大陽日酸、ロシアの超電導限流器でターボ冷凍機の運用開始

 大陽日酸は、モスクワ市電力公社(以下、UNECO 社)とSuperOx LLC(以下、SuperOx 社)とが進めている超電導限流器の実証プロジェクトにおいて、ターボ・ブレイトン冷凍機 NeoKelvin®-Turbo 2kW(ネオケルビンターボ 2kW)3 台を納入し、現地での商用運用を開始した。

「NeoKelvin®-Turbo 2kW」装置外観

 近年、モスクワ市では電力需要の増加に伴う事故電流(特に短絡事故)への対策のため、回路遮断器(以下、CB)の大容量化が必要となり、対策費用が高額になるという課題があった。

 高温超電導線材メーカーであるロシアのSuperOx 社とその関係会社である日本のSuperOx Japan 社では、対策費用の削減と動作能力での優位性の観点から CB に代えて超電導限流器(以下、SFCL)の導入をUNECO 社に提案し、モスクワ市内変電所への 220kV 用SFCL の設置が進められていた。

 大陽日酸は SuperOx Japan 社を通じて 2017 年にNeoKelvin®-Turbo 2kW を 3 台販売する契約を締結しており、2018 年 12 月にモスクワ市内の UNECO 社変電所への設置を完了した。その後、SFCL を含めたシステム全体の試運転および電力系統への接続が完了し、本格的な商用運用が開始された。

SFCL 設置写真

 大陽日酸は、これまでに国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「イットリウム系超電導電力機器技術開発(2008~2012 年度)」においてネオンを冷媒とする冷凍能力 2kW のターボ・ブレイトン冷凍機(NeoKelvin®-Turbo 2kW)を開発し、2013 年 5 月に商品化。さらに、2016 年には 5 倍の冷凍能力を持つNeoKelvin®-Turbo 10kW も商品化し、2kW 機、10kW 機ともに高温超電導送電線の冷却用として国内外で試験運用の実績を重ねている。

 今回の取り組みにより SFCL の優位性が実証されれば、将来的にモスクワ市内への更なる導入も期待され、今後も冷凍機の普及に向けた取り組みを進めるとしている。

(1)装置の特長

  1. ネオンガスの圧縮と膨張を行うターボ回転機の軸受には、主軸を空中で浮上させ非接触で運転可能な磁気軸受を採用し、メンテナンスを削減。
  2. 膨張機で発生するエネルギーを回生電力として圧縮機へ戻した省エネルギー構造。
  3. 圧縮機の回転数変化による精度の良い運転温度制御方法の採用。

(2)2kW 機の仕様(1 台あたり)

  • 冷 却 温 度:70K(-203℃)冷凍機出口液体窒素温度
  • 冷 凍 能 力:2kW
  • 電 源 電 圧:3 相交流、400V
  • 消 費 電 力:55kW
  • 冷 却 水:250L/min

【用語解説】

ターボ・ブレイトン冷凍機

 動作ガスが 4 つの過程(①断熱圧縮、②等圧冷却、③断熱膨張、④等圧加熱)により寒冷を発生する冷凍機。ターボ圧縮機で圧縮されたネオンガスは圧縮熱を大気へ放散した後、膨張タービンにて断熱膨張を行い、ネオンガスの温度が低下する。その後、周囲の熱を吸収して、ターボ圧縮機の吸い込み口に還流される。実際の冷凍機には、ターボ圧縮機と膨張タービンの間に熱交換器が挿入され、膨張タービンで発生される冷熱を回収することにより、極低温を生成する。

限流器

 電流系統の短絡・漏電による事故電流を抑制するための手段の一つとして、過負荷電流を速やかに限流する機器。特に超電導限流器は、きわめて敏速な超電導相変化を利用するため、事故電流への応答性に優れている。