大陽日酸の産業競争力強化法に基づく事業再編計画を経産省が認定

2023年3月期に2020年3月期比で、従業員1人当たりの付加価値額を8%以上向上

 経済産業省は、大陽日酸株式会社(法人番号:7010701015826)から提出された産業競争力強化法に基づく事業再編計画を認定した。当該計画は、会社分割により、大陽日酸の国内事業部門を、その子会社の株式会社大陽日酸分割準備会社に承継するもの。純粋持株会社制へ移行し、持株会社がグループ全体の統治機能を担い、事業会社は国内事業に特化することで、国内事業の拡大とグループの総合力の強化を進める。

 今回の認定により、大陽日酸の会社分割に伴う不動産の登記の登録免許税の軽減措置及び、大陽日酸分割準備会社の資本金の増加に伴う登録免許税の軽減措置を受けることが可能となる。

 大陽日酸グループは、企業理念である「進取と共創。ガスで未来を拓く。」を礎として、鉄鋼・化学・エレクトロニクス・自動車・建設・造船・食品・医療など、あらゆる産業の良きパートナーとして、産業ガスを安全かつ安定的に供給することで、企業価値の向上を図ってきた。

 2015 年 3 月期からの 3 ヵ年の前中期経営計画および 2018 年3 月期から 4 ヵ年の現中期経営計画で「グローバリゼーション」を重点戦略の一つに掲げ、海外での大型 M&A を複数実施した結果、グループの産業ガス事業は、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの 4 極体制を確立するに至った。

 これにより、グループが国内を含め各地域で更に成長していくためには、現在の事業持株会社から純粋持株会社の体制に移行することが必要と判断した。その主な目的は、以下のとおり。

  1. 権限委譲による意思決定スピードの向上と適切な経営資源の配分
     権限委譲により、各地域の事業会社は、それぞれの地域における市場と顧客の変化に的確に対応できるようになる。また、持株会社は、成長性を踏まえた適切な経営資源の配分やグループ全体のリスク管理などを強化する。
  2. 事業執行責任、実績の明確化
     国内ガス事業を承継する子会社(現分割準備会社)は、当該事業の執行に特化することで、持続的な事業成長を目指す。
  3. 各地域の強みを共有展開したグループ総合力の強化
     持株会社が推進役となり、各地域における事業分野や技術などの強みをグループ全体へ共有展開し、グループ総合力の強化を進める。

 大陽日酸では、国内産業においても、イノベーション、自動運転、AI やデジタルによる変革が一層進んでいくものとし、そうしたイノベーションをチャンスととらえ、エネルギー効率向上に寄与するバーナー技術、3Dプリンター分野、MAP(食品包装ガス)、農業・水産分野などで新たなガス需要を創出する。

 また、グループ全体の統治機能を持株会社が担い、事業会社は国内事業に特化することで、国内グループ会社との連携強化を加速させ、それにより、お互いのソリューションを包括的に提供する取り組みを推進し、低成長下の国内においても事業の拡大を図る。

 グループは、ガスコントロール、高圧対応技術、高温・低温コントロール、溶接・溶断などの要素技術を保有し、産業界でのイノベーションを捉え、単なるガスの供給だけでなく、顧客に対しソリューションを提供していくことで持続的な成長を図る。また、欧米等のグループ会社が展開するガスアプリケーション等を日本に導入し、その利点の最大化に取り組み、国内事業の成長に寄与する。

 ガバナンスについては、持株会社および国内事業会社の双方において、執行部門と監督部門が明確に分離されたガバナンス体制を構築し、当該計画の進捗状況を適時適切にモニタリングする。

 以上を踏まえて、生産性の向上を示す数値目標として、計画の対象となる事業の生産性の向上としては、2023 年 3 月期には 2020 年 3 月期に比べて、従業員 1 人当たり付加価値額を 8%以上向上させることを目標とする。

 また、財務内容の健全性としては、2023 年 3 月期において、有利子負債はキャッシュフローの 4.2 倍、経常収支比率は 122.2%となることを見込んでいる。