岩谷産業、貴金属不使用の揮発性有機化合物(VOC)分解新触媒を開発

 岩谷産業は大阪大学(工学 研究科・今中信人教授)と共同で、揮発性有機化合物(以下VOC)を分解するための触媒として、 白金等の貴金属を使用しない高い熱耐久性を備えた新たな触媒を開発した。これにより、VOC 浄化装置の導入費用および、触媒のメンテナンス費用を抑制することが可能となる。

今回開発した触媒のイメージ
今回開発した触媒のイメージ

 岩谷産業は今回開発した触媒に使用されている La(ランタン)等の希土類元素や、Co(コバルト)等のレアメタル原料を広く取り扱っており、それら原料のアプリケーション開発を進める中で、大阪大学の持つ技術に着目。今後、岩谷産業が保有するガス分析技術も活用し、商業スケールで触媒を製造する技術を保有するメーカーとタイアップしながら、事業化を進める。

 VOC を分解する触媒としては、白金等を用いた貴金属系触媒が広く使用されているが、貴金属系触媒は貴金属原料のコストが高いことに加え、使用雰囲気中の不純物(硫黄等)による被毒により、 徐々に触媒性能が劣化する問題がある。これらの被毒成分は触媒を高温で熱処理することで除去できるが、貴金属は高温処理を施すと粒子間焼結・粒成長が進むことで表面積が小さくなり、 触媒活性が低下する。

触媒による VOC 分解の様子(イメージ)
触媒による VOC 分解の様子(イメージ)

 今回新たに開発した触媒は貴金属を使用せず、触媒活性種としてペロブスカイト型酸化物(LaCoO 系)、助触媒としてアパタイト型酸化物(LaSiCoO 系)を選択する。貴金属触媒に比べてコストが安いことに加え、触媒活性種、助触媒ともに高温耐久性が高いことから、硫黄等で被毒された場合においても、高温の熱処理により被毒成分を除去することで、触媒を再生させることが可能となる。 これにより、VOC 浄化装置の初期導入費用を抑制するとともに、高温処理のみで触媒活性を回復することでメンテナンスコストの削減も期待できる。