超電導電力機器冷却用ターボ冷凍機(NeoKelvin ® -Turbo 2kW) ロシアで販売契約締結
大陽日酸は、ネオンガスを冷媒とし超電導 電 力 機 器 を - 200 ℃ 以 下 に冷 却 可 能 な タ ー ボ ・ ブ レ イ ト ン 冷 凍 機 「NeoKelvin®-Turbo 2kW(ネオケルビンターボ 2kW)」3 台をモスクワ市電力公社(以下、UNECO 社)の超電導限流器設備向けに販売する契約を SuperOx Japan LLC(社長:Sergey Lee、以下、SuperOx Japan 社)と締結した。
近年、モスクワ市では電力需要の増加に伴う事故電流(特に短絡事故)への対策のため、回路遮断器(以下、CB)の大容量化が必要とされているが、対策費用が高額になるという課題があった。高温超電導線材メーカーであるロシアの SuperOx 社とその関係会社である日本のSuperOx Japan 社では、対策費用の削減と動作能力での優位性の観点から CB に代えて超電導限流器(以下、SFCL)の導入を UNECO 社に提案し、2015 年から 3 社共同にて SFCL の導入に向けた準備を進めていた。
その結果、モスクワ市内の変電所に 220kV 用のSFCL を設置し、試験運用を実施することが決定。SFCL の運用には、-200℃という極低温環境を安定的に維持・管理する必要があり、大陽日酸の超電導電力機器冷却用ターボ・ブレイトン冷凍機「NeoKelvin®-Turbo 2kW」が採用されたもの。
大陽日酸は SuperOx Japan 社に NeoKelvin®-Turbo 2kW を 3 台販売する契約を締結しており、SuperOx 社並びに SuperOx Japan 社が SCFL のシステムアップを行い、モスクワ市内の UNECO 社変電所に設置される。
大陽日酸は、これまでに国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「イットリウム系超電導電力機器技術開発(2008~2012 年度)」においてネオンを冷媒とする冷凍能力 2kW のターボ・ブレイトン冷凍機(NeoKelvin®-Turbo 2kW)を開発し、2013 年 5 月に商品化している。
さらに、2016 年には 5 倍の冷凍能力を持つ「 NeoKelvin®-Turbo 10kW」 も商品化。2kW 機、10kW 機ともに高温超電導送電線の冷却用として国内外で試験運用の実績を重ねている。
【装置の特長】
①ネオンガスの圧縮と膨張を行うターボ回転機の軸受には、主軸を空中で浮上させ非接触で運転可能な磁気軸受を採用し、メンテナンスを削減。
② 膨張機で発生するエネルギーを回生電力として圧縮機へ戻した省エネルギー構造。
③ 圧縮機の回転数変化による精度の良い運転温度制御方法の採用。
【2kW 機の仕様】
冷却温度:70K(-203℃)冷凍機出口液体窒素温度
冷凍能力:2kW
電源電圧:3 相交流、400V
消費電力:55kW
冷却水:250L/min
【今後の展開】
大容量 CB に対して、価格及び動作能力において優位性を持つ SFCL は、事故電流に対して CB よりも 100 倍の速さで電流制限を掛けることが可能であり、大きな事故電流に対して、健全な機器への影響をより確実に回避できるため、今後、グローバルでの需要増大が期待される。グローバルでの SFCL の需要増にともない、大陽日酸のターボ・ブレイトン冷凍機が採用されるよう積極的に取り組むとしている。
【ターボ・ブレイトン冷凍機】
動作ガスが 4 つの過程(①断熱圧縮、②等圧冷却、③断熱膨張、④等圧加熱)により寒冷を発生する冷凍機。ターボ圧縮機で圧縮されたネオンガスは圧縮熱を大気へ放散した後、膨張タービンにて断熱膨張を行い、ネオンガスの温度が低下。その後、周囲の熱を吸収して、ターボ圧縮機の吸い込み口に還流。実際の冷凍機には、ターボ圧縮機と膨張タービンの間に熱交換器が挿入され、膨張タービンで発生される冷熱を回収することにより、極低温を生成する。
【限流器】
電流系統の短絡・漏電による事故電流を抑制するための手段の一つとして、過負荷電流を速やかに限流する機器。特に超電導限流器は、きわめて敏速な超電導相変化を利用するため、事故電流への応答性に優れている。