大陽日酸、「水18O」製造プラント2号機を千葉サンソセンター袖ヶ浦工場構内に竣工
大陽日酸は、千葉サンソセンター袖ヶ浦工場構内に「酸素-18 安定同位体標識水(水18O)※1」製造プラント2号機を竣工した。製品の「Water18O」出荷開始予定は2013年11月になる。今後、大幅に拡大が見込まれるPET用診断薬の原料としての世界需要に対応する。
ポジトロン断層撮影診断(PET)によるガン診断は、18FDG-PET検査の日米欧での市場拡大のみならず、中東・アジア・南米などの新興国での診療開始も加わり、年々増加してきた。「水18O」は、このPET診断薬 18FDG※2 の原料として用いられるためその需要が拡大し 2012 年の世界市場は 700kg/年を超えた。
今後は、PET検査数は年率約5-10%で増加することが見込まれている。さらに、脳疾患や心疾患のPET診断用新規薬剤開発が加速しており、それらが承認されるとPET検査数は大幅に増加し、「水18O」の世界市場は倍増すると予測されている。
「水18O」製造プラント2号機の生産能力は200kg/年(98atom%)で、現有の製造プラント1号機(100kg/年)とあわせ、総生産量 300kg/年となり、世界最大規模の生産体制を構築した。これにより、拡大する「水18O」の世界市場への安定供給を目指す。
【製品】
① 品名 「Water18O」(水18O)
② 濃縮度 98atom%以上
③ 容量 10g, 20g, 50g(ガラスセプタムバイアル瓶)
【用語解説】
※1 大陽日酸の「酸素-18 安定同位体標識水(水18O)」
天然の酸素には質量数が 16、17、18 の三種類の同位体が存在し、その割合は、99.76%、0.04%、0.2%。それぞれの同位体は物理化学的性質がほとんど同じであるために濃縮・分離するのは極めて困難である。旧来の酸素-18(18O)の濃縮方法としては水(H2O)の蒸留法あるいは一酸化窒素(NO)の蒸留法などがあったが、多大なエネルギーが必要・プラントの安定性に問題がある等、いずれも高品質な製品を大量生産するには難点が存在した。大陽日酸は、「酸素(O2)深冷分離技術」による酸素-18 濃縮法を開発、98atom%以上の世界最高濃縮度の「水18O」を2004 年から大量生産・年産 100kg を開始。本法により、従来法の水蒸留などに比べエネルギー消費を約 1/6 まで削減、大幅な省エネルギー生産が可能となった。また、最終製品である「水-18O」を医薬品製造品質管理規範(GMP)に準じた製造設備・品質管理のもとで生産し、高品質での安定供給を可能とした。PET診断薬 18FDG原料として世界の医療分野で広く利用されている。
※2 18FDG:
ブドウ糖の類似化合物であるフルオロデオキシグルコースをポジトロン放出核種のフッ素-18(18F)放射性同位体で標識したPET用診断薬。ブドウ糖代謝が激しい腫瘍等の組織に集積するため、PETで 18FDGの体内分布を画像化してガン診断を行う。