASMLやフィリップスで知られるオランダのパビリオンには、エア・ウォーターグループでディーゼル発電型無停電電源装置(UPS)の設計・開発などを行うHitec Power Protection社が出展、ディーゼルエンジンと発電機、運動エネルギーモジュール(フライホイール)を一体化したダイナミック無停電電源装置(DRUPS)のプロモーションを行った。
同社のDRUPSは、~3600kVA/台までの大容量に対応する高出力重要設備に適したロータリー式無停電電源装置で、1台でUPSと非常用発電機の機能を併せ持ち、動力負荷や半導体製造装置負荷を含め、幅広い設備機器に絶えず高品質な電力を供給できるのが大きな特長。主にデータセンターや半導体、製薬といった大規模な製造工場で導入されており、電圧低下や停電による設備や製品へのダメージを回避し、安定操業を継続するための重要機器となる。



SEMIでは世界の半導体産業で前例のない成長が続いているとし、2025年から2030年までの間にトータルで年平均成長率8%を達成、2029年には半導体の売上高が1兆ドルの大台を超えると予測する。このうちAI(人工知能)関連の半導体の売上高は年率16%の高い成長率が見込まれ、2030年には全体の50%を占めるなど、AI成長を背景に半導体デバイスメーカーの成長は続くとしている。また、世界では2028年までに107件の新規ファブが稼働を開始する予定で、そのうちアジア地域に82件のファブが集中する。2030年までにさらに30件以上の追加ファブが必要とされており、半導体製造装置の分野でも前例のない規模の拡張が継続すると見られている。
大陽日酸、日酸TANAKA、エア・ウォーターグループ、巴商会、鈴木商館、ウエキコーポレーション、東横化学などが出展
「SEMICON Japan 2025」には、昨年13年ぶりに出展した大陽日酸がグループ企業の日酸TANAKAとの共同ブースで出展したほか、グループ14社と合同で前回から規模を拡大したエア・ウォーターグループが、産業ガスから広がる多様なコア技術による半導体産業へのサポートをアピールした。また、インドでの半導体新事業を発表した巴商会、クライオポンプ向けの新型ヘリウムコンプレッサユニットを展示した鈴木商館、リンデ社製品を中心にバルブ自動開閉器などをラインナップしたウエキコーポレーション、半導体向け産業ガスやガス供給装置に加えて、独自の半導体製造装置を持つ東横化学も、半導体メーカーや製造装置メーカーに向けて自社製品の紹介を行った。また、半導体向け圧力調整器を製造販売するユタカ、ガス検知警報器の理研計器や新コスモス電機が出展ブースでそれぞれ自社製品のPRを行った。






大陽日酸は、半導体製造工場の生産性向上に向けたソリューションとして、「Intelligent Gas Supplying System(IGSS)」を提案。システムを構成する機能の1つ「Cdrive」の実機を展示して、最大 100kgもあるガス容器を容器保管庫からガス消費設備まで搬送し、シリンダーキャビネット内で容器の出し入れを自動で行うデモ走行を実施した。そのほか、2025年6月から開始した特殊ガス製品輸送の鉄道輸送によるモーダルシフトや、つくば開発センター内への「エレクトロニクス先端材料開発棟」の建設を含む、先端半導体プロセスに特化した半導体材料ガスやガスハンドリング機器製品を紹介。また、CVD・ALDなど半導体製造プロセス用途で使用される固体プリカーサーとしてMoO2Cl2(Molybdenum dichloride dioxide)の製造設備を新たに大陽日酸JFP三重工場に建設し、2026年10月に製造(生産能力12t/年)を開始することを発表した。
日酸TANAKAは、ドイツ・オービタルム社製配管TIG自動溶接機2機種と半導体用圧力調整器TORRシリーズを展示。オービタルム社の溶接電源として、現場作業持込に最適な「モバイルウェルダー シリーズ」と工場内プレファブ溶接に最適な「オービマット 180SW」、溶接ヘッドの「オービウェルドシリーズ」適用配管サイズ φ3.0㎜ ~φ38.1㎜ までの4機種をラインアップした。また、3Dプリンタで製造した配管溶接用のバックシールド治具「PPAP」も各種サイズを展示。






