福島浪江町で再エネ利用の1万 kW級水素製造装置を備えた水素エネルギーシステムを構築

 東芝(本社:東京都港区、代表執行役社長:綱川智)、東北電力(本社:宮城県仙台市、取締役社長:原田宏哉)、岩谷産業(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:谷本光博)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」において、基礎的検討(FS フェーズ)からシステム技術開発(実証フェーズ)へ移行し、再生可能エネルギーを利用した大規模水素エネルギーシステムの開発を開始する。
 本事業は 2016 年 9 月に採択され、3 社はこれまでシステム構成や仕様、技術・経済成立性について検討・評価を進めてきた。今後、福島県浪江町を実証エリアとして1万 kW 級の水素製造装置を備えた水素エネルギーシステムを構築し、2020 年度中に実証試験を行う。

 本事業では、再生可能エネルギーの導入拡大を見据えた電力系統の需給バランス調整(デマンドレスポンス)のための水素活用事業モデルおよび水素販売事業モデルを確立させることで、新たな付加価値を有する大規模水素エネルギーシステムの開発・実用化を目指す。
 市場における水素需要を予測する水素需要予測システムと電力系統の需給バランスを監視制御する電力系統制御システムからの情報をもとに、水素エネルギー運用システムが水素製造装置等を含めた最適運用を行うことで、再生可能エネルギーの利用拡大を実現する。

 国が 2015 年 7 月に公表した「長期エネルギー需給見通し」では、2030 年度における総発電量に対する再生可能エネルギーの比率については、2013 年度の 10.7%から 22~24%まで拡大を目指すとされている。一方、再生可能エネルギーは気象条件によって発電出力が大きく変動するため、電力系統でこの変動を吸収するために調整力が必要となる。
 水素エネルギーシステムは、水素を大容量かつ長期間保存できるため、電力を一旦水素に変換して貯蔵することにより、再生可能エネルギーを大量導入した際に、電力系統の調整力として活用が期待されている。

 本事業を通じて、東芝は今後も、再生可能エネルギー由来の水素製造から利活用まで、それぞれのシーンでエネルギーを効率的に使用することのできる水素ソリューションを展開し、CO2 フリーの水素社会の実現に貢献する。
 東北電力は、水素エネルギーシステム活用による電力系統の安定運用について検証し、再生可能エネルギーの導入拡大を目指すとともに、引き続き、地元電力会社として福島県の復興に貢献できるよう取り組む。
 岩谷産業は、本事業における開発・実証が、水素エネルギー社会の早期構築に寄与するものとして、産業用水素の輸送・貯蔵・供給システム関連技術、水素ステーションの建設・運営などの知見をもとに、水素エネルギーの利活用拡大に向けて積極的な役割を果たす。