岩谷産業、2020年3月期連結決算
岩谷産業の2020年3月期(2019年4月~2020年3月)の連結決算は、売上高6867億7100万円(前年同期比4.0%減)、営業利益287億2800万円(同8.6%増)、経常利益322億7000万円(同7.7%増)、親会社株主に帰属する純利益209億9400万円(同9.2%増)だった。配当金は普通配当金を10円増配し、創立90周年の記念配当20円を加え、年間配当金は95円とした。
中期経営計画「PLAN20」の基本方針である「成長戦略の推進」と「経営基盤の拡充」に取り組んだ。
LPガス事業については、独自のIoTプラットフォームの構築に向けた取り組みとして、京丹後市と協定を締結し、同市内のLPガス顧客に設置した通信機能付きガス漏れ警報器に電気・ガス・水道メーターを接続し、使用状況などのデータ収集を行う実証試験を開始した。
水素エネルギー社会の実現に向けては、参画する再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素製造装置を備えた「福島水素エネルギー研究フィールド」が完成し、稼働を開始。また、FCバスへの本格的な充填が可能なイワタニ水素ステーション 東京葛西を開所し、運営するステーションは28ヶ所となった。なお、2020年5月までに新たに9ヶ所の水素ステーションの開所を予定する。
セグメント別概況
【総合エネルギー事業】LPガス輸入価格の下落に伴う販売価格の低下や、気温が例年より高く推移したことによる販売数量の減少により減収となった。一方、利益面では、LPガスの市況要因(前年度比25億48百万円のプラス)に加え、「カセットこんろ・ボンベ」やガス保安機器、およびLPガス非常用発電機の販売が好調に推移したことにより増益となった。セグメント売上高は3,135億6百万円(前年度比226億82百万円の減収)、営業利益は139億90百万円(同28億78百万円の増益)。
【産業ガス・機械事業】エアセパレートガスについては、電子部品業界および光ファイバー業界向けの販売が減少したが、ヘリウムは、世界的な需給ひっ迫が継続し、市況上昇により増収となった。液化水素は、半導体業界および光ファイバー業界向けの販売が低調に推移したが、水素関連設備案件が増加した。機械設備については、大型案件の反動減により売上が減少、電子部品製造装置や溶接装置などが好調に推移した。セグメント売上高は1,905億20百万円(前年度比24億18百万円の増収)、営業利益は119億86百万円(同7億65百万円の増益)。
【マテリアル事業】低環境負荷PET樹脂やエアコン向け金属加工品の販売が伸長したが、二次電池材料の市況が下落したことに加え、機能性フィルムの販売が減少した。また、ミネラルサンドについては、国内でチタンの販売は増加したがジルコンは減少し、収益が減少した。セグメント売上高は1,495億65百万円(前年度比95億37百万円の減収)、営業利益は45億5百万円(同12億34百万円の減益)。
【自然産業事業】外食および事業所給食向け冷凍食品の販売が伸長した。また、種豚の出荷は減少したが、農業設備および畜産設備案件は堅調に推移した。セグメント売上高は273億13百万円(前年度比8億73百万円の増収)、営業利益は11億84百万円(同3億90百万円の増益)。
【その他】セグメント売上高は58億66百万円(前年度比6億14百万円の増収)、営業利益は8億62百万円(同1億14百万円の減益)。
2021年度3月期連結業績予想
新型コロナウイルスの世界的な拡大により世界経済の減速が予測される。日本経済においても、個人消費や設備投資を中心とした内需の縮小が見込まれるなど、厳しい事業環境を想定した。
一方で、世界各国が大規模な経済対策を実施する動きが見られることや、防災意識や安定した生活インフラに対する意識の高まりなど、新たな事業チャンスが広がっている。
このような状況のもと、岩谷産業では創業90周年を迎え、2021年3月期を最終年度とする中期経営計画「PLAN20」を通じて、「成長戦略の推進」と「経営基盤の拡充」に取り組む。
総合エネルギー事業は、引き続きM&Aの推進によりLPガス消費者戸数の拡大を図り、LPガス販売数量の増加に努める。また、LPガスや都市ガス顧客に対して、ガス関連機器の拡販を行うとともに、インターネットなどの販売チャネルも活用したBtoC商品の販売を強化。カートリッジガス事業においては国内外での事業拡大を図る。
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスや液化水素の拡販に加え、水素ステーションの建設・運営や水素関連設備の販売強化に努める。また、機械設備については、産業ガス事業との相乗効果を発揮し、自動車、半導体、環境関連などの成長分野を中心に拡販し、事業拡大を図る。
マテリアル事業は、バイオマス燃料や低環境負荷PET樹脂などの環境商品に加え、二次電池材料や機能性フィルムを中心とした電子材料の拡販に努める。また、海外事業の強化に取り組み、事業規模の拡大を図る。
自然産業事業は、品質管理を徹底し、国内外で安全・安心を最優先した事業展開に努める。冷凍食品は、外食や惣菜・弁当などの中食業界向けに冷凍野菜の新規開拓に取り組む。また、農業生産事業への参入や省人化・自動化機器の開発・販売、大手養豚事業会社向け畜産設備・種豚販売を強化。
次期の連結業績見通しは、売上高6,775億円(前年度比1.4%減)、営業利益247億円(同14.0%減)、経常利益276億円(同14.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益173億円(同17.6%減)を予想する。年間配当金予想は75円。
また、この見通しは、現時点において把握している新型コロナウイルスの影響をもとに算出した。LPガス輸入価格の下落による減収や産業ガス・機械事業、マテリアル事業における販売減が第1四半期を中心に上期を通じて続くと仮定している。