エア・ウォーターは、エア・ウォーター・エレクトロニクス、エア・ウォーター・エンジニアリング、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル、エア・ウォーター防災、エア・ウォーター・マッハ、エア・ウォーター・マテリアル、エア・ウォーター・メカトロニクス、タテホ化学工業、日本海水、日本電熱、FILWEL、プリンテック、メカトロ・アソシエーツのグループ14社で「半導体工場の安定運営を支える」トータルソリューションをプレゼンテーションした。
ブースでは、QuickSnow(ドライアイススノー精密洗浄装置)の実機を展示し、ロボットハンドとの協働による自動洗浄のデモを実施、微粒ドライアイスでミクロン単位の汚れも瞬時に洗浄する、最先端の技術を披露した。ウエハのダイシングカット後の切削粉除去やイメージセンサー上のパーティクル除去、電子部品のレーザーカット後の煤等の除去、自動車ボディ部品の塗装前洗浄などの分野で導入実績がある。



巴商会はインドでの半導体分野の新事業としてUHP Technologies社(KAS Group)との提携を発表。UHP社は2008年にインド・ベンガルールに設立されたエンジニアリング企業で、先端産業向けの超高純度ガス・ケミカル供給システムやクリーンルーム設備、ユーティリティインフラの設計・製作・施工を手掛ける。今後、インドでの半導体製造施設向けソリューションの展開を2社が共同でサポートする。



今年からSEMICON出展を再開した鈴木商館は、自社製品のクライオポンプ用ヘリウムコンプレッサユニットの新製品「SSCS-3700」の実機を展示した。また、供給系配管のコンタミ削減、排気系配管の生成物除去の提案や、従来品に比べ最大約50%の省エネとなる配管のジャケットヒーターも出展。エネルギー使用量の増大と電力コスト上昇が課題となっている半導体製造工場に対してソリューション提案を行った。



間もなく創業90周年を迎えるウエキコーポレーションは、国内総代理店となるリンデ社製の高純度スパッタリングターゲットや半導体製造装置向けのプラズマ溶射処理の表面改質技術を展示。リストバンド型センサ「MULiSiTEN(東芝製)」とビーコンタグによる位置検知システムの作業員の現在地表示デモや、自社製品のボンベバルブ自動開閉器「BVC」の提案も行った。



東横化学は「トータル・ガス・ケミカル・マネジメント」のサービスとソリューションを提案。自社開発製品のSiCパワーデバイス用 超高温熱処理装置「Ailesicシリーズ」や高感度質量分析装置「ASTON Impact」、液体材料気化供給設備「Precision Gas Mixer」のほか、取扱製品としてAPTech社製プロセスガス用圧力調整器・バルブ、ヘリウム・水素ガス回収装置などを紹介した。



新コスモス電機は、半導体工場向けガス検知警報装置用コスモス式ガス検知部「PS-8シリーズ」を展示。新しくなった硫化カルボニル(COS)センサによる独自の触媒技術で熱分解コンバータを内蔵、パージフィルタ不要になり省スペース化した。大型液晶で視認性が高くPoE対応で省配線、メインユニット1台で最大16点のセンサ情報を表示する。



圧力調整器のユタカは、高精度2種ガス混合装置「BMFシリーズ」や高純度ガス対応圧力調整器、分析・研究用ガス対応機器を取り揃えた。SUS製半自動切換装置「EXCW6シリーズ」は、左右切換弁の同時操作による新切換方式を採用、最大供給圧力0.8MPaを実現することで「高圧ガス製造設備」対象外となる。最大供給流量100L/分、毒・可燃性・特殊高圧ガスに対応。また、高純度ガス用装置の流量スイッチや真空発生装置も紹介した。



理研計器は、新製品の定置式ガス検知器「GD-81Dシリーズ」を初出展。「GD-70Dシリーズ」のアップグレードモデルとして開発され、従来器からのリプレイスを考慮しながら、新たに毒性ガスの2成分同時検知を実現し、設置スペースや配管・配線施工コストを削減する。一台で最大4種のガスセンサを搭載可能な定置式ガス検知器「GD-84D」やブラウザベースのガス漏洩監視システム「監視郎Ⅱ」も紹介、海外向けの検知テープ式多点毒性ガス検知システム「FPM-80A」の実機も展示した。



半導体向け排ガス除害装置のカンケンテクノは、環境に優しい電気ヒータ式とプラズマ式除害装置のパネル展示を行った。地球温暖化係数がCO2の数千倍以上となるPFCガス分解装置の提案として、真空ポンプのフォアラインに後付け可能な小型・軽量・高出力なプラズマ式PFCガス分解装置「K-ILP5000」の実機を展示。2024年度省エネ大賞最高位「経済産業大臣賞」を受賞したエキシマレーザガス回収精製装置や、開発中のヘリウム回収精製装置「Heリサイクラー」の紹介も行った。